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限界

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「限界か」輝彦は
深町の意図と無関係に連想した。

僕らの生活も、自由だけれど限界がある。

例えば、17歳の頃の友里恵と出会って
魅力的に感じた。

デートしたいな、と思って
誘う。

当人同士がそれで良くても
法令で、それは良くないこと、とされる。

そういう限界もあるけれど

18歳になれば大丈夫なのは
それが限界だから、と
決められているから。だ。


西の森コンビニのオーナーも
限界が分からなくなっていたのかもしれないな、と
思ったり。


土地が、ただで手に入ったり。
店を持つことができたり。

ちょっと、限界を越えてしまって
していいこと、そうでないことが

わからなくなってたのかもしれないな。





「じゃ、ちょっとタイヤをゆっくり落としてみて」と
深町は、運転席の友里恵に
カーブの外の、緑地から。

静かに、タイヤが路肩に。


「そこまで行けるんだよ。降りて見てごらん」と
深町。

友里恵と由香は、クルマの後ろから見ると
道路の幅、半分くらいが
タイヤの右側にある。


「もっと行ける、ってことさ」と、深町。


「そうなんですね」と、由香は
クルマの前に回って。


「うん。カーブの、外側のところに
マークが置いてある。鉄板だから
踏むと、音がするし
ハンドルがふるえるから
そこを踏む練習をするといいね。
でも、仮免許だったら
これだけ乗れれば受かるよ」と、深町。

「ほんとですかーぁ、よかった」と、由香。

「アンタはまだ乗ってないじゃん」と、友里恵。

「じゃ、由香ちゃん乗ってみよー。」


-----------------

由香は、友里恵より
ずっとふつうの(笑?)初心者ドライバーで

クラッチペダルをうまく、操る事が
できなくて。

「ゆかはー。ムリですーー。」


深町は「ペダルのね、位置を合わせて。
シートをずらせてね。足の力が
上手く使えるところに。
高いところから踏み下ろしたほうがいいかも。」

そういって、シート高さや前後位置を動かして
踏みやすい場所を探した。


「慣れると分かるから。かかとを床に付けて支点にして
ゆっくり放していくと、クルマが動くところがあるから」



足で、微妙に加減するのは難しいらしく
放しかけで、止まってしまうエンジン。


「難しいですー、うぅ~。友里恵に出来るのにな。
」と、由香。


「感度の良い子、友里恵」と、友里恵はちょっと(危笑)


「勘のよい子。(笑)だよ、感度って言うと
Hじゃん」と、由香。


「そっかぁ(笑)わはは」と、友里恵はおもしろい。


どこまでわかってるのか不明な
楽しい18歳、である。



深町は、調節ノブで
アクセルを踏まない時のエンジン回転を高くした。


「これで、やってごらん」


由香は、おそるおそる。

左足を放した。

ちょっと、唐突だけど「走った、走った!」

やったぁ!と、友里恵も拍手。「由香も、感度の良い子~」(笑)


それは危ないじゃん、おとぼけゆりえちゃん(笑)







一旦、覚えてしまえば
慣れるのは早いのは
若さ故、のことだろうか。


コースの外を、ぐるっと回るのも飽きた頃

「じゃ、クランクコースね」そこにあるでしょ、と、深町。

「左クランクだから、左を大きく開けて。
右ぎりぎりに右の後ろのタイヤを寄せて。
それで、右の前のタイヤが落ちないように、左に一杯切る」

と、言うのは簡単。

はじめたばかりのドライバーには、難しいのは、スピード。



「1速でいいね。ほんとは2速だけど、できるまでは」と、深町。


「やってみる。」と、由香。



右折して左クランクに入るのが、結構、初めての人には難しい。
斜めに入ってしまったりする。


「適当にやっても、落ちないよ」とは深町。


でも....斜めに入ってしまって、曲がれなくなったり。


「そう、早いとね、ハンドルが回せなくなってしまうから。
ゆっくりでいいの。間違えたらね、後ろを確認して戻れば
大丈夫だから」とは、深町先生(笑)。

行き過ぎて、少しバックして。
もう一度きりなおして。


何とか通れる。


「やったぁ!」と、爽快ゆかちゃん(笑)。

「やるじゃん」とは、友里恵ちゃん。

クルマの運転も、面白くなってきたみたい。





「次は、S字ね。ちょっと難しいけど。さっきの、カーブの感じで。
右にカーブするときに、左ぎりぎりを走って。次の左カーブで、左を空けておかないと
左の後輪が通れないから、先を考えて走る。前輪が落ちないようにするのは同じ」と。


「先を考えるのは人生ゲームみたい」とは、友里恵ちゃん(笑)渋い。


「先生は人生、考えてます?」とか、由香ちゃん(笑)鋭い。


「シビアな質問ですねぇ。予定通りに行かないのが人生だったり」とは、深町。
ユーモアたっぷり。

実際、深町の人生は親兄弟に翻弄されたようなものだった。
父が政治家だったので、ライバル政党の攻撃を恐れて
地方に疎開。
その父が死んでから、やれやれ、と思ったら兄が他界。
兄の子供たちのことも気がかり、母も気がかりで
ミュージシャン活動を中断して帰郷。

その時代を知るのは、輝彦と由布子くらいのもので.....。

でも、筋を通すのは深町の本質で
ミュージシャンには任侠も大切であった(当時)。

困っている人を見過ごせない性格である。


「深いお言葉ですね」とは、由香。


「ちょっとカーブが深いです」とは、輝彦(笑)


ハナシをしていて、ハンドル操作が遅れて
曲がりきれなくなった(笑)。


「まあ、そうしたら、切りなおせばいい。
後方確認すれば。」と、深町。


「早く曲がりすぎるよりは楽だね、直すのが。
後ろのタイヤは、内側を通るから。
それも人生と似てるか、な(笑)」と、深町。

早まった事をして、取り返しが付かなくなるよりは...慎重なほうがいい。
それも、人生経験からか、41歳深町(笑)。

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