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道路標識
しおりを挟む「道路標識とか、表示とかは
普段見てるから、分かるけど。
でもね、見てないようなのが出たりするし(笑)」と、
テキストの道路標識を指差しながら
二人でお勉強していると、友里恵ちゃんの
かわいい顔が近くにありすぎて。
生きてるんだよな。
と、触れて確かめたくなるような感じで
でも、この子が僕の腕の中にあった、と言う
記憶を連想して、ちょっと信じられないような
うれしい気持ちになったりする、彼であった。
{一方の友里恵ちゃんは、お勉強に懸命で
ロマンティックな気持ちは、後でね、モード(笑)}
その情景を思い出すと、勉強にならなくなるので(笑)
道路標示の、白線と鎖線のハナシとか
いろいろ、普段出てこないようなルールをお勉強したり。
少し、お勉強して。
飽きたころ、ひとやすみ。
お庭の木々とか、眺めながら。
レモネードとサイダー。
それは、輝彦の部屋にあるちいさな冷蔵庫から
持ってきたもので。
「そういうのって便利だね」と、友里恵。
「うん、母屋まで取りにいくのも不便だし、夜とか」と、輝彦。
「あたしたちがここに住む、ってなったら....キッチンとかは母屋に行くの?」と
友里恵ちゃんの言う事は夢っぽいけれど。
でも、その心配は無くて。
「うん、この離れにもあるけど、1階に。お風呂もついてるし。旧いけど」と輝彦。
離れはひと家族が暮らせるように出来ている。
「そうなんだ....立派なお屋敷。」と、友里恵は言うが
輝彦は、ずっとここに居るので、なんとも思わない(笑)
そんなものだろう。
環境は、最初からそこにあると
それがふつう、と思ってしまうように
ひとの体は出来ている。
大昔、動物だった頃の名残で
回りの音とか、匂い、見た目などと「違うもの」を
見つけ出す、つまり「敵」を探すために
そうできていると、進化生物学では言われていた。
その能力が、今の世の中では
使う場所がないので
暇な人は、「ちょっとでも違うひと」を
見つけ出して敵にしてしまう、そんなこともしたりしているけれど
それは暇なだけで、仕事を与えれば良いだけなのだけれど。
それが、あのコンビニが無くなる理由の根源だと
輝彦は考えている。
そう、別にあのコンビニのオーナーが
悪いことをした訳でもなく。
ただ、偶然
夫が公務員だから、土地が転がり込んできて。
それで、苦労せずに儲かったので
目立ってしまったから、攻撃された。
そういう、割と動物的な理由である。
犯人と言ってしまえば、みんなが犯人である。
その攻撃に参加したもの全員が。
元はと言えば、不正な手段を使って
道路建設を簡単に済まそうとした行政、それに
便乗して個人資産を増やそうとした
元オーナーの失策だったのであろう。
コンビニなど経営せず、土地を売却してしまえば
犯人の付け込む隙は無かった。
そういう、動物的で
人間以前のような行動をする人が多いので
友里恵は、中学教師にセクハラされそうになった。
それも、たまたま友里恵が
その教師にとって魅力的、つまり
他と比較して目立っていたと言うだけの理由で
教師の、動物性プログラムを起動させてしまった。
どちらの例も同じで、最近の人々の中には
動物的な人も多く、それらは人間以前(笑)のような
行動形態を持っている、と言う事なのであろう。
法律は、人間の為のもので
それら、人間以前の人に対しては
あまり意味が無かったりもする、そういう印象だ。
と、輝彦はなんとなく思った。
でも、幸い友里恵は難を逃れて
今、平和を取り戻している。
それだけでも、良かったと輝彦は思う。
「それで、運転の練習は?」と、友里恵が言うので
「そうだね、あの、試験場でもいいし、深町の会社の
となりの教習所が、休みの日とか、朝とかは
空いているから、そこで練習すればいいんじゃないかな。
普通に、運転できれば大丈夫だと思うよ」と、輝彦。
「そっかぁ。クルマ、どーしようか?」友里恵は
重大な事に気付いた(笑)。
輝彦のシトローエンでは、ちょっと練習には
向かない。
試験車は、マツダ・アクセラだが
トヨタ・クラウンでもいい。
大きさは似てるから、シトローエンでもいいか....。と
輝彦は思った。
「ま、その辺は深町先生に聞いて(笑)みるか。」と
輝彦は楽しげだ。
-----------------
そういって輝彦は、深町のケータイに
ワン切りした。
乗務中だったり、寝てたら起こしてしまうから、の
気遣い。
「?」友里恵は意味が解らずに
言問い顔。
なんとなく、首を傾げたバグ犬みたいで
ユーモラス。
それを、輝彦は友里恵に言うと
「はは。バグって可愛いよね。あ、でも
犬の種類詳しいね」と、友里恵。
「うん、あの、なんだっけ、テレビの。
犬がお散歩する番組、好きだから」と
輝彦が言う。
そのうち、深町から電話。
「ん、ああ、俺。あのさあ、自動車教習の...
あ、そっか。じゃこれから」と、簡潔に
電話は切れた。
「どーしたの?」と友里恵。
「うん、あのね、今日は早番でもう終わりだから
これから来るって」と、輝彦。
「早番なんてあるんだ...あ、でも、迷惑じゃなかったかなぁ」
と、友里恵は気遣う優しい子(笑)
「うん、いいんだよ。深町が言い出したんだし。」と
輝彦はさっぱりしている。
男同士っていいなぁ。
友里恵は、気心しれた友人同士の
清々しい関係を、なんとなく憧れて。
...男の子になってみたかったな。
なんて、思ったりもした。
「ねえ、アナタは生まれ変わったら、
男の子になりたい?」と、友里恵は唐突に
夢のある話をする。
輝彦は、いつかの朝もそんな事話したっけな、と
回顧しながら
「一回くらい女の子、ってのもいいかも。
僕はねぇ、母上が女の子を欲しかったらしくて。
赤い服とか作っちゃったんでね。
しばらく女の子みたいな格好してたんだって」と、輝彦。
それは本当で、時々女の子に間違えられていた。
「優しそうだもんね。」と、友里恵。
「中学の頃、クラスメートにそう言われたっけ」と、輝彦。
「それって、彼女?」と、友里恵は楽しそう。
嫉妬、ではない(笑)。
我が物を慈しみ、過去の事を知りたい、と言う感じ。
「なかよしの友達かな。その頃はね、ツーショットで
歩く、なんて事も滅多になかったし」と、輝彦は
懐かしそうに振り返る。
思い出の中の少女は、友里恵とは
似ていない。
長身でスリム、大人しい子だった。
「そーなんだぁ。なんか、楽しそう。
あたしもクラスメートで生まれたかったな、あなたの」
と、友里恵。
おもしろい発想だな、と輝彦は微笑む。
時間を飛び越えて、過去に生きたいなんて
タイムトラベラーみたいだ。
もちろん、友里恵にSFの感覚は無いのだけれど
自由な発想で考える時、SFのようになるのだろう。
「赤ちゃんが、男の子と女の子だったら。
一緒の学校行って、クラスメートになれるね」と
友里恵は言う。
次元を越えて、クラスメートになりたかった
ふたつの心が、兄妹(姉弟?)になって。
と言うのだろうけれど、まさにSFだ。
赤ちゃん、と言うあたりは
女の子らしい、愛らしい物語だ。
「友里恵ちゃんって、絵本作家になっても
面白い本が作れそうだね。」と、輝彦は言った。
えー、あたしバカだもん。と、笑ってかぶりを振る
友里恵だったけれど
発想はおもしろいし、かわいらしいな、と
輝彦は思った。
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