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東森自動車教習所
しおりを挟むここは、東森自動車教習所。
深町のバス会社の隣だ。
「かわいそうって?」輝彦は
意図を尋ねた。
「だって...それじゃ、前のね、オーナーと
その、おじいさんは
別に、悪くないのに。死ぬ事は無かったのに。
道路や鉄道が来なければ、何も無かったんでしょう?」
そういう考え方もあるな、と
輝彦は驚いた。
そう、確かに。
自分の家が、道路になるからどいてくれ、と
言うのも随分無理な話だ。
鉄道は来たけど、事故があるまで
踏切はできなかったり。
そういえば、あの西森交差点も
最近まで信号が無かったっけ。
「友里恵ちゃん、優しいな」と、輝彦は思わず
そう言い、淋しげな彼女の
肩を引き寄せた。
「おー、おふたりさん。熱いねぇ。」
声の主は、深町。
今日は出勤らしく、バスドライバーの制服なので
妙に、大人びて見える。
と言っても十分大人なんだけど(笑)41歳だ。
「おお、深町か」と、輝彦。
「ああ、バスはしんどいなぁ。音楽界に戻りたいよ」と
深町。
「戻ればいいだろう」と、輝彦が言うと
「まあ、いろいろあってさ。好きなことして
食えればいいんだけどな」と、深町。
深町の父と兄が早くに亡くなったので
彼が、母親のそばに住んであげているのだと言う。
それで、音楽なんて不安定な仕事は
家計が難しいので、家で
作詞をしたり、小説を書いていたりするのだ、とか。
「深町さんって、やっぱりステキ」と
友里恵は、瞳を輝かせて。
「そかー、いやぁ、可愛い子にそう言われると
うれしいなー、わはは。あ、じゃあ、出発だから」と
深町は慌ただしく駆けて行った。
あいつが、ステキ?
輝彦は、よくわからない。
友里恵ちゃんって、面白いものの
見方をするな。
そんな風に思って
「なんで、深町はステキなの?」と
「だって、誰かの為に頑張れる人って
なんかいーな。って思うもん。
そういう人って、男らしいなって。」
なるほど。友里恵ちゃんらしい心の言葉だな。
輝彦はそう思った。
そういえば、あまり見かけないタイプだよな
深町も。
そうは言っても、輝彦本人は
たまたま、兄も健在だから
母のために、仕事を変えたりしないで済むだけ。
でも、恵まれている事に
感謝しなくちゃな。
内心そう思っても、なかなか
声に出してはいいづらいのは
輝彦33歳、まだ、ちょっと
子供っぽい思考も残っている(笑)
「でも、アートの道を諦めないで
お家でシンガー・ソングライターしてたりとか
諦めないところ、も
かっこいいな。」と、友里恵は続ける。
輝彦は、友人を誉められて
それは嬉しいけれど、なんとなく....
友里恵と年が離れてるので
いつか、若い男に浚われるんじゃないかと
ちょっと不安だったりもした。
それは、輝彦自身の愛を意味してもいるんだけれども。
本人は、それにちょっと気付かなかったりする(笑)。
「それで、免許取れそう?」と、輝彦は
思考を切り替えるように、話題を変えた。
「だめだー!実地はいいけど、学科がねー。
頭悪いもん」と、友里恵。
「スクーターの免許もってんじゃん」と
輝彦は、わざと軽く言った。
「でも~~。100問なんて、飽きちゃうー」(笑)。
明るい子、友里恵(笑)
「深町に教われば」と、輝彦。
「どーしてぇ?あなたが教えてよ」と、おねだり
友里恵ちゃん、かわいく。(笑)
「深町はね、先生の免許もってんの。」
いろんな職を転々としたけど、ミュージシャンを
するような性格なので、窮屈なのは
合わないらしい、と輝彦。
「あなたと、なんか似てる」と、友里恵はにこにこ。
「そーかなぁ、あんなに無骨かな」と、優男自慢、輝彦は
まだまだ若い。
「見た目は違うけど、なんか、自由なとこ。」
言葉少なに、的確な友里恵ちゃん。鋭い。
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