DiaryRZV500

深町珠

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第15話 51X

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日記 1985 11/x   RZVと慣らし運転の日々




そうこうしているうちに、家のガレージにもRZVはなじみはじめて
それまでCBX750Fの黒いカウルに見慣れていた場所には、RZVの紅白の
おめでたいカラーリング(?)が明るい色彩を放つようになった。

おめでたい、といえば例のアホゥNし山だが、ヤツは懲りずにニンジャに
乗っていて、それまでは俺のCBXについてはこれたのに
俺がRZVになってからは、全くついてこれずにいじけていた。


一度、俺のRZVに十国峠で乗せてやったら、それ以来勝負に挑んで来なくなった。
まあ、マシンのパフォーマンスが違い過ぎるし
箱根くらいの狭いワインディングだと、RZVが圧倒的に有利だ。
RZVでも、後にでてくる250の2ストには実際、コーナーではかなわないし..
(だから、立ち上がり加速で勝てばいい、のだが)
もとよりマシンの性能が勝負を左右する傾向のある公道、勝ち負け、と意識する
のがまあ、「若い」んだが。
この頃の俺もそうだった。で、後年、デビューのNSR250とかに煽られると
先に行かせて立ち上がりラインでぶち抜いたり、とか ..
まあ、青かった、とかいいようがない、が。







で、走りにいっても楽しめないヤツはRZVを買えるわけもなく
(クラッシュの部品代などのローン残債で)
仕方なく、ニンジャを磨いてひとり、いじけていた。



このNは、自己認識能力が欠如している、というバカ特有の性質を
ご多分にもれず、持ち合わせている。

潔癖、というか、a(c) というか。

転倒傷のあるカウリングで走るのが嫌で、新品のカウルを買ったり。

埃がついているカウルを手で触れるのが「汚い」といい、
いつも、溶剤入りのレザーワックスで拭いている。







(実の所、樹脂のカウルをあれで拭くと、溶剤が浸透してひび割れる。のだが。
その事に気付かず、「俺ぁ、繊細だッからよぉ...。」と、いつも拭いていた。
ちなみに、スプレイ缶には注意書として[プラスチックには使用するな]と書いてある^^;)



で....


数ヵ月もすると、見事にカウルはひび割れだらけ。


怒ったNは、「不良品だ」と川崎重工に怒りの手紙を書いていた。


...ひょうごけん、あかしし、かわさき町、いちょうめ..
...カワサキオートバイ、おんちゅ。



曰く「俺ぁ繊細だし、スーパースターだっからよぉ。
なんたって、クロスビーは俺のダチだぜ、(本当は、パドックでサインもらっただけ)


カワサキワークスに文句イッテヤンネエと」








....繊細、どころか、川崎重工にとっては人災に違いない。












俺は俺で、Nをほっぽって一人で慣し運転を続けていた。
一応、1000kmくらいは無理をしないで、と。
山にいってもかるーく流してる、程度。

国内仕様のままのRZVは、割と低速のある感じ、で、排気音も
どこかこもった感じで、以前、乗り回していた輸出仕様とはだいぶ違う感じ。


輸出仕様が バラバラバラ..とアイドリングするのに
国内仕様はボコボコボコ ....と、こもった音。
下バンクのサイレンサーには47X-....と型番が書いてあるから
下はエキパイを加工すればよさそうだ。と聞いていたが
慣らし運転では不要だろう、と思ってそのままにしていた。
しかし、エンジンが全体的に鈍い、という印象で
やっぱり排気管に蓋がついてるだけの事はあった。



その内、輸出仕様にしてもらおう。


あちこち聞いてみて、その道のプロ(元、ヤマハワークスメカ、とあるレース?映画で
TZ500のメンテを映画会社に頼まれて「協力、 Yモーター」とエンディングテロップに
名前がでていたあの店だ)に頼む事、にした。


で、この日の俺は国内仕様のまま、箱根R1を流していた。
輸出仕様の全開走行と比べて、まるで別物のように軽いハンドリングに首を傾げながら。


16インチの前輪は、以前、全開で走った時の印象とは違い、切込みすぎるくらいに
切れ込む。
ハンドルから抜重すると、スーッ、と入る感じだ。
このRZVは、前輪がどちらを向きたがっているか、が乗り手にわかりづらい。
まあ、16インチはだいたいそう、なんだけど
ハンドルに伝わる手ごたえが弱いので、ちょっとでもハンドルに力が入っていると
その方向に走っていってしまう。
で、後輪が18インチなので、そちらは向きたがっている方向をはっきり主張する。
これもまあ、ジャイロ効果、というヤツのせいで、16インチと18インチでは
タイアやホイールの重さが違いすぎるから、仕方ない、という事を
ちょっと前、誰かに聞いたような覚えもある。


そんな訳で、アクセルを全開でコーナー立ち上がり、なんて時に
RZVの強烈な加速に体が引っ張られて、ハンドルに舵角がついていても、そいつが
腕にかかった加速Gで、外を向いてしまう。
で、思ったよりも立ち上がりで孕む、曲がらない、と思い込み
無理にリーンさせる。でも、ハンドルに力がかかってるから
リーンさせても曲がらない。で、重く感じる。

その事に気付いて、ターンインの時も意識して腕の力を抜いてやると
低重心マシンだから動きは素早くないが、安定して向きを変えるようになった。


なんのことはない、曲がらないと思い込んでたのは俺がヘタだったのだ。



コツを覚えてからのRZVのライディングは楽しかった。
まるで250のマシンのように軽快に慣し運転をして
6000rpmリミットでも、素早いコーナーワークで
山走りを楽しんだ。


相変わらず、アホなNをほっぽって、俺はひとりで山を走り回って。
直ぐに、慣し運転は終り、ギアオイルを変えようか、と思い
アンダーカウルを外して見ると、カウルの後、取り付けビスの根本に
ヒビが入っていた。

初期型のRZVは、アンダーカウルの後側をフレームに止めるステーがついていて、
フレームからでているボルトと締結するようになっていた。

これのステーが短く、直接プラスチックのカウルにハトメで止めてあるので
そこの根本から割れる、のだ。


行きつけのT輪店に行くと、どうやらクレームになっているらしく
対策が施されたアンダーカウルをヤマハは持ってきた。


それを見ると、ステーそのものが無かった。^^;


まあ、それが無ければ折れる事もない、だろうが...


ちょっと、怖い気もした。もし、走ってる時に脱落したら。
と思うと。

幸にして、そんな事はいままで起きてないが。



慣らしも終り、輸出仕様に戻す条件は整った...



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