タビスルムスメ

深町珠

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かぼすジュース

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トンネルをくぐる度に、だんだん里に下りてくる。

「このトンネル、すごいところに掘ってあるね」と、愛紗。

山の、かなり高いところ。

だから、レールはそこから、鉄橋のような構造物を造り、その上に渡してある。

山と山を、そうしてつないであったり。


ともちゃんは「はい。線路を通す時、山の高い所だと国有地なので
楽なのだそうです」

菜由は「なーるほど。」

さかまゆちゃんは「水害ですとか、地震の時に・・・地盤が軟らかいので
そうすることが多いと聞きます」


愛紗「そうなんですね」



由香「友里絵、静かだね」


友里絵「わかんなーい、漢字苦手ー」


ハハハ、とみんな笑う。パティは「あ、もうすぐタケダですー」



友里絵は「たけだたけだたけだ♪」

由香「アイアーン、ショーック!」


菜由「懐かしいな」


友里絵「コラ、テツヤ!なんばしょっと」

菜由「ああ、テツヤね(^^)」


友里絵「ろーと、ろーと、ろーと♪」


由香「わかりやすいタイアップだな」


列車は、しゅー・・・・・と、排気ブレーキから空気が漏れる音がして。

エンジンが床下で、どこどこどこ・・・・・。


電車では聞いたことが無い音で、なんとなく親近感があるな、と
愛紗は思う。



右カーブの途中に、駅がある。
左手の高いところに崖があって、そこからお水がちょろちょろ。


友里絵は「あれ、お水出てる」


菜由「滝かなぁ」

由香「駅のそばって面白いね」

友里絵「関西はうどん」


ゆか「おそばじゃなくて」

ともちゃんは笑うと、幼い子みたいで
とってもかわいい。
「面白いですー」

さかまゆちゃんは「下関駅とか、うどん、おいしいですね」

愛紗は「来るときに頂きました。「富士」号で」

さかまゆちゃん「いいですねー。ブルートレインの旅」

友里絵は「いつか乗務するの?」

さかまゆちゃん「さあ・・・女子は夜勤禁止ですから。乗るとしても門司までですね」

友里絵「それもつまんないなぁ」


由香「じゃ、男になれ!」

友里絵「男になりたいポンポコピ」

菜由「懐かしいなぁそれ」

愛紗「なんか、お薬を飲むの」

由香「そうそう。」

さかまゆちゃん「いっぱいありましたね、そういうお話。」


あそ3号は、静かに豊後竹田駅に到着。2番線である。


1番線には、赤いディーゼルカーが待っている。ドアは閉じたまま。


友里絵は「あれは、なにかなぁ」


ともちゃんは「普通列車、大分ゆきですね」


友里絵「あー、特急券いらないから」


さかまゆちゃん「ハイ。それと・・・特急だと停まらない駅があるので。
そこに降りる人とか」


ともちゃんは「豊後清川の駅の辺りに、滝があって、ビオトープになってますね」
と、沿線案内。


友里絵はハテナ?「ビオトープってなあに?」

菜由「おなかの薬でしょ」

由香「そりゃビオフェルミン」

ハハハ、と、ともちゃんも笑う。「親水公園ですね」


友里絵「ぶくぶくぶく・・」と沈むマネ。


由香「そりゃ浸水だって」


友里絵「きゃー、ジュリーぃぃぃー~」(^^)。

由香「心酔かいな」


さかまゆちゃん「楽しい」と、笑う。


菜由「豊後竹田って、お城があるんでしょ?」


ともちゃん「ハイ。あの・・・右手の上にお城の石垣が」



愛紗「なんだっけ。えーと・・・。」


友里絵「そこに書いてある」と、ホームの看板。

「荒城の月」  ・・・「アレシロ?いやーしろって言われてもなー」


菜由、ははは、と爆笑。「アレね」



由香「そうそう。」

友里絵「that」

愛紗「そうです」

友里絵「ほかに何か?」



さかまゆちゃんは「なんか、おもしろいですね。さすが、コメディエンヌさん」


友里絵「そう、スカウトされちゃったもん!」

ともちゃんは「えー~!!あんびりばぼー」


由香「それは最近だなぁ」

菜由「なはは」


友里絵「昔はさーぁ ・・・
「やっだー」
「うっそー」

だったんだけど」(^^)。


菜由「そうそう、決まり文句で。
「しんじらんなーい」とか。」


特急「あそ」3号に乗る人は、そんなに居ない。
だいたい、熊本からのお客さん。

時刻表を見た友里絵は「あ、この列車は人吉から来るのもあるんだね」

ともちゃんは「ハイ。この後くる5号ですね」

菜由は「覚えちゃってるのね、すごいなー」

ともちゃん、えへへ、と、ちょっと舌出して。
いたずらっぽくて、かわいい。


友里絵は「人吉、一昨日泊まったんだねー」と。

さかまゆちゃん「夕べはどちらですか?」


由香「KKR南阿蘇」

ともちゃん「豪華ですねー、あそこ。一度行ってみたいなあ」

菜由は「近くだと行かないんだよねー。」





パティはワゴン押して戻ってきて「ジュースもあるのヨ」と言って。

ホテルみたいなサーバーで、絞った感じのジュースをカップに入れて。

オレンジ。


友里絵「ありがとー、うれしいな」と。にこにこ。

由香「本格的ーぃ」

パティは「ハイ。絞ったものをパックして持ってきています。」

友里絵は、ひとくち「んー、おいひー」

パティは「かぼすジュースもあるんですよ」と。

別のサーバーを、アイスボックスから出して。


菜由は「かぼす、特産なのね。」

ともちゃんは「ハイ、大分の」


友里絵は「大分なの?ここ」


さかまゆちゃん「ハイ」


愛紗は、あー、戻ってきちゃったなぁ、と・・・。
旅が終わっちゃったような気持が、すこし。

でも、友里絵たちが居るので、気持は明るい。

やっぱり、友達っていいなぁ。

そう思った。

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