タビスルムスメ

深町珠

文字の大きさ
上 下
286 / 361

sugar baby love

しおりを挟む
そのころ・・・・熊本・国鉄男子寮。
お兄ちゃんは、朝4時からの仕事を終えて。

「やれやれ・・・。特急組の予備か」

名誉ではある、出世である。
これまでに事故が0、と言う辺りの評価だろうか。

にしても・・・。予備と言うと微妙だ。

本務者が急病、とかの時のスペアだから。
待機していて、用が無いときは回送で帰ったりすることにもなりかねない。

「楽」だと言えばそれまでだが。

その為に、例えば門司や、西鹿児島に行ったりしなくてはならないし

旅客の方の線路の通り方も覚えないといけない。


「旅客は面倒だなぁ」と、お兄ちゃんは思う。



寮に戻ると、寮母さんが「おかえり、日光君」と、にこにこ。
くるくるパーマのヘアー。


考え事していても、「ただいま」(^^)。


・・・こういうおばちゃん、いいなぁ。と。お兄ちゃんは思う。


奥さんにするなら、朗らかで、あっけらかんとしている人がいい。
そんな風にも思う。


それで・・・・あの4人の中だったら友里絵がいい、と・・思ったのかもしれない。



自分の部屋に行こうとすると、これから夜勤の機関士、顔見知りが

「よ、おつかれさん。日光くん、特急組だって?タイヘンだなー。」

と、肩を叩いて。


お兄ちゃんは「はは」と、笑っては見るけど・・・・
やっぱり、貨物がいいな。

なんて、思う。


ひと目に見て出世でも、本人の気持は別だったりする。




部屋に戻って、お風呂の道具を持って
1階に下りた。

あんまり人のいない、この時間。

のーんびりとお風呂に浸かる。


熊本、湯どころ。
ここの寮も温泉である。単純泉、と言って、お湯、そのままみたいな感じだけど。


シャボンを立てて、タオルで洗った。


ついつい、触れてしまうので・・・・

お兄ちゃんは、まゆまゆの姿態をイメージして、しこしこ・・・。

なーんて事は絶対しない(笑)。



と言うか、「お兄ちゃんなんてキライ!」と、言われないように・・・。と
自主規制してしまうところが多分にあって。


家に居た頃も、お宝映像(笑)とかは持って居なかった。

なーんとなく、妹が見たら・・・と、言う脅威が(笑)。あって。



「背徳のカイカーン」

なんて事は、しない(^^)。間違っても。


そういう、ちょっとかわいそうな、一面もある、お兄ちゃんだった。



それも、まゆまゆがかわいいから、なんだけど。









熊本駅、2番線。
急行「球磨川4号」人吉行きは、もうじき発車。

まゆまゆは、ホームを歩いて、2号車に乗り込むと・・。

ビジネスマンふうのおじさん。ふたり。

「あー、車掌さん。この列車、どこ行き?」


制服のままなので、そう見える。



「人吉ゆきです」と、まゆまゆ。ちょっと緊張。



「八代へ行くのに、後から出る新幹線とどっちが先に着く?」

まゆまゆちゃん、困る。この列車用の時刻表を持って居ないからだ。
かといって、知らないとも言えない。


「はい、時刻表を持って来ますから、少々お待ちください」

と言って。


また、ホームに出て、板倉車掌(^^)を探す為に最後尾へ向かう。


そこに、裕子、登場。「どしたの?」

ちょっと気になって、あとから来たのだった。


まゆまゆは「あちらのお客様が、八代へ新幹線とどちらが先に着くかとお尋ねで。」

裕子はにっこり「ああ、新幹線だって乗換えだから、これが先に着くわ。この時間ならね。」



まゆまゆ、にっこり「ありがとう、裕子さん」

裕子は「いいよ(^^)、私が行く。車掌は私だもん」と。


車内にデッキから乗り込み、ソツなく対応。


まゆまゆは、ホームからそれを見ていて「さーすがだ、裕子さん」


裕子は、旅客に頭下げて、会釈。

頭上げて、手招き「出るよ、汽車」


まゆまゆは、気づく「あ」


裕子も、最後尾、4号車に駆けていった・・・。


「わたしってダメだ・・・」と、まゆまゆは思う。

知らなくて当然なのだけど。

2号車に乗りこんで、業務室の鍵を開けて
がらん、としている中に入って。
業務室の扉を閉じた。

壁についている、寝台列車のような折りたたみ椅子を出して、ちょこんと腰掛けた。


きっちり、ちゃんと。


お兄ちゃんが恥ずかしくないように。


そんな、気持がまゆまゆちゃんの気持のどこかにあった。


「思えば・・・・国鉄に入ったのも」
お兄ちゃんの背中を追って。
そういう気持もあったのかな、と思う。

市役所の事務員のほうが、安全でいいと
学校の先生も薦めたのだし。




「でも・・・」
どうしても埋まらない隙間。


仕方が無い。


まゆまゆのかわいい指先は、ひとりでに・・・・。


なーんてことは、ない(^^)。


音楽が好きなまゆまゆは、カーペンターズの妹さん
カレンの気持を思ったりするのだった。


・・・・おにいちゃんが、好きだったら・・・・。

They long to be closs to youを歌う時も、そんなイメージだったのかも・・・。

「きっちり」歌うカレンさんは、お兄ちゃんの為に
無理してたのかなぁ。

なんて思う、オトメちゃん、まゆまゆだった(^^)。










大分駅のみんな・・・・。


パティは、お着替えを終えて。

のどかに、にっこり。のびのび「あー、くたびれたぁ」


ともチャン「朝早いもんね」CA専業だと、食べ物の積み込みとか、そういう仕事もある。
若干、食堂車クルーみたいなところもあるので、列車が出る1時間か、2時間前に
来ていたりする。

折り返しで補充、なんて時は
補充基地へ行ってこないとならない。


普通は折り返し、と言っても
別列車の乗務が多いのだけど。


それで、登用試験を受けて車掌補になるCAが多かった。
そうすると、車掌と同じ黒いスーツになる・・・んだけど

車掌と間違えられて、熊本駅のまゆまゆみたいに

「どっちが先に着く?」なんていう事を聞かれたりする。
どっちもどっち。


なので、パティ18歳は、「まだCAでいいなー」なんて思っていたり。






しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

お嬢様、お仕置の時間です。

moa
恋愛
私は御門 凛(みかど りん)、御門財閥の長女として産まれた。 両親は跡継ぎの息子が欲しかったようで女として産まれた私のことをよく思っていなかった。 私の世話は執事とメイド達がしてくれていた。 私が2歳になったとき、弟の御門 新(みかど あらた)が産まれた。 両親は念願の息子が産まれたことで私を執事とメイド達に渡し、新を連れて家を出ていってしまった。 新しい屋敷を建ててそこで暮らしているそうだが、必要な費用を送ってくれている以外は何も教えてくれてくれなかった。 私が小さい頃から執事としてずっと一緒にいる氷川 海(ひかわ かい)が身の回りの世話や勉強など色々してくれていた。 海は普段は優しくなんでもこなしてしまう完璧な執事。 しかし厳しいときは厳しくて怒らせるとすごく怖い。 海は執事としてずっと一緒にいると思っていたのにある日、私の中で何か特別な感情がある事に気付く。 しかし、愛を知らずに育ってきた私が愛と知るのは、まだ先の話。

♡蜜壺に指を滑り込ませて蜜をクチュクチュ♡

x頭金x
大衆娯楽
♡ちょっとHなショートショート♡年末まで毎日5本投稿中!!

お兄ちゃんが私にぐいぐいエッチな事を迫って来て困るんですけど!?

さいとう みさき
恋愛
私は琴吹(ことぶき)、高校生一年生。 私には再婚して血の繋がらない 二つ年上の兄がいる。 見た目は、まあ正直、好みなんだけど…… 「好きな人が出来た! すまんが琴吹、練習台になってくれ!!」 そう言ってお兄ちゃんは私に協力を要請するのだけど、何処で仕入れた知識だかエッチな事ばかりしてこようとする。 「お兄ちゃんのばかぁっ! 女の子にいきなりそんな事しちゃダメだってばッ!!」 はぁ、見た目は好みなのにこのバカ兄は目的の為に偏った知識で女の子に接して来ようとする。 こんなんじゃ絶対にフラれる! 仕方ない、この私がお兄ちゃんを教育してやろーじゃないの! 実はお兄ちゃん好きな義妹が奮闘する物語です。 

連れ子が中学生に成長して胸が膨らむ・・・1人での快感にも目覚て恥ずかしそうにベッドの上で寝る

マッキーの世界
大衆娯楽
連れ子が成長し、中学生になった。 思春期ということもあり、反抗的な態度をとられる。 だが、そんな反抗的な表情も妙に俺の心を捉えて離さない。 「ああ、抱きたい・・・」

[R18] 激しめエロつめあわせ♡

ねねこ
恋愛
短編のエロを色々と。 激しくて濃厚なの多め♡ 苦手な人はお気をつけくださいませ♡

俺のセフレが義妹になった。そのあと毎日めちゃくちゃシた。

ねんごろ
恋愛
 主人公のセフレがどういうわけか義妹になって家にやってきた。  その日を境に彼らの関係性はより深く親密になっていって……  毎日にエロがある、そんな時間を二人は過ごしていく。 ※他サイトで連載していた作品です

♡ちょっとエッチなアンソロジー〜おしっこ編〜♡

x頭金x
大衆娯楽
♡ちょっとHなショートショートの詰め合わせ♡

♡ちょっとエッチなアンソロジー〜アソコ編〜♡

x頭金x
大衆娯楽
♡ちょっとエッチなショートショートつめあわせ♡

処理中です...