タビスルムスメ

深町珠

文字の大きさ
上 下
64 / 361

大分ゆき532列車

しおりを挟む
「なれたらの話しね」と、愛紗は笑う。

「それはそう」と、伯母さんも。


「そうだよー。あたしらなんてさ、バスガイドだってやっと、だったんだもの。」
と、由香。

「あたしはそうでもないけど」と、友里絵。

「裏切り者!」と、由香は笑う。


「そう、友里絵ちゃんは資格あるものね。それでもバスガイドになった。」と、愛紗。


「だって、あの時はタマちゃんが居たんだもん。でも、すぐに居なくなって。
裏切り者!」と、友里絵も笑う。


「東大に付いて行けばいいじゃん」と、由香。

「そんなの無理に決まってるじゃん」と、友里絵。


「だからさ、東大の中のお店とか。バーガーキングとかさ、カフェとかあるじゃん。」と、
由香。


「そんなのあるの?」と、愛紗。


「うん、あるんだって。あたしも友里絵から聞いたんだけど。
最近の東大ってそうなってるんだって。」と、由香。


「変わったねぇ」と、伯母さん。



「行った事あるの?」と、愛紗。


「ないけど、なんとなく。国立ってどこも硬いもの」と、伯母さん。


「国鉄もそうか」と、友里絵。


「そーだよぉ。あたしらみたいの雇わないよ、きっと。国鉄さん」と、由香。



伯母さんは笑って「大丈夫よ。国鉄ってね。元々は雇用を作る為に出来たから。
田舎の人が、農業だけ。っていうんじゃないように。って。郵便もそう」



「それ、聞いた事あるな」と、由香。



「おー。頭いい。」と、友里絵。



伯母さんは笑いながら「だから、割と誰でも入れたの。昔はね。」と。


「なーんだ、今はダメか」と、友里絵。



「そうでもないと思うよ。人をちゃんと見るから。見掛けとかじゃなくて。
信用できる、そういう人は大丈夫。あなたたちは大丈夫」。と、伯母さん。


「ただ、求人があるか」と、愛紗。


「それは欠員待ちね。昔と違うから」と、伯母さん。



「それだよなー。」と、友里絵。





ご飯を食べて、伯母さんと、友里絵たちは

駅に向かって歩く。


友里絵は振り返って「一晩、ありがとうございました」と、お家に礼をした。



「なんか、いいね、それ。あたしも」と、由香も礼をした。



「いい子ね、ふたりとも」と、伯母さん。



「だって、もう逢えないでしょ?」と、友里絵。


「そうか・・・」と、愛紗。


旅してると、出会うと別れ。そんなことも多い。
もう会えない。

その言葉は、なんとなく淋しい響きだと
愛紗は思う。




駅に着く。

日曜だけど、それでも乗る人もいる。
大抵は、大分方面への通勤・通学客だ。



「ちょっと、まだ早いね。」と、愛紗。


「大分行ってさ、靴買いたーい。」と、友里絵。

「ああ、仕事の靴だもの」と、由香。


「家に送っちゃえばいいものね。」と、愛紗。



旅行荷物も、帰りはそうする事もある。

最後の日、お土産とか、着替えとか。
今使わないものは送ってしまったり。



伯母さんは、出札の鍵を開けて。
綺麗な木目のある引き戸を開いて。
これも誂えだ。



「じゃね。また一週間後。寄って?」と、伯母さん。

「ありがとうございましたー。」
「ありがとうございます。」
「ありがと」

三者三様。


大分方面への登り列車は、跨線橋を渡って反対側のホーム。
2番線。


伯母さんに手を振って、3人はバッグを担いで
コンクリートの階段を昇る。

「まださ、蒸気機関車が走ってきそう」と、友里絵。


「雰囲気あるね。」と、由香。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】実はチートの転生者、無能と言われるのに飽きて実力を解放する

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング1位獲得作品!!】  最強スキル『適応』を与えられた転生者ジャック・ストロングは16歳。  戦士になり、王国に潜む悪を倒すためのユピテル英才学園に入学して3ヶ月がたっていた。  目立たないために実力を隠していたジャックだが、学園長から次のテストで成績がよくないと退学だと脅され、ついに実力を解放していく。  ジャックのライバルとなる個性豊かな生徒たち、実力ある先生たちにも注目!!  彼らのハチャメチャ学園生活から目が離せない!! ※小説家になろう、カクヨム、エブリスタでも投稿中

すべて実話

さつきのいろどり
ホラー
タイトル通り全て実話のホラー体験です。 友人から聞いたものや著者本人の実体験を書かせていただきます。 長編として登録していますが、短編をいつくか載せていこうと思っていますので、追加配信しましたら覗きに来て下さいね^^*

クールな生徒会長のオンとオフが違いすぎるっ!?

ブレイブ
青春
政治家、資産家の子供だけが通える高校。上流高校がある。上流高校の生徒会長。神童燐は普段は冷静に動くが、家族と、恋人、新の前では

【完】あの、……どなたでしょうか?

桐生桜月姫
恋愛
「キャサリン・ルーラー  爵位を傘に取る卑しい女め、今この時を以て貴様との婚約を破棄する。」 見た目だけは、麗しの王太子殿下から出た言葉に、婚約破棄を突きつけられた美しい女性は……… 「あの、……どなたのことでしょうか?」 まさかの意味不明発言!! 今ここに幕開ける、波瀾万丈の間違い婚約破棄ラブコメ!! 結末やいかに!! ******************* 執筆終了済みです。

【本当にあった怖い話】

ねこぽて
ホラー
※実話怪談や本当にあった怖い話など、 取材や実体験を元に構成されております。 【ご朗読について】 申請などは特に必要ありませんが、 引用元への記載をお願い致します。

青夏(せいか)

こじゅろう
青春
 小学校生活最後の一年から始まる青春ラブコメ

愚か者の話をしよう

鈴宮(すずみや)
恋愛
 シェイマスは、婚約者であるエーファを心から愛している。けれど、控えめな性格のエーファは、聖女ミランダがシェイマスにちょっかいを掛けても、穏やかに微笑むばかり。  そんな彼女の反応に物足りなさを感じつつも、シェイマスはエーファとの幸せな未来を夢見ていた。  けれどある日、シェイマスは父親である国王から「エーファとの婚約は破棄する」と告げられて――――?

【完結】記憶喪失になってから、あなたの本当の気持ちを知りました

Rohdea
恋愛
誰かが、自分を呼ぶ声で目が覚めた。 必死に“私”を呼んでいたのは見知らぬ男性だった。 ──目を覚まして気付く。 私は誰なの? ここはどこ。 あなたは誰? “私”は馬車に轢かれそうになり頭を打って気絶し、起きたら記憶喪失になっていた。 こうして私……リリアはこれまでの記憶を失くしてしまった。 だけど、なぜか目覚めた時に傍らで私を必死に呼んでいた男性──ロベルトが私の元に毎日のようにやって来る。 彼はただの幼馴染らしいのに、なんで!? そんな彼に私はどんどん惹かれていくのだけど……

処理中です...