旅と鉄路

[東京-西鹿児島１５００ｋｍロング・ラン〜寝台特急"はやぶさ"５列車〜(後編)]

[Bソロ、パノラミック。]

[Bソロ、パノラミック。]




その、B個室寝台上段（というか２階というか...)の窓から眺める夜景は
ちょっと不思議に湾曲したガラス窓から見える満天の星空、
飛ぶように流れてゆく路線近傍の灯り、時折聞こえてくる踏切警報機の音..
規則的に過ぎるレール・ジョイントの通過音...
唐突にせわしなくポイントを通過するかと思うと、構内踏切の警報音
見れば、賑やかな駅前の風景...
夜行列車、寝台の上段から眺める夜景は格別に旅、という言葉を実感させられる。
もっとも、上段から夜景を眺められるのは中央通路式の寝台、開放A寝台か
５８３系電車寝台の中・上段くらいのものであったし、それらにしても
屋根裏部屋よろしく小さな明かり取り窓という風情であったから
このオハネ２５-1000番台の上段寝台からの夜景眺望は
登場当初はとても新鮮であった事は今でも記憶に新しい。


こうして寝台のベッドに寝ころんで、あれこれと回想する時間というのもまた
夜行の旅の楽しみの一つ、だ。
先日放映されたNHKのドラマ「精霊流し」では２０系３段式寝台の中で
少年が回想する、というカットがあったが（小岩井あたりの列車ホテルロケだろうか？）
夜行の旅に思い入れのある映像制作者なのだろう、と思う。
夜行、旅、列車の中で一夜を過ごす、高速で列車は驀進する....
とても素敵な瞬間だ、と思う。




さて、それほど回想する時間が長い、というのは（笑）
この５列車は浜松の後は名古屋まで停車せず、およそ１時間程の
ロング・ランであるからゆっくりとしていられるというのも理由のひとつ。
如何に運転士が気を使っても停止、発進に無衝動という訳には行かないから
停車駅はなるべく少ない方が寝台列車としては望ましいと思える。
３列車「さくら」は豊橋に停車するが、この列車と１列車「富士」はノンストップ。
およそ１００km強を１時間１５分というハイペースで進行する。
愛知県地方、どちらかというと工業地帯という車窓のイメージで
それまでの静岡ののんびりムードとはかなり印象は異なる。



既におやすみ放送が施され、減光された車内ではあるがそこは個室寝台、
周囲に気遣う事無く明かりを点けたままで居る事も可能だ。
普通のB寝台車だとどうしても深夜に明かりをつけたままというのは
少々気がひけるものだから、その点個室は気楽である。
A寝台個室、オロネ２５型のように洗面台までは必要だとは思わないが
（女性には人気だそうだが）
プライベートな空間でほとんど全ての生活について用が足りるというのはやはり便利。