旅と鉄路

〜寝台特急"あけぼの" ２０２１列車〜

[大宮停車]

[大宮停車]


二階席の良い点というと、外の視線に晒され難いという点もそうだ。
浴衣で寝転んで、ホームを行き交う人たちをのんびり眺めたり（笑）。

一階席だと窓位置が低いからこうはいかない。

大宮駅に定刻停車したあけぼの号、特急とはいえ停車時間は短い。

同じ線区の普通列車を待つ人々が、すでに夜も深まったプラットホームに並んでいる。


お勤め、ご苦労様。
金曜日だからちょっと夜更かしだろうか？
秒の間隙という感じで、すぐに発車となる。
ゆっくりと走る２４系列車は、特急というイメージからは少々遠く
のんびりとした回送列車のようだ。
二階席は揺れが激しいのでは、と思われる方もあるだろうが
今の所直線区間が殆どで、それほどでもない。
高い所にいて、重心が下の方にある、という感じはするが。


[高崎停車]


高崎線経由のこの２０２１列車は、高崎に停車する。

高崎というとだるま市、だるま弁当などと
どちらかというとほのぼのとしたイメージを感じさせるが
実際の駅舎もどこか懐かしみを感じさせるような造りであった。
このあたりまで来ると東京近郊とは言え、旅行に来たという
実感を感じさせるから面白いものだ、と思う。
だるま弁当は、赤い容器に入った炊き込みご飯風のお弁当で
最近はデパートの駅弁フェアなどで有名だから
ご存知の方も多いか、と思う。
そんな、のどかなイメージの高崎駅...
朝ならば、朝粥弁当もあったはず..
などと思いホームを見渡すも、夜に朝粥もないであろうし（笑）
朝粥弁当は数量限定だったし...


ホームにも、もう人影はまばらで地方都市らしい夜の早さである。
たとえば大阪のような大都会の駅などを深夜寝台列車で通過
したりする時、車窓に映るあたかも昼間のような風景に
驚いてしまう事があるが
「都会の夜は眠らない」
などという普遍的な表現を思い浮かべたりもするこんな情景は
地方都市に行くとあまり見かけることはないようである。



[諸国の事情]
概して、夜は早く、朝も早いのが東日本、
どちらも少しだけ遅いのが西日本。
駅を通過する寝台特急列車の車窓から見ると
こんな風に思える。
九州などに行くと朝が遅いことに少々驚いたりもするが
それは東日本の人間の感覚だろうと思う。
地球が自転する事で朝、夜という日照の変化が起こるのだから
西へゆけば日の出は遅く、日の入りが遅くなるという自然現象に
従った感覚であろうと思う。
日本列島が一つの標準時刻で固定されているので
こんな現象が起こるのはちょっと面白いことだとも思える。
太陽の高さ、陽射しの明るさ、という観点から言えば
東北の朝も、九州の朝も一様に朝というイメージに相違ない。
ただ、時刻という数値が日本全国で統一されているから
数値的な違いが発生するという訳だ。



時刻などという概念が定められる前には、太陽の位置に
拠って不均等な時間間隔で人間は生きていたはずだ、と思う。
日の出と共に起床し、日の入りと共に就寝すると言うような。
それは長い間人間の生理を支配し続ける感覚でもあった。
光の明暗に追随する神経内分泌物質がある事からもそれと分かるが
しかし現在、人間にとって太陽の位置は支配的なものでは
なくなり、代わって「時刻」という概念が支配的となった。
無論、文明というのはそういう存在であり時刻の厳密な一致
なくして鉄道の運行などはあり得ない。
こうして寝台車でのんびり寝転んでいる間でも
駅員、乗務員は鉄道時計を擬視し、安全な運行に心砕いて
いるのだし、機関士などは更に平均時速を鑑みながら
ノッチ扱いを行っているのであるが
ふと気づく。
そのような努力を重ね、深夜行の列車を運行する意義とは
なんだろうか？と。