Lotus7&I

深町珠

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テストコース

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リカルドの主張は、的外れなもので
僕ら、研究者チームは理解に苦しんだ。

燃料+空気=>混合気=>爆発=>排気。

爆発エネルギー=>クランク=>回転力変換

回転力+モータアシストトルク=>駆動


この、結果の駆動力が
シミュレーションと、実物エンジンの誤差が大きいので

誤差を空気モデル・パラメータで誤魔化して似せる、と言う・・・・。



そうではなく、部分・部分で誤差を減らすのだと言っても
面倒がって行わない。


MILS、環境変数の物理的妥当性が無ければ
誤差が減るわけはない。


好きで研究をしていれば、それは楽しくて仕方ない作業だから
リカルドの連中は、研究者と言うよりはメカ系技術者なのだろう。

「それなら、全部をこちらに任せ、口を出さないでほしい」と、僕が言うと
不満顔。


エンジン・コンストラクターはこっちである。


リカルドのひとりが、携帯電話でどこかに掛けて、指示を仰いでいる。



バラバラバラ・・・と、ヘリコプターの音がする。


なるほど・・・・仮に、ここに居なくても
ヘリでどこからか飛んできて、何れかに去ることも出来る。





ふと、ヘリの音が止むと・・・。

リカルドのひとりの、話し声が
建物のどこかに反響しているような・・・そういう響きが感じられた。



この建物のどこかに、電話の相手がいるのだろうか?


そういえば・・・・内線8-21-4219と言う
不吉な番号は、所在不明であった。



噂では、その部屋は
事故死したドライバーの一時的霊安室、だとか

スパイを拷問し、死んだものの行き先・・・だとか。

実際、この研究所には
ストレッチ・ワゴンのエスティマ霊柩車があり
時折、隣接する火葬場に出入りする事がある。



僕は、その辺りを空想しながら、お座なりに打ち合わせを過ごした。

F1エンジンの加速性能を向上するために、モータ|ジェネレータを
クラッチで断続するべきだ、と言う僕の主張は無視されたままだったから、もあるが

この建物のどこかにあるのだろうか、その・・・・4219の部屋は。

そのことが気になっていて。


この会議室の電話番号は、4322である。


会議が物別れに終わり、僕は部屋を出て
ちょっと、3階に上がってみた。

同じような部屋が連なっている。


あまり不審な動きをすると、警備にマークされるので
すぐに2階に戻る。

真知子は、ふわ、と微笑み「なにしてるの?」


柔らかい表情をするようになったな、と
僕は思った。


階段を下り、1階に行った。

長い廊下があり、左右に小部屋が幾つかあるが・・・・。
その奥に、なんとなく洞窟音がする空間があるような・・・そんな気がした。

プレハブ小屋のような、この建物に
地下通路?

かもしれない。


テストコースなら有り得るな、と思った。


真知子は、そんな僕を不思議そうに見て「何、考えてるの?」と・・・
親しげな言い方をした。

若い女の子らしいな、と思った。


わたしのものなのよ、と・・・言っているかのようだ。


そう言う事を言わない夏名は、いい子だなと思った。

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