arcadia

深町珠

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「本人に聞いてみたらいいんじゃないかな。」と双葉。

「・・・・そうしたら、どうすると思います?」と、神流。


「たぶん、代わりに自分が向こうに行くって言うと思うよ。」と、双葉。


「それでいい、と思いますか?」と、神流は、なんとなく解せない。


双葉は「珠子も大人なんだから、隠しておいてさ、あと20年待て、って
言う方が残酷だよ。」



「・・・そうかもしれませんね。まだ、可能性に過ぎませんが。」と、神流は
ちょっとため息。



お互いに、まだ研究所に居る。
そろそろ、帰らないと・・・。


「あ、それでは。ありがとうございます。」と、神流は丁寧。


双葉は「なんか、神流ちゃんらしくないみたい。」と。


神流は「いえ、研究者同士のけじめ、でしょうか。大人なのですから。あの、もうひとつだけ

。」


「なんですか?」双葉は、なんとなく予感じみたものを感じる。



「その座標に、別の人が居たらどうなると思います?」と、神流。



「入れ替わる。誰もいなければ、消える。」と、双葉。

「やはりそうなりますか。」と、神流。




その推論だと・・・・・

ペアになっていない人たちが、その「時空の歪み」に偶々出会うと、消える。

珠子たちのように、ペアになっていたら、入れ替わるーーーー。


外見が変わらずに、なんというか、真髄、と言うか。そういうものだけ入れ替わる。



魂の事を、珠、とも言うーーーー。


「うーむ・・・。」と、考え込んでいた神流。


双葉は「どうしたの?」


神流は「あ、いえ、すみません。それでは、ごめんください。」と
電話を切った。




双葉も、なんとなく考えている事は分かる。



「あのアーケードで、若い女の人が居なくなる理由ーーーか。」

時空間の単なる歪みなら、戻ってこれないだろう。


珠子たちの場合は、少し違う。

そんな風に、双葉は思った。




神流は、家に電話を掛けた。


コールーーー。

コールーーー。


かちゃり。


「はい。」と、ナーヴが出る。



「神流です。これから帰ります。珠子はどうしていますか?」


ナーヴは「ご飯を食べて、お風呂に入って。居間でのんびりしていますね。」



神流は「そう、それならいいです。ありがとうナーヴ。それでは。」と
簡潔に電話を切った。



神流の研究所は、そんなに家から遠くない。

電車でほんの少しだ。


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