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正義と暴力

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伊原は、してやったりと思った。

幼い頃からのそれは生活習慣だ。

小柄だから、力では勝てないので

狡い事を考えたりした。


それも、国や教育の制度が悪いので

1960年代ならば、皆の為に悪い事は
しない、と言う正義を
教育した。

だから、体の大きいものは番長にはなったが
体の小さいものを守った。


それは、人類の歴史に沿ったものだ。


群れの者を、皆で守って
助け合う。


それは生き物の正義だ。


だが、日本経済を外国人の侵略に
開け放してしまったので


例えば、ライバル会社に勤めていれば
敵、なんて言う
変な理屈がまかり通ってしまって


番長になっても、地域の皆を守らなくていい
なんていう変な事が正義になってしまう(笑)。



そんな事はないのだが(笑)。





教育から道徳が失せてしまったので
伊原の世代は正義を知らない。



学校で教えないのだ。



なので、伊原のように
誰かを妬んだ時、攻撃してもいいと
思ってしまう。



それは、間違いだ。



攻撃されたら自分が困るから、してはいけないのに



された記憶がないので、わからないだけ、である。


だが伊原は、それを身を持って知る。




伊原は、自分の白いトヨタMark2で
工場から出た。


632、と言うナンバーだった。



みみっちい男らしく、いつものように
前を走っている車との車間距離を詰めた。


そのくらいなら、痛い目に合わないと
甘えていたのだが


それも正義を知らない男の浅はかさ、である。



前を走っていた銀色のブルーバードの
ドライバーは、いきなり車を止めて
ドアを開け、下りてきた。


無言で、窓を開けていた伊原の目に
何か液体を掛けた。



とても熱く、酸っぱい臭いのする液体。




そのまま、ブルーバードのドライバーは
立ち去る。




伊原は、目と顔に焼けるような痛みを
感じ、救急車を呼ぼうにも
目が見えなかった。



立ち往生している伊原。



通り掛かったドライバーは、皆

迷惑そうにクラクションを鳴らして
通り過ぎていく。





伊原は、通り掛かったパトカーに保護されたが
発見された時、伊原は失明していた。



警察の取り調べでも嘘をついて
ごまかそうとした伊原。




「いきなり、液体を掛けられたのです。」



液体は塩酸で、工場なら手に入る程度の
濃度だった。



しかし発見が遅かったので、伊原の目の
角膜は溶けてしまい
使い物にならなかった。




警官は静かに「速度はどのくらいで、
車間距離はどの程度?」と問う。



車間距離があれば、前の車が止まったら
逃げられる。
だから、停止して回避しなかった伊原は
車間距離を極端に詰めていたと判断したのだ。



「30kmくらいで、10mくらい」伊原は
でたらめを言った。

本当は1mもなかった。
それで、前のドライバーは怒ったのだ。



警官は冷たく「10mは少ないですね、15mは取らないと」

と言うと、伊原は感情的になり

「そんな事してる奴いないだろ!」と言う。

爆発性転換障害、いわゆるヒステリーである(笑)。



警官は冷静に「そうすると、あなたは普段から安全車間距離を取っていないのですか?」



伊原は、自分から嘘であると
露見させてしまった(笑)。



「伊原さんの被害は被害として受け取ります」警官は冷静に言ったが



自分から挑発して怪我を負っても

自業自得であるので(笑)
警察の捜査もそれなり、だ。



被害は別にして、挑発も
暴行罪、強要罪として扱われるのが
普通である(笑)。


更に、道交法違反、車間距離不保持、
安全運転義務違反。


伊原の責任も問われる。




そういう伊原にしてしまったのは

教育が正義を教えなかったからである。
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