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空中戦
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老人は、白い整備士服で
「じゃあな。幸運を祈る。雷など出ないように」
悪天候が一番怖い、軽飛行機である。
ありがとう、と
ジョナサンは操縦席に乗り、エンジンを掛ける。
点火時期を少し戻し、デコンプレッション。
セルフスタートを回す。
簡単にエンジンが掛かるのは
オイルが温まっているからだ。
クランクシャフトは組み立てなので、オイルが回らずとも軽く回る。
カムシャフトも、針ローラーベアリングだ。
そのため燃費も良いし、パワーもある。
4本の排気パイプは、美しいカーブを描いて接続されている。
1ー4、2ー3。
いわゆる、ツインスロートだ。
圧縮比は8だが、膨張比が14。
いわゆる、ミラーサイクルエンジンである。
ターボチャージで、ディーゼルにしても使える汎用エンジン。
今はガソリンが安いので、ナチュラルアスピ。
軽くエンジンが掛かる。
やや大きめのプロペラは、パワーのあるエンジンだから。
「じゃね」ジョナサンは片手を上げる。
F15のパイロットも片手を挙げて。
郵便飛行機は、滑走路を少し走ったかと思うと
ふわり、とカタパルトのように
飛び上がって
旋回しながら上昇。
ジョナサンは足を交互に踏み、翼を振った。
見上げる老人は「いいな、若い者は」と、にこにこ。
F15のパイロットは「乗んなよ、趣味でいいから」と、言うと
老整備士は
「いや、遊びで乗ってもなぁ」
元々、戦場パイロットで
今、ここにいると言う事は
相当のキャリアの持ち主なのだろう。
旧軍から自衛隊に来れる人は珍しい。
一度、出た人が戻る事が稀なのは
かつての仲間が使い難いからで(笑)
それでも呼ばれるのは
余程のキャリアを持っているから、なのだろう。
加藤もまた、その口で
一旦研究所を退官したあと、別の研究所を幾つも渡って
研究を続けた。
その成果が学会経由で認められ、再び
この研究所に戻れたのは
よその研究所に成果を出すなら、うちに。
そういう理事の意向である(笑)。
同じ理由でも、研究所に再び戻る人は少ないが
加藤の場合、科学者としての研究能力が
天才的だ、と言う事を
世界が証明してしまったので(笑)
日本の国としても、日本一の研究所に
籍を置かないと
体裁が悪い(笑)と言う
対外の理由もあったのだろう。
それでも、正規研究者に加藤がなりたがらない理由は
例えば原子力のように
本当の事を言うと
国が困ってしまったりする事もあったりするので(笑)
そういう時に困らないように、と言う配慮もあった。
「つまり、環境汚染による
内分泌撹乱が、1990年代以降の
精神疾患の増加、暴力事件の頻発の
要因ではないか、と」加藤が述べる。
これは、非公式なミーティングで
研究者の趣味のような集まりだ。
加藤が言う、環境汚染は
それまでもタブーにされていた
公害との関連、と思われたので
出席者からも戸惑いの声が見られる。
しかし。今は産業自体が衰退している時期であるので
損得に駆られる圧力は少ないのだろうと
加藤は思い、発表した。
「人間は胎生で雌から雄になります。
その環境中、男になる脳に
ストレスが掛かると、上手く機能しませんし
反対に、女になる脳にストレスが加わると、男のような行動を見る事があります」加藤はスライドで示した。
化学による環境汚染、それと人体が放出する環境汚染。
「また、汚染環境で育つと
体内の恒常性から、本来のホルモンバランスが崩れます。
分泌器官が機能停止する、サボる訳ですね」(笑)
場内から(笑)がこぼれる。
女の子が、半分雄化して生まれ
汚染環境から女性型の偽ホルモンを感受すると
本当の女性として機能しなくなる。
偽の環境ホルモンは、本当のホルモンとしては機能しない作用がある。
良く知られた説だが、産業への配慮で
今までは黙殺されてきたのだが
今、経済が変わったので
憚る事なく対処しよう。
そういう試みである。
「じゃあな。幸運を祈る。雷など出ないように」
悪天候が一番怖い、軽飛行機である。
ありがとう、と
ジョナサンは操縦席に乗り、エンジンを掛ける。
点火時期を少し戻し、デコンプレッション。
セルフスタートを回す。
簡単にエンジンが掛かるのは
オイルが温まっているからだ。
クランクシャフトは組み立てなので、オイルが回らずとも軽く回る。
カムシャフトも、針ローラーベアリングだ。
そのため燃費も良いし、パワーもある。
4本の排気パイプは、美しいカーブを描いて接続されている。
1ー4、2ー3。
いわゆる、ツインスロートだ。
圧縮比は8だが、膨張比が14。
いわゆる、ミラーサイクルエンジンである。
ターボチャージで、ディーゼルにしても使える汎用エンジン。
今はガソリンが安いので、ナチュラルアスピ。
軽くエンジンが掛かる。
やや大きめのプロペラは、パワーのあるエンジンだから。
「じゃね」ジョナサンは片手を上げる。
F15のパイロットも片手を挙げて。
郵便飛行機は、滑走路を少し走ったかと思うと
ふわり、とカタパルトのように
飛び上がって
旋回しながら上昇。
ジョナサンは足を交互に踏み、翼を振った。
見上げる老人は「いいな、若い者は」と、にこにこ。
F15のパイロットは「乗んなよ、趣味でいいから」と、言うと
老整備士は
「いや、遊びで乗ってもなぁ」
元々、戦場パイロットで
今、ここにいると言う事は
相当のキャリアの持ち主なのだろう。
旧軍から自衛隊に来れる人は珍しい。
一度、出た人が戻る事が稀なのは
かつての仲間が使い難いからで(笑)
それでも呼ばれるのは
余程のキャリアを持っているから、なのだろう。
加藤もまた、その口で
一旦研究所を退官したあと、別の研究所を幾つも渡って
研究を続けた。
その成果が学会経由で認められ、再び
この研究所に戻れたのは
よその研究所に成果を出すなら、うちに。
そういう理事の意向である(笑)。
同じ理由でも、研究所に再び戻る人は少ないが
加藤の場合、科学者としての研究能力が
天才的だ、と言う事を
世界が証明してしまったので(笑)
日本の国としても、日本一の研究所に
籍を置かないと
体裁が悪い(笑)と言う
対外の理由もあったのだろう。
それでも、正規研究者に加藤がなりたがらない理由は
例えば原子力のように
本当の事を言うと
国が困ってしまったりする事もあったりするので(笑)
そういう時に困らないように、と言う配慮もあった。
「つまり、環境汚染による
内分泌撹乱が、1990年代以降の
精神疾患の増加、暴力事件の頻発の
要因ではないか、と」加藤が述べる。
これは、非公式なミーティングで
研究者の趣味のような集まりだ。
加藤が言う、環境汚染は
それまでもタブーにされていた
公害との関連、と思われたので
出席者からも戸惑いの声が見られる。
しかし。今は産業自体が衰退している時期であるので
損得に駆られる圧力は少ないのだろうと
加藤は思い、発表した。
「人間は胎生で雌から雄になります。
その環境中、男になる脳に
ストレスが掛かると、上手く機能しませんし
反対に、女になる脳にストレスが加わると、男のような行動を見る事があります」加藤はスライドで示した。
化学による環境汚染、それと人体が放出する環境汚染。
「また、汚染環境で育つと
体内の恒常性から、本来のホルモンバランスが崩れます。
分泌器官が機能停止する、サボる訳ですね」(笑)
場内から(笑)がこぼれる。
女の子が、半分雄化して生まれ
汚染環境から女性型の偽ホルモンを感受すると
本当の女性として機能しなくなる。
偽の環境ホルモンは、本当のホルモンとしては機能しない作用がある。
良く知られた説だが、産業への配慮で
今までは黙殺されてきたのだが
今、経済が変わったので
憚る事なく対処しよう。
そういう試みである。
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