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感情的

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「会ってあげた方がいいと思います」ななは
控え目に加藤に告げる。


「まあ、忘れてなければね」と、加藤は
ななに気遣ってそう言った。


本当のところは、もう沢山、と言う感じで
好きにさせてほしい、そういう気持ちだった。

加藤の父も母も、スポーツ選手で
No.1だったような人だったから

スポーツには一家言あった。


それなので、加藤はスポーツを避けて
通っていた。

干渉を避けたい、と言う感じで。


それに、父も母も学問的に優秀だったので

別に、押し付けはしなくても


黙って見て居られるだけでも、何か
言われそうで、子供の頃の加藤は
それが嫌で


ヘッドフォンで音楽を聞いたり、遠くへ旅行したり


逃避的に過ごしていた。




若者は誰しも、そんなところがある。



なので加藤は、希望を述べない子供だったし
学校を卒業する頃になっても、進路を決めない子供だった。


それは、父母や兄に指図されるのが
嫌だったし


感情的に批判されると、殺意を覚えたりして
本当に自分が怖かったからだった。




父や母の経験からの言葉は、あくまで

父や母の行動体系での推測で


実際に行動する加藤の行動は、加藤にしか
解らない。



いわば、加藤というコンピュータを


父や母のコンピュータ上にエミュレートする
ような物だから



父や母の能力を超えた答えは、絶対に出ない。



それが、父や母の驕りで


子供の能力が上だとは思わないものだから
それで、可能性を潰してしまう事も多い。


強いスポーツ選手が、名コーチには
ならない例と同じ、である。



それなので、加藤は
父や母、兄とは関わらず


ひとりで好きな事をするタイプ、だった。




それでも、ゆりのような
女の子に請われれば、断る訳にもいかない。

それに応えれば、どちらかが死ぬまでは
関わりが続くだろうから



加藤にしてみれば、束縛のようなもの。



そう感じているのを、ゆりは微妙に
理解したのだろう。


自由に生きて、と言ったのは
加藤の幸せを願っての事だった。




だからこそ、加藤は
それに答えないとならない、のだけれど


それを、ななに言われると


母や父に幼い頃から指摘され続けて
うんざりしている気持ちに、
またか、と言う感じで

暗鬱なベールを被すような、ものだった。





実際、加藤が
何をされても平然としているのは
幼い頃から、そういう父母や兄に

訓練
(笑)されているから、だったりもする。




加藤の本心に気づいたゆりと

そうではない、ななの違いは明らかだった。


ゆり自身も、自由が好きだったからだ。

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