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環境

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「あ、シャンプー忘れた」と、ななは
困った。


「一晩くらいいいじゃない」と、Naomi。


歳は下だけど、なんとなく大人っぽい彼女は
郵便局のバイトで鍛えている事もある。


手紙を届けるなんて、単純だけど
受け取る人々にとっては大切だ。


なんたって、一品生産の文章だもの。



そういう世界を好むNaomiは、実は
外観はファッションモデルのような人だけど

派手な世界は嫌いで、おじいちゃんの片見の
オートバイを大切にしている子だった。



後戻りのできない郵便配達の仕事。

道順の通りに配達しないと、時間通りに
終わらない。

そういう厳密な時間の過ごしかたに慣れていると
些細な事は、大切な事が終わってから
すればいい、とか

するべき事と、そうでない事を
明快に分けられる、理論的な行動ができる。





「やだー、洗いたい」と、ななは
日本にいる時のつもりで(笑)


いつでも、わがまま言っても
なんとかなる、って
甘えた暮らしに慣れてる(笑)

けど、ここは日本じゃない。



「石鹸で洗えば?」と、めぐ。


めぐも、あいにくシャンプー、なんて
持って来なかった(笑)。


そもそも、この国は乾燥気候だから
亜熱帯の日本と違って
そんなに汗もかかない。


身体自体が、環境に適合してしまっているのだった。





まだ、来たばかりのななは
適合できてもいない(笑)。



「石鹸で洗ったら、髪が荒れちゃうよ」と
ななは、わがまま(笑)。





「そんな事ないよ、薄めればいいの」と、リサ。


なんで、そんな些細な事で
不満を述べるんだか、訳がわからないけど



物がいつもふんだんにあるんだろうな、日本は(笑)



と、そんなふうに思ったり。





なな自身も、自分が環境に
騙されてしまっている事には気づかない。



シャンプー、なんてものが無くても
人間は生きて行けるのに


それがいつもある事を有り難い、と
思えなくなってしまっていて


ないと不満に思うようになってしまっているのは


そういうものを売る人達の策に
嵌まっている、と言う事にも

気づかない。




美、ですらこんな感じで

衣食住、生活すべてを



物売りの宣伝に載せられてしまっている。



でも、それは

ななのせいではないから


神様が、修道院に行く事を
奨めた意味は、それに気づく事だった。









「日本は、面白い事を始めたな」出雲神は

アメリカンの神様に言う。


「ま、マテリアリズムはこのところの流行だったけどね。それで幸せになれたかと言うとなぁ(笑)」




「物がなくなりゃわかるだろう」と、出雲神は
手厳しい。



万物に神が宿る、でも
人工物には宿らないから

この国は、神様の見守るところが減ってきて

そこに、悪意が蔓延るとでも
言いたいのだろうか。



実際、自然物はみな神様が宿っていて
人間の知るところである、フラクタルや
1/fゆらき特性、などで
美しい数学的均整が取れている。


そうしたものが側にあると、人間の
心は美しく保てるので


悪意が宿る隙間は無くなる。




人工物にはそれがないので

神の癒しがないのだ。



それで、人工環境だと
悪意が宿りやすい。



つまり、科学的に言うと
八百萬の神様、と言うのは
1/f特性のような物性で
人間の心を、快く保ち

悪意が起こらないようにする、と
言う事なのであろう。


ななは、人工の環境に適応してしまっているので

シャンプーで髪を洗うと言う不自然、つまり
神様のいない環境に慣れてしまったから


不自然な快楽が得られない不満、則ち
過剰な快への禁断症状的な不快が
悪意、我が儘を起こしてしまう事になる。





「あれは、避けようがないな」と、出雲神。

「だね。でも、エネルギー革命で変わる」と、アメリカンの神様。




少し、神様たちは時間を早めて観測した。


反物質融合によるエネルギー革命で、人々は
労働をしなくても済むようになったから
物の流通が減った。

日本やアメリカのように、特に

物が過剰に流通していた国では、そのせいで
物の価値が上がった。


ただ、国際取引は貨幣でなく
エネルギー取引になったので

輸出入の物品は、高値安定になった。


それで、物を長くメンテナンスして使う、と言う
20世紀の北欧のような文明が
極東でも興った。


工業製品も、丈夫なものが大切にされる。



それは、物に愛着を生むから
果たして、人工物にも思い入れを持つ事で
そこに、愛を見出だす事になる。

オキシとしん回路が働く訳だ。





ゆったりとした時間の流れで、快く
生活する。


人間本来の生活を取り戻す訳だ。


社会が刺々しさを失うと、少女たちも
防御の為に攻撃的に振る舞う必然もなくなる。



ノルアドレナリン回路が閉じ、元々
生物が持っていた愛らしさを取り戻すと


男たちも、守るべき社会に立ち返る。


愛すべきものの為に、共通の社会を
守る、そういう本来の

男らしい生き方に回帰できる。


地球全体が、利害などなく

愛すべきものを守れるように、ようやくなった。



主義も信仰も、実は
狭い地球上で枠を作って排他するだけのもので

そこには、利害が存在していた。



貨幣の存在である。


その貨幣そのものの無意味さは、言うまでもない。



人間が勝手に作った価値観である。



エネルギーのような、物理的絶対価値には
対抗できようもなかった。





攻撃性が原義であった、人間の発情も
抑制される。


元々、危機の前に

死んだとしても種子を残そうとする
生き物の本能である。


安定して生きてゆければ、発情も抑制される。


果実をつける樹木は、栄養豊富だと
果実を付けず


剪定をしたりして傷つけると、果実を
良く残すのは
良く知られる農業技術であるが


人間も、それと同じである。




戦時下で出産が増えたりした

第一次大戦時のドイツの統計などを見ても
有意な知見である。




猿の群れのボスが交代すると
発情が興るのと同じメカニズムである。


危険が遠ざかれば、人口も抑制されるのだ。



1980年代、エチオピアの
セミエン高地に住んでいた
ハヌマンラングール。
彼らは、人間の親類であるが


オス1、メス複数の

ハーレムのような群れで


若いオスが、ハーレムを乗っ取ると
メスが発情するという、発情期がない
人間に近い生態である事を(笑)


日本の、京都大学霊長研が報告した。



人間がもし、遺伝的な継承をしていれば
そんな性質があるのだろう。



この群れは、ボスが変わると
ハーレムのメスは、前に生まれた子供の育児放棄をするのである。



人間と同じだ(笑)。



保身、あるいは新しい興味
のために
育児は邪魔、と言う事だろうが

それは道理だ。


自分以外を世話するのは面倒に決まっている(笑)。


しかし、ハーレムでなく
群れにオスが複数いると、育児放棄は
起こらない。


人間で言えば、おじいちゃん、おじさんが
いる家族では
育児放棄や、いじめが起こらないのと同じだ。

(ななは、核家族で
めぐたちは、大家族で育っている)


つまり、人間界の
家族、等という生態も
本来は、おそらく租税や
社会の必然から生まれたので


それが疎ましいものになっていると
言う訳だ。


1/fゆらぎ理論のように、幾何的明快さのある
自然の法則(重いものは大きく振動するので、周波数が低いと振動は大きい)に従った

生態になると、人間に快い社会になる。




それを、加藤は
エネルギーの自由化で行った訳、だ。







でも、北欧のめぐの国は
先進国だから、そんなものがなくても
共和的に、社会が安定している。



利益のために、おじいちゃん、おばあちゃんと
離れて会社の近くに住む、なんて事も不要だ。
そういう時、若い未熟な夫婦の子供が
親の未熟による心傷を受ける、なんて事も

起こらない。




おじいちゃん、おばあちゃんは
親より優等だから

親がイジメたりできないのである(笑)。





そういう理由で、めぐたちは
のびのびと育つ事ができる。
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