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シスター・クラーレ

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「大丈夫かしら?」と、ななに声を
かけたのは
陽気で大柄な、アメリカンの黒人。


黒い修道服を纏っていると、トトロのように
頼れそう。



院長室から出てきて、少し戸惑っている、ななを
慰めるかのような優しさのそのひとは
シスター・クラーレ。



ななは、異国でひとりきり、なんて気持ちだったけど

クラーレのおかげで、元気になれそうだった。



「シスターななの国とこっちは違うから。
あたしの国とも違うから。風習の違いは仕方ないね。

でも、音楽に国境はない、わ」と

クラーレは、歌うのが楽しそう、と言う表情で


広い廊下に響くようなR&Bを歌う。


その声は、ななの気持ちもリラックスさせる。
遠い記憶の中、どこかで聞いたような
メロディーだった。



音楽っていいな、と

ななは思う。


日本では、こんなふうに音楽を聴く事もなかった。




「院長の言うように、飾りなんてない方がいいわ、それ、日本で流行ってるの?」と、クラーレ。


うん、と、ななは頷き「みんなしてるから、なんとなく。そういえば、失業保険貰ってネイルアートに行く人もいたり」と、ななは現実を示した。



廊下をゆっくり歩きながら、クラーレは


首を傾げながら「アメリカじゃ考えられないわね。誰が何しようと
勝手だし。ヨーロッパは、階級社会だったから
元々、そういう華美な装飾って
貧乏人の目立ちたがりのするもの、だったわ。アハハ」と、陽気に笑う。



ななも笑顔になる。



それは日本でも同じで、高級なひとたちは
至って質素な振る舞いをしているものであった。


元々、心の中に
階級の意識などがないから、であって。



劣等感があるから、優位と感じる者を憎むのである。


優劣など本当はないのに、あると思い込んでいる人々、即ち
日本では異邦人の人々である。



まあ、加藤のエネルギー革命で

祖国に戻れば

永遠のエネルギー源を得られるから

次第に帰国する事になるだろうけれど。





文化の混沌は異質だ。






「さあ、ここがあなたのお部屋ね」と

修道院のゲストルームなのだろうか、くすんだ重々しい扉を開くと



みんなが待っている。
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