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 聞こえる?

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「ニットを編んでくれた人が居て、
送ってくれる人が居て
売ってくれる人が居るから着られて。
なので、買う人のために試着があるから
買わないなら着ない方が、その人たちの
気持ちを考えると、いいんじゃない?って
お母さんが言ってたっけ」と、れーみぃ。


ななは、突然嫌な事を思い出したように


「説教は沢山よ!お金だすからいいんだ。」と

口調も変わってしまって。


おそらく、相当嫌な事を
誰か、母親か何かに言われて居たのだろう。



自宅に戻らず、修道院に入りたいと言う
理由が、なんとなく伺われる。




日本も、ここ30年ほど
そういう、渡来の人の考え方に侵されていたから

ななのような女の子は、無意識に
その中に浸りきってしまっている。



それを、加藤は嫌ったのだろう。





女の子を守りたい。

それは男の理想の愛であるが


その女の子が、自分さえよければいい、と
他人の迷惑を考えない人なら、加藤たち

真の日本人、いや、真の人類は忌み嫌うだろう。

なぜかと言うと、人類そのものを
育むような優しさがあるのが女の子の本質である。



たとえ、ボスが変わったら
我が子を捨てて発情する類人猿が
祖先であったとしても



後に生まれた子供たちを、共同して育てるのも
また、類人猿の隣人の姿であり



金を払えば、迷惑を掛けてもいい。


そんな女の子だったら、愛したいと
加藤は思わないだろう。




性的な対象なら別だが。






「ごめんね、お説教じゃないの」と、れーみぃ。


優しい子だから、ななが怒った事に戸惑って。




「あ、いえ。ごめんなさい。わたしこそ」と、ななも正気に戻る。


嫌な気持ちを思い出したと。

でも、ななも思う。



なな自身が、知らず知らずに
怖い考え方に巻き込まれて居たこと。



幼い頃は、摘んできた野の花が
枯れたくらいで悲しがり

摘む事が、良くなかったと
泣いてしまうような子供だったのに。




ななは、まだ
野の花を摘んだ事があるので

生命を奪ってしまう自分の怖さに
気づいたりする。


そうして、弱いものへの
思いやりを思い出していくのだけれど



都市育ちで、野原に出た事もなく


人工的なものに囲まれていると
自分の怖さを自覚する事もない。





なので、なな、より若い
子には、怖さの自覚が少ない。



めぐや、れーみぃは
日本とは違った環境で、貧しくも心豊かに
育ったから


ものを作る人の大変さも実感できる。
めぐなどは、おばあちゃんが畑を持っているから


容易に植物が枯れてしまう事、長い時間を
掛けて育てる事の重みが実感して解る。




そういう体験のない、都市の子供は
不幸にして、生き物としての自分を
意識できなかったりする。






ジェームス・ワットが蒸気機関を発明して
動力が近代化する以前は
都市、と言っても自然が隣接していた。



それでも、人力や馬力で
運搬する労働の尊さは
機械の力より高コストだったから
その努力は評価されなくなった。

そういう人々は、報酬が得にくくなったりしたのだ。



後に、内燃機関が発達し
自然を人間が侵略するようになった。


機械が、人間の行動の価値を変えたので


労働の価値は多様化する。


それが、貨幣価値をも多様化したから


同じ働きをしても、報酬が変わるので



貨幣価値も、異なる。

人馬でいくら頑張っても、トラックよりも
多くの荷物を運べないから

報酬は知れている。



苦労は、報われない事もある。





加藤たちの研究で、エネルギーが簡単に
誰にでも手に入ると


そうした不公平はなくなる。



誰にでも、容易くエネルギーが得られ
価値は同じだ。




等しく人類は平等な貨幣を得た事になる。


なので、ななのように

経済の動向に支配されて、人としての
本質を、知らないうちに変えられる事もない。

世界で、どこで取り出しても

エネルギー価値は同じであるし無尽蔵。


慌てる事もないし、永久。



そうなった時、人の心はどう変化するのだろう。



「じゃ、ニットワンピース買ってこうかな?買うならいいんでしょ?着ても」と、ななは言う。


「別にいいけど、夕方にSt.Blancheに集合だし。それ買っても着れないよ、修道服だし。
あたしたちは、日用品を足しに来たの。」と、めぐは
なーんとなく「買うならいいんでしょ」と言う言い方が好きになれない。
別に咎めている訳でもないのに、誰に言い訳してるんだろう?と(笑)。


それは、なな自身が気づかないけれど
記憶のどこかにある、誰かの視線だったりする。

優しくない、誰かの。

そういうものに、無意識に言い訳してるのだ。




「え!ななも修道服着るの?」と、ななは驚く。



「そうみたいよ、あたしたちも着るんだもん。体験入院なのに。」と、めぐは笑って。


「でもぉ、ステキなんじゃない?グレーの修道服。しょっちゅう着れないし。」と、れーみぃ。



「それと、説教じゃないけど、スカート短いと修道院じゃ叱られそう」と、めぐ。


説教じゃないけど、と前置きしないといけないので、めぐは内心「メンドクサイなぁ」と
思ったりする。


もっと素直に聞けないのかなぁ(笑)
と、18歳のめぐはまだ子供であるし、この国は
子供は子供らしくしてても、大人が護ってくれる国。


ななは、混沌の日本から来たので
誰にも護ってもらえない緊張から、装甲メークをしたり(笑)。


そんな中、護ってもらえそうな加藤に気持を寄せた.....つまり、ハヌマンラングール的に
保身の気持もいくらかあったりしたのだろう。



「うんうん。つけまつげとメークも叱られます。落としていったほうがいいよ」と、れーみぃ。



「やだ、恥ずかしいもん」と、ななは笑顔で。


「神様にお仕かえするのに、顔を偽ってはいけません、ってか」と、れーみぃは
修道院の院長先生の口調を真似て。

あははは、とめぐは笑う。
「あたしたちだって素顔だよ」と、めぐ。


「それは、18歳だもん。あたしは26だから、やっぱ、お肌も劣ってるし」と、なな(笑)



「どっちみち、修道院で落とされるんだから、叱られないうちに落としといたほうがいいわ」と
れーみぃは、さすがにお巡りさん志望(笑)規範に忠実だ。




「そっかあ、ありがとう。れいみさん、めぐさん」と、なな。


「れーみぃ、めぐでいいわ」と、れーみぃ。


「なんであんたがめぐでいい、っていうのよ」と、めぐは笑う。



「あ、そっかぁ(笑)、まあいいよ」と、れーみぃ。


「じゃ、あたしもなな、でいい」と、なな。



「うん、そーしよ、なな、あ、”シスター・なな”、ね」と、めぐ。

「はい!”シスター・めぐ ”?」と、なな。


ななとしては、上下が決めにくいのは不思議な感覚だけど
それも、渡来人の文化で
日本文化ではない。


日本の集団は、上下ではなく
互いに思いやる集団であり


上下とか規律、とか差別するのは大陸の文化である。

なぜかと言うと、日本は島なので

差別すると行き場がなくなってしまうが
大陸の文化で差別があるのは、国境がはっきりしていないからである。

排他、と言ってもいい。


それなので、日本で差別、と言うと
言い出しっぺは大陸系、渡来人である事に違いない(笑)。





しばらくすれば、神様の薬(笑)が効いて
渡来人たちも穏やかな心を取り戻すはずなのだが。

元々、渡来人の中で差別に遭って
追い出されて日本にやってきた人達
だからである。

つまり、祖国に戻れば
エネルギー取引に参加できるなら
戻るだろう。



ななは、ふつうの日本人だけれども
知らないうちに差別に遭遇するのは
つまり、日本を渡来人が侵食しようと
企んでいる訳で、それが
日本を住みにくくしていると言う事になる。



それなので、遠い北欧にやってきて
一から出直したいと言うななの気持ちは
理解できる。



でも、やはりなかなか癖は抜けない(笑)。



近くのスーパーマーケットに、めぐとれーみぃ、ななは立ち寄る。



「着替えとか」と、めぐは
地味な白い、木綿のアンダーを見立てて。




「ずいぶん地味ー」と、ななは日本でいつも
しているように言う。


それが友愛の表現だと、日本では
そう感じていた。



でも、めぐは微笑み「地味の方がいいのよ、シスターなんだもの」



と言うと、ななは「そこまで成り切らなくても」と、日本ふうに本音と建前を表現する。


でも、めぐは北欧の子供だから
「神様の花嫁になる、って修業だもの」と
笑う。



一日だけね、とWink(笑)。




なるほど、と
ななも納得。


確かに、修道服の下が派手な色物では
不謹慎だ。




でも、そんなふうなななの感覚も
実は、古来の日本人のものではない。


古来は、八尾萬の神様に見守られて、と
言われるように



太陽や月、闇の森にすら神様が居て

裏表なく、と言うのが古来の日本人的
感覚であり



武士の圧政が始まった頃から
農民が本音と建前、つまり

嘘をつきはじめたと言われていて



それは、取りも直さず
渡来人の文化であったりもする。



現在でも、中国やロシア、韓国など
不条理な圧政のある国々の
民衆はそうした、嘘の文化が好きだ。



見てなければ、規則は破っていいとか


そういう、差別の温床になるような発想。



それは、八尾萬の国には有り得ない感覚であり


ななも、そうした渡来人の感覚に
染まってしまっている事を



北欧に来て、初めて実感したりして(笑)。



それは、ななの責任ではないが。


環境が汚染されているのである。
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