5 / 286
5・少女とプランク
しおりを挟むやぁ、皆んな!元気に筋トレしてる?
俺は手足をロープで縛られ絶賛拘束中!柵の中に入れられてる。柵の杭は貫禄有る口髭のおっさんが魔法でボコボコ地面から出してた、魔法超便利!
勿論、俺だってただ拘束されてる訳じゃない。うつ伏せになって前腕と肘、つま先を地面に付き身体を真っ直ぐに保っている。そうプランクしながら状況の把握に努めてるんだ。プランクは体幹を鍛えるにはもってこいだからな、一石二鳥だろう?
現在、異世界人は先程仕留めた熊の解体をしている。あんなデッカイ熊を小柄な女の子がサクサクバラしてるのを見るのはなんだかとてもシュールだ。しかも随分手慣れてるな、この世界では若い女の子も日常的に狩りをするのだろうか。
腹から後ろ足に向かって毛皮を剥いでいく、頭を落としバラした肉片を残念ハンサムとさっきぶつかりそうになった小柄な男の子が荷車へ運び樽へと詰め込んでいた。
暫く見ていて気付いた事がある。『使える魔法の属性は複数ある』のではないかと言う事。
よくある異世界物のアニメでは大抵は専門属性があり複数属性持ちは貴重だとの設定が多い。
残念ハンサムは熊の足を凍らせていた、女の子二人も氷柱を飛ばしていたので氷属性か水属性だろう。
だが、残念ハンサムはあのデカい熊を一人でロープを使い木に吊るしていた。細身の高身長でジャンガジャンガ言いそうな体格なのに、だ。
400kgはありそうな熊だ、何らかの魔法を使わないと無理だろう。重力系?身体強化?間違いないのはロープを操る魔法ではないって事だな。
小柄な男の子の属性は何だろう?さっきの戦闘で活躍してなかったからコックとか雑用で魔法を使えないのか、もしくは回復役?
それにしても…プランクでプルプルしている俺をしゃがみ込んで覗いてくるこの無表情な少女は何なのだろう?恐らくは監視なんだろうけど・・・・
一応俺は不審者扱いなんだから警戒しろよ。この子、軽鎧も脱いでるし、結構際どい格好なんだよな、おじさんどこまで見て良いかわからないよ。
「…κουσαταμπερου?」くさたべる
あっ、草とか要らないです。
…いや待てよ、もしかしたら薬草的なやつか?善意でやってくれてるなら食べた方が印象も良くなるか?
モグモグ…ブッフォッーーーッッツ!!
「苦ッ!何これ絶対口に入れちゃダメなヤツじゃん!?要らないッ!ちょっ押し付けんなッ!」
「…σουκικιραι…νταμε」好き嫌いダメ
何だよお前…めっちゃいい笑顔できんじゃん…
◇
~クリミア視点~
彼…多分人だから彼でいいよね?カイルさんは重さを軽減させる魔法の反重力アンティグラビティを使えるんだけど、彼は警戒しているのか魔法抵抗レジストしてしまうので仕方なく皆んなで引っ張り上げた。
ほんっと重くて腕もげるかと思ったよ。あの体、私の三倍はあるんじゃないかな?一体何を食べたらあんな体になるの??
(ちょっと見た目気持ち悪いけど…)
引き揚げた後は見た目と違って良い子にしてるからビエル団長が作った簡易的な柵に入れ、私達は赤熊の解体をする事にした。
彼は高位の魔術師?の可能性もあるので、念の為ビエル団長は彼を監視しているみたい。でも、私にはとても高位の魔術師には見えないなぁ、どっちかと言えば大きな動物よね。
私の両親は猟師で小さい頃から解体を手伝って見てきたから分かるけど、確かにカイルさんが言ってたように毛皮を剥いだクマみたいな筋肉だ。
特にこの胸辺りの筋肉の付き具合は彼と同じじゃないかな?そんな事を考えながら赤熊をサクサクと捌いていく。
「カイルさーん、ちゃんと肉は凍結魔法で冷やしてくださいねー。今日の暑さじゃ腐っちゃうからー」
「任せろ、絶妙な凍り加減にしてやるよ!肉は孤児院の餓鬼どもにも持っていくんだろ?」
「そうですね!きっと喜びますっ!」
サーシゥ王国では国営の孤児院がある。主に兵役などで亡くなった人達の子供を預かって育ててる。私も12歳で両親を亡くしてからはこの孤児院にお世話になっていた。
私の父は風魔法が得意で300m先の鹿を二頭同時に仕留めたのは有名な話だ。その腕を買われて魔法学園での臨時講師を務めた程なのだ!そのおかげで私も国営の孤児院に入れたのは感謝してる。教会が運営する孤児院もあるけど…あまり待遇は良くないみたい。
最近は食料の値段が上がって食事が満足に出せない事もあると孤児院のシェンさんがボヤいていた。だから沢山獲物が取れた時は孤児院に持って行くんだ!
(きっとウルトも来るよね?)
ウルトと私は同じ孤児院出身、同室だった私はウルトの姉代わり。8歳の時に目の前で強盗に両親を殺されたウルトは他人と距離を取りたがり、無表情で滅多に感情を表に出す事が無い。だけど本当はすっごく素直で可愛い!って事はずっと一緒に育ってきた私は知っている。
(最近はサボるし注意したら文句を言うし…可愛いくない時もあるけど…あれ?そういえばウルトどこに行ったかな?)
周りに目を向けるとウルトが彼と一緒にいるとこが見えた。
「もうっ!ウルト~サボるなぁ!!・・・・・あえっ?…ウルト…笑ってる…」
0
お気に入りに追加
39
あなたにおすすめの小説

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~
シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。
木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。
しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。
そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。
【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

やさしい異世界転移
みなと
ファンタジー
妹の誕生日ケーキを買いに行く最中 謎の声に導かれて異世界へと転移してしまった主人公
神洞 優斗。
彼が転移した世界は魔法が発達しているファンタジーの世界だった!
元の世界に帰るまでの間優斗は学園に通い平穏に過ごす事にしたのだが……?
この時の優斗は気付いていなかったのだ。
己の……いや"ユウト"としての逃れられない定めがすぐ近くまで来ている事に。
この物語は 優斗がこの世界で仲間と出会い、共に様々な困難に立ち向かい希望 絶望 別れ 後悔しながらも進み続けて、英雄になって誰かに希望を託すストーリーである。

最弱の職業【弱体術師】となった俺は弱いと言う理由でクラスメイトに裏切られ大多数から笑われてしまったのでこの力を使いクラスメイトを見返します!
ルシェ(Twitter名はカイトGT)
ファンタジー
俺は高坂和希。
普通の高校生だ。
ある日ひょんなことから異世界に繋がるゲートが出来て俺はその中に巻き込まれてしまった。
そこで覚醒し得た職業がなんと【弱体術師】とかいう雑魚職だった。
それを見ていた当たり職業を引いた連中にボコボコにされた俺はダンジョンに置いていかれてしまう。
クラスメイト達も全員その当たり職業を引いた連中について行ってしまったので俺は1人で出口を探索するしかなくなった。
しかもその最中にゴブリンに襲われてしまい足を滑らせて地下の奥深くへと落ちてしまうのだった。

備蓄スキルで異世界転移もナンノソノ
ちかず
ファンタジー
久しぶりの早帰りの金曜日の夜(但し、矢作基準)ラッキーの連続に浮かれた矢作の行った先は。
見た事のない空き地に1人。異世界だと気づかない矢作のした事は?
異世界アニメも見た事のない矢作が、自分のスキルに気づく日はいつ来るのだろうか。スキル【備蓄】で異世界に騒動を起こすもちょっぴりズレた矢作はそれに気づかずマイペースに頑張るお話。
鈍感な主人公が降り注ぐ困難もナンノソノとクリアしながら仲間を増やして居場所を作るまで。

夢幻の錬金術師 ~【異空間収納】【錬金術】【鑑定】【スキル剥奪&付与】を兼ね備えたチートスキル【錬金工房】で最強の錬金術師として成り上がる~
青山 有
ファンタジー
女神の助手として異世界に召喚された厨二病少年・神薙拓光。
彼が手にしたユニークスキルは【錬金工房】。
ただでさえ、魔法があり魔物がはびこる危険な世界。そこを生産職の助手と巡るのかと、女神も頭を抱えたのだが……。
彼の持つ【錬金工房】は、レアスキルである【異空間収納】【錬金術】【鑑定】の上位互換機能を合わせ持ってるだけでなく、スキルの【剥奪】【付与】まで行えるという、女神の想像を遥かに超えたチートスキルだった。
これは一人の少年が異世界で伝説の錬金術師として成り上がっていく物語。
※カクヨムにも投稿しています

半分異世界
月野槐樹
ファンタジー
関東圏で学生が行方不明になる事件が次々にしていた。それは異世界召還によるものだった。
ネットでも「神隠しか」「異世界召還か」と噂が飛び交うのを見て、異世界に思いを馳せる少年、圭。
いつか異世界に行った時の為にとせっせと準備をして「異世界ガイドノート」なるものまで作成していた圭。従兄弟の瑛太はそんな圭の様子をちょっと心配しながらも充実した学生生活を送っていた。
そんなある日、ついに異世界の扉が彼らの前に開かれた。
「異世界ガイドノート」と一緒に旅する異世界

異世界サバイバルゲーム 〜転移先はエアガンが最強魔道具でした〜
九尾の猫
ファンタジー
サバイバルゲームとアウトドアが趣味の主人公が、異世界でサバゲを楽しみます!
って感じで始めたのですが、どうやら王道異世界ファンタジーになりそうです。
ある春の夜、季節外れの霧に包まれた和也は、自分の持ち家と一緒に異世界に転移した。
転移初日からゴブリンの群れが襲来する。
和也はどうやって生き残るのだろうか。

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います
霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。
得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。
しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。
傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。
基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。
が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる