筋トレ民が魔法だらけの異世界に転移した結果

kuron

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5・少女とプランク

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 やぁ、皆んな!元気に筋トレしてる?
俺は手足をロープで縛られ絶賛拘束中!柵の中に入れられてる。柵の杭は貫禄有る口髭のおっさんが魔法でボコボコ地面から出してた、魔法超便利!
 勿論、俺だってただ拘束されてる訳じゃない。うつ伏せになって前腕と肘、つま先を地面に付き身体を真っ直ぐに保っている。そうプランクしながら状況の把握に努めてるんだ。プランクは体幹を鍛えるにはもってこいだからな、一石二鳥だろう?

 現在、異世界人は先程仕留めた熊の解体をしている。あんなデッカイ熊を小柄な女の子がサクサクバラしてるのを見るのはなんだかとてもシュールだ。しかも随分手慣れてるな、この世界では若い女の子も日常的に狩りをするのだろうか。

 腹から後ろ足に向かって毛皮を剥いでいく、頭を落としバラした肉片を残念ハンサムとさっきぶつかりそうになった小柄な男の子が荷車へ運び樽へと詰め込んでいた。

 暫く見ていて気付いた事がある。『使える魔法の属性は複数ある』のではないかと言う事。
よくある異世界物のアニメでは大抵は専門属性があり複数属性持ちは貴重だとの設定が多い。

 残念ハンサムは熊の足を凍らせていた、女の子二人も氷柱を飛ばしていたので氷属性か水属性だろう。
 だが、残念ハンサムはあのデカい熊を一人でロープを使い木に吊るしていた。細身の高身長でジャンガジャンガ言いそうな体格なのに、だ。

 400kgはありそうな熊だ、何らかの魔法を使わないと無理だろう。重力系?身体強化?間違いないのはロープを操る魔法ではないって事だな。
 小柄な男の子の属性は何だろう?さっきの戦闘で活躍してなかったからコックとか雑用で魔法を使えないのか、もしくは回復役?

 それにしても…プランクでプルプルしている俺をしゃがみ込んで覗いてくるこの無表情な少女は何なのだろう?恐らくは監視なんだろうけど・・・・
一応俺は不審者扱いなんだから警戒しろよ。この子、軽鎧も脱いでるし、結構際どい格好なんだよな、おじさんどこまで見て良いかわからないよ。


「…κουσαταμπερου?」くさたべる

あっ、草とか要らないです。
…いや待てよ、もしかしたら薬草的なやつか?善意でやってくれてるなら食べた方が印象も良くなるか?

モグモグ…ブッフォッーーーッッツ!!

「苦ッ!何これ絶対口に入れちゃダメなヤツじゃん!?要らないッ!ちょっ押し付けんなッ!」

「…σουκικιραι…νταμε」好き嫌いダメ

何だよお前…めっちゃいい笑顔できんじゃん…



~クリミア視点~

 彼…多分人だから彼でいいよね?カイルさんは重さを軽減させる魔法の反重力アンティグラビティを使えるんだけど、彼は警戒しているのか魔法抵抗レジストしてしまうので仕方なく皆んなで引っ張り上げた。
 ほんっと重くて腕もげるかと思ったよ。あの体、私の三倍はあるんじゃないかな?一体何を食べたらあんな体になるの??

(ちょっと見た目気持ち悪いけど…)

 引き揚げた後は見た目と違って良い子にしてるからビエル団長が作った簡易的な柵に入れ、私達は赤熊の解体をする事にした。
 彼は高位の魔術師?の可能性もあるので、念の為ビエル団長は彼を監視しているみたい。でも、私にはとても高位の魔術師には見えないなぁ、どっちかと言えば大きな動物よね。

 私の両親は猟師で小さい頃から解体を手伝って見てきたから分かるけど、確かにカイルさんが言ってたように毛皮を剥いだクマみたいな筋肉だ。
 特にこの胸辺りの筋肉の付き具合は彼と同じじゃないかな?そんな事を考えながら赤熊をサクサクと捌いていく。

「カイルさーん、ちゃんと肉は凍結魔法で冷やしてくださいねー。今日の暑さじゃ腐っちゃうからー」

「任せろ、絶妙な凍り加減にしてやるよ!肉は孤児院の餓鬼どもにも持っていくんだろ?」

「そうですね!きっと喜びますっ!」

 サーシゥ王国では国営の孤児院がある。主に兵役などで亡くなった人達の子供を預かって育ててる。私も12歳で両親を亡くしてからはこの孤児院にお世話になっていた。

 私の父は風魔法が得意で300m先の鹿を二頭同時に仕留めたのは有名な話だ。その腕を買われて魔法学園での臨時講師を務めた程なのだ!そのおかげで私も国営の孤児院に入れたのは感謝してる。教会が運営する孤児院もあるけど…あまり待遇は良くないみたい。
 最近は食料の値段が上がって食事が満足に出せない事もあると孤児院のシェンさんがボヤいていた。だから沢山獲物が取れた時は孤児院に持って行くんだ!

(きっとウルトも来るよね?)

 ウルトと私は同じ孤児院出身、同室だった私はウルトの姉代わり。8歳の時に目の前で強盗に両親を殺されたウルトは他人と距離を取りたがり、無表情で滅多に感情を表に出す事が無い。だけど本当はすっごく素直で可愛い!って事はずっと一緒に育ってきた私は知っている。

(最近はサボるし注意したら文句を言うし…可愛いくない時もあるけど…あれ?そういえばウルトどこに行ったかな?)

周りに目を向けるとウルトが彼と一緒にいるとこが見えた。

「もうっ!ウルト~サボるなぁ!!・・・・・あえっ?…ウルト…笑ってる…」
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