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第39話 美人姉妹は嫉妬の原因
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事務所でもめた日、瑠理はカレンに秋葉原へ呼び出されて、3時間も待たされたあげく、結局すっぽかされたそうだ。
瑠理を可哀そうに思った俺は、メイド喫茶へ行きたいという彼女の要望を了承する。
「あは! 健ちゃーん、こっちこっち!」
秋葉原の電気街口改札で瑠理が手を振る。
激動の一週間が終わって、今日は瑠理と約束した日曜日。
これから一緒にメイド喫茶へ行くのだ。
そのメイド喫茶で、彼女と共通のネッ友が働いてるらしい。
「中村さん、今日は姉妹ともどもよろしく」
「あ、栗原専務こんにちは」
「今日はプライベートなので、専務じゃなく香織って呼んでね」
「え!? 名前呼び!?」
「だって、妹も栗原だもの」
「あ、そうか。え、えーと香織さん??」
俺が菜乃の手前、ふたりきりは避けたいと瑠理に話したら、栗原専務も一緒になったのだ。
「お姉ちゃん、飽きたら途中で帰ってもいいよ?」
「アニメやメイドは趣味とは違うけど、仕事の関係上興味はあるわ」
瑠理の姉、香織さんは会社の専務だけあって、Vtuber事務所の運営に情熱を傾けている。
今日のメイド喫茶訪問も情報収集のつもりらしい。
だがその割に服装がノリノリだ。
ふたりともお揃いのフリル付き黒シャツに、前スリットの入ったタイトスカート姿。
瑠理と香織さんは身長差こそあるが、どちらもスリムで綺麗な黒髪のロングヘア。
ふたりが並ぶとそれだけで人目を惹き付ける。
まるでガンシューティングのソシャゲに登場する、美人姉妹キャラのようだ。
駅横の広場で話していると知らない男がふたりの前に来る。
「あの、本物以上の完成度ですね! 一緒に写真撮らしてもらっていいですか?」
「写真ですか? 私はいいケド、お姉ちゃんは?」
「今日はプライベートですしね。かまいませんよ」
ホントにそう勘違いした観光客がいて笑った。
香織さんは断ると思いきや、普通にOKしている。
ONとOFFをきっちり使い分ける性格のようだ。
秋葉原電気街を3人で歩く。
人の数も多いが、メイドの数も凄い。
10mおきにいて、店のチラシを配っている。
彼女たちはそれぞれ違うデザインのメイド服に身を包んでいて、メイド喫茶を知らない人なら、異世界に迷い込んだと錯覚するかもしれない。
「で? ネッ友は、どこのメイド喫茶にいるんだ?」
「健ちゃん、メイド喫茶はあとあと。まずはごはん食べよーよ」
「中村さん。どうせなら秋葉原らしいご飯がいいわ」
香織さんに秋葉原らしい店と言われて思案する。
どうしよう。
らしいで思い浮かぶのはB級グルメばっかだ。
こんな格好の美人姉妹を、一体どこの店へ連れて行けばいいのやら。
「香織さんはこう言ってるけど、牛丼はないよな?」
「秋葉原らしいと思うよ。携帯禁止の聖地だし」
「携帯禁止の聖地!? 面白いわね! 中村さん、その牛丼屋さんにしましょう」
結局、あの牛丼屋に行った。
「美味いよな、あそこ」
「お皿に入ってる豆腐としらたきがいいよね」
「昔は携帯を出すだけで怒られたの? 帰ったら、私もそのアニメ見ようかしら」
香織さんが気に入ってくれたようでよかった。
だが、それにしてもこの姉妹は目立つな。
歩いてるだけで視線を感じるぞ。
菜乃も視線を惹き付けるけど、この美人姉妹が並んで歩くと目立ってしょうがない。
目当てのメイド喫茶に近づくほど観光客が増える。
「健ちゃんてば、何でそんなに離れるの? はぐれちゃうじゃない」
「中村さん。人が多いので隣を歩いてください」
目立たないように離れていたら、香織さんに手首を掴まれて横に引っ張られる。
「あ、お姉ちゃんズルい。じゃあ私も!」
瑠理が反対側に引っ付いて俺と腕を組んだ。
「お、おい、瑠理……」
ただでさえ、黒髪の美人姉妹で人目を惹くふたり。
しかも今日は、フリル付き黒シャツに前スリットの入ったタイトスカートという目立つ服装。
そんなふたりにはさまれた俺は、彼女ら以上の注目を浴びる。
最初は美人姉妹にはさまれて、うらやむ男どもの視線で優越感に浸っていた。
両手に花を自慢しながら歩いたのだが……。
……すぐに恐怖を感じ始める。
菜乃とふたりで来たときは、美貌の彼女を連れる彼氏として羨望の眼差しを受けた。
しかし、今日の視線は違う。
刺すような殺気を感じるのだ。
まるで、極悪人として見られてる気がする。
両脇に美人姉妹をはべらせて、独り占めしてるように見えるんだろう。
いや、実際その状況か!
美女と歩くのも、行き過ぎは怖いと初めて知った。
「なあ瑠理、みんなが誤解するからさ」
「いいじゃない、知らない人だもん! それに今日は私のための日でしょ?」
「最近仕事ばかりだったので、私も楽しいわ。中村さん、ありがとうね」
余計に瑠理が強く腕を組んで密着し、香織さんが俺の頭をいい子いい子と撫でた。
そんな美女姉妹の振る舞いが、余計視線を集める。
俺は幸せを感じるどころではなく、逆に周囲へ気を配るハメになった。
とはいえ、彼女らに悪くて今さら隣を拒否するのもできない。
結局そのまま歩いて目的のメイド喫茶に到着した。
◇
「お帰りなさいませ、ご主人様ニャン」
俺はとっくに席へ座っていて、来店した客にあいさつするほかのメイドの声を聞いていた。
メイドのネッ友に美味しくなる魔法をかけてもらったオレンジジュースは、もうそろそろ飲み終わる。
あの姉妹はどこ行ったんだろ。
目的のメイドカフェに着いて早々、ふたりして小声で耳打ちしていたが……。
その後に瑠理が、嫌がる香織さんを無理やり連れてどっかに行って、ちっとも帰ってこないのだ。
香織さんが顔を赤くして必死に拒否してたので、今もそれが気になって仕方ない。
瑠理は、一体何をたくらんでいるのか??
瑠理を可哀そうに思った俺は、メイド喫茶へ行きたいという彼女の要望を了承する。
「あは! 健ちゃーん、こっちこっち!」
秋葉原の電気街口改札で瑠理が手を振る。
激動の一週間が終わって、今日は瑠理と約束した日曜日。
これから一緒にメイド喫茶へ行くのだ。
そのメイド喫茶で、彼女と共通のネッ友が働いてるらしい。
「中村さん、今日は姉妹ともどもよろしく」
「あ、栗原専務こんにちは」
「今日はプライベートなので、専務じゃなく香織って呼んでね」
「え!? 名前呼び!?」
「だって、妹も栗原だもの」
「あ、そうか。え、えーと香織さん??」
俺が菜乃の手前、ふたりきりは避けたいと瑠理に話したら、栗原専務も一緒になったのだ。
「お姉ちゃん、飽きたら途中で帰ってもいいよ?」
「アニメやメイドは趣味とは違うけど、仕事の関係上興味はあるわ」
瑠理の姉、香織さんは会社の専務だけあって、Vtuber事務所の運営に情熱を傾けている。
今日のメイド喫茶訪問も情報収集のつもりらしい。
だがその割に服装がノリノリだ。
ふたりともお揃いのフリル付き黒シャツに、前スリットの入ったタイトスカート姿。
瑠理と香織さんは身長差こそあるが、どちらもスリムで綺麗な黒髪のロングヘア。
ふたりが並ぶとそれだけで人目を惹き付ける。
まるでガンシューティングのソシャゲに登場する、美人姉妹キャラのようだ。
駅横の広場で話していると知らない男がふたりの前に来る。
「あの、本物以上の完成度ですね! 一緒に写真撮らしてもらっていいですか?」
「写真ですか? 私はいいケド、お姉ちゃんは?」
「今日はプライベートですしね。かまいませんよ」
ホントにそう勘違いした観光客がいて笑った。
香織さんは断ると思いきや、普通にOKしている。
ONとOFFをきっちり使い分ける性格のようだ。
秋葉原電気街を3人で歩く。
人の数も多いが、メイドの数も凄い。
10mおきにいて、店のチラシを配っている。
彼女たちはそれぞれ違うデザインのメイド服に身を包んでいて、メイド喫茶を知らない人なら、異世界に迷い込んだと錯覚するかもしれない。
「で? ネッ友は、どこのメイド喫茶にいるんだ?」
「健ちゃん、メイド喫茶はあとあと。まずはごはん食べよーよ」
「中村さん。どうせなら秋葉原らしいご飯がいいわ」
香織さんに秋葉原らしい店と言われて思案する。
どうしよう。
らしいで思い浮かぶのはB級グルメばっかだ。
こんな格好の美人姉妹を、一体どこの店へ連れて行けばいいのやら。
「香織さんはこう言ってるけど、牛丼はないよな?」
「秋葉原らしいと思うよ。携帯禁止の聖地だし」
「携帯禁止の聖地!? 面白いわね! 中村さん、その牛丼屋さんにしましょう」
結局、あの牛丼屋に行った。
「美味いよな、あそこ」
「お皿に入ってる豆腐としらたきがいいよね」
「昔は携帯を出すだけで怒られたの? 帰ったら、私もそのアニメ見ようかしら」
香織さんが気に入ってくれたようでよかった。
だが、それにしてもこの姉妹は目立つな。
歩いてるだけで視線を感じるぞ。
菜乃も視線を惹き付けるけど、この美人姉妹が並んで歩くと目立ってしょうがない。
目当てのメイド喫茶に近づくほど観光客が増える。
「健ちゃんてば、何でそんなに離れるの? はぐれちゃうじゃない」
「中村さん。人が多いので隣を歩いてください」
目立たないように離れていたら、香織さんに手首を掴まれて横に引っ張られる。
「あ、お姉ちゃんズルい。じゃあ私も!」
瑠理が反対側に引っ付いて俺と腕を組んだ。
「お、おい、瑠理……」
ただでさえ、黒髪の美人姉妹で人目を惹くふたり。
しかも今日は、フリル付き黒シャツに前スリットの入ったタイトスカートという目立つ服装。
そんなふたりにはさまれた俺は、彼女ら以上の注目を浴びる。
最初は美人姉妹にはさまれて、うらやむ男どもの視線で優越感に浸っていた。
両手に花を自慢しながら歩いたのだが……。
……すぐに恐怖を感じ始める。
菜乃とふたりで来たときは、美貌の彼女を連れる彼氏として羨望の眼差しを受けた。
しかし、今日の視線は違う。
刺すような殺気を感じるのだ。
まるで、極悪人として見られてる気がする。
両脇に美人姉妹をはべらせて、独り占めしてるように見えるんだろう。
いや、実際その状況か!
美女と歩くのも、行き過ぎは怖いと初めて知った。
「なあ瑠理、みんなが誤解するからさ」
「いいじゃない、知らない人だもん! それに今日は私のための日でしょ?」
「最近仕事ばかりだったので、私も楽しいわ。中村さん、ありがとうね」
余計に瑠理が強く腕を組んで密着し、香織さんが俺の頭をいい子いい子と撫でた。
そんな美女姉妹の振る舞いが、余計視線を集める。
俺は幸せを感じるどころではなく、逆に周囲へ気を配るハメになった。
とはいえ、彼女らに悪くて今さら隣を拒否するのもできない。
結局そのまま歩いて目的のメイド喫茶に到着した。
◇
「お帰りなさいませ、ご主人様ニャン」
俺はとっくに席へ座っていて、来店した客にあいさつするほかのメイドの声を聞いていた。
メイドのネッ友に美味しくなる魔法をかけてもらったオレンジジュースは、もうそろそろ飲み終わる。
あの姉妹はどこ行ったんだろ。
目的のメイドカフェに着いて早々、ふたりして小声で耳打ちしていたが……。
その後に瑠理が、嫌がる香織さんを無理やり連れてどっかに行って、ちっとも帰ってこないのだ。
香織さんが顔を赤くして必死に拒否してたので、今もそれが気になって仕方ない。
瑠理は、一体何をたくらんでいるのか??
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