62 / 63
番外編 その4 それから……
みんなでの食事
しおりを挟む―――
これで全員、揃った感じだ。
「さぁ、皆さん、たくさん用意しましたから、沢山食べてくださいね!」
家の広間に集まるみんな、エディアはそこに、手作りの料理を持ってきた。
お手製のパンに、サラダ、焼いた肉料理……。いろいろな、彼女の作った料理がテーブルに並ぶ。
「……わぁ、とても美味しい!」
ラキサは目の前の料理を、小皿にとって食べていた。彼女はとても、気に入っているようだ。
それに、テオもまた。
「僕たちは多くの場所を旅して来たけど、うん、それに負けないくらいだよ」
「ありがとう、二人とも。作った甲斐がありました。……ああっと、リリア!」
「んー」
見ると料理に手を伸ばそうとしていた、リリア。
エディアはとっさに、それを止めた。
「それはまだ食べれないから、リリアはこっちのお粥を、ね」
まだ年齢の低いリリア、普通のものは食べられないから、彼女にはそれとは別に、柔らかいお粥が用意されていた。
「ふふ……まだ小さいから、な。……この子も」
そう話すのは、トリウス。彼の手にはルーフェとエディアの四人目の子となる赤ん坊、リースが抱かれていた。
彼は慣れた手つきでリースをあやし、哺乳瓶でミルクを飲ませていた。
ちなみに精霊のウィルも、小さい小皿のミルクを、口にしていた。
「ありがとうございます。トリウスさん、赤ちゃんをあやすのが上手なのですね」
「それは、昔はラキサが、赤ん坊だったときに、色々面倒を見ていたからな」
「……あはは、私はもう覚えていませんけれど、お父様はとても器用な人、ですから」
ラキサもまた、こんな事を言った。
「でも、私がいる前で……そんな話、恥ずかしいな」
「ねぇねぇ! ラキサさん、それにテオさんも」
するといつのまに、ラキサとテオの近くには子供たち二人、ルイとエリナがいた。
「えっ、私に?」
「それに僕も?」
いきなりで戸惑う、二人に子供たちはこんな事を聞く。
「二人とも、あちこち旅していたんだよね? だったらその話、聞きたいの!」
「僕だって、知りたいよ。……気になるし」
どうやら二人共、世界を旅して来たラキサとテオに、興味津々だった。
子供たちの純粋な目、これは裏切るわけには、いかなかった。
「そう言うなら、分かったわ! じゃあ色々話そうかな! ねっ、テオ!」
ラキサの言葉に、頷くテオ。
「うん! じゃあ、まずは僕たちの出会った、芸術都市、アリアスレーンの話でもしょうかな!」
……そんな風に、食事会はそれぞれ、楽しく賑わっていた。
――ふふっ――
この様子を、ルーフェは穏やかに眺めていた。
「ねぇルーフェ!」
彼の隣に、話から戻ってきたエディアが、隣に座る。
「戻ってきたんだ、エディア。せっかくだからもっと話せばいいのに」
「それを言うなら、ルーフェだって」
「……僕は後で、するつもりだよ。だけど――」
改めてまた、彼はむいんなを見回す。
「僕たちも含め、みんな色々あったからね。それがまたこうして……みんな、元気そうで、何よりだ」
ふとした、そんな感想。エディアもまた気持ちは同じだった。
「うんうん、そうですね!
……さてと、やっぱり私はルーフェが一番ですし、一緒に御飯を食べましょう?」
いつもの優しい、彼女の言葉と表情。
ルーフェはそれに、応える。
「そうだね。じゃあ……そうしようか、エディア」
いつものように、二人は仲睦まじく、一緒に食事をすることにした。
0
お気に入りに追加
14
あなたにおすすめの小説
【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」
記憶を失くした彼女の手紙 消えてしまった完璧な令嬢と、王子の遅すぎた後悔の話
甘糖むい
恋愛
婚約者であるシェルニア公爵令嬢が記憶喪失となった。
王子はひっそりと喜んだ。これで愛するクロエ男爵令嬢と堂々と結婚できると。
その時、王子の元に一通の手紙が届いた。
そこに書かれていたのは3つの願いと1つの真実。
王子は絶望感に苛まれ後悔をする。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
【完結】側妃は愛されるのをやめました
なか
恋愛
「君ではなく、彼女を正妃とする」
私は、貴方のためにこの国へと貢献してきた自負がある。
なのに……彼は。
「だが僕は、ラテシアを見捨てはしない。これから君には側妃になってもらうよ」
私のため。
そんな建前で……側妃へと下げる宣言をするのだ。
このような侮辱、恥を受けてなお……正妃を求めて抗議するか?
否。
そのような恥を晒す気は無い。
「承知いたしました。セリム陛下……私は側妃を受け入れます」
側妃を受けいれた私は、呼吸を挟まずに言葉を続ける。
今しがた決めた、たった一つの決意を込めて。
「ですが陛下。私はもう貴方を支える気はありません」
これから私は、『捨てられた妃』という汚名でなく、彼を『捨てた妃』となるために。
華々しく、私の人生を謳歌しよう。
全ては、廃妃となるために。
◇◇◇
設定はゆるめです。
読んでくださると嬉しいです!
【完結】忘れてください
仲 奈華 (nakanaka)
恋愛
愛していた。
貴方はそうでないと知りながら、私は貴方だけを愛していた。
夫の恋人に子供ができたと教えられても、私は貴方との未来を信じていたのに。
貴方から離婚届を渡されて、私の心は粉々に砕け散った。
もういいの。
私は貴方を解放する覚悟を決めた。
貴方が気づいていない小さな鼓動を守りながら、ここを離れます。
私の事は忘れてください。
※6月26日初回完結
7月12日2回目完結しました。
お読みいただきありがとうございます。
この度、皆さんの予想通り婚約者候補から外れることになりました。ですが、すぐに結婚することになりました。
鶯埜 餡
恋愛
ある事件のせいでいろいろ言われながらも国王夫妻の働きかけで王太子の婚約者候補となったシャルロッテ。
しかし当の王太子ルドウィックはアリアナという男爵令嬢にべったり。噂好きな貴族たちはシャルロッテに婚約者候補から外れるのではないかと言っていたが
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる