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番外編 その3 ささやかな幸せの、物語。
和やかなランチ
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――――
「ルーフェ! 待っていましたよ!」
エディアがいたのは、牧場の建物の一角にある、ベランダである。
新緑に広がる牧草地を臨む、リビングからの長め。開放的なこの場所には、心地いい風もまた、吹き込んで来る。
牧草地に見える二人の人影に、彼女は手を振る。
「エディアさんに言われた通り、連れてきたわ!
ふふっ、喜んでくれるかな」
それは仕事から戻ってきた、ミリナとルーフェである。
「ミリナちゃんも、ありがとうね。……牧場のご主人さんがいないのは残念だけど、三人で一緒にお昼ごはんにしましょう!」
「だってさ、ルーフェ! 早く早く!」
ご飯の待ち遠しいミリナは、ルーフェの手を引っ張り、ベランダへと連れて行く。
――――
エディアの待つ、ベランダにたどり着いた二人。
ルーフェは彼女を目の前に、少し照れたようにはにかむ。
「来てくれたんだね、僕も嬉しいよ、エディア」
「私も、ルーフェの元気な姿が見れて嬉しいです。
……さぁ、お疲れ様。たくさん用意したから、三人で一緒に食べましょう」
エディアの手には、彼女が愛情を注いで作った弁当の入った、大きなバスケットがある。
さっそく楽しい昼ご飯、三人ともワクワクだ。
――――
今日のお弁当は、野菜サラダと牛肉の炒め物とチーズの添え合わせ、そして狐色にこんがり焼けた、手作りのパンだ。
「……このパン、フワフワで美味しい!」
「ふふっ、エディアの料理は世界一なんだ。美味しくて、当たり前さ」
「本当にルーフェは、幸せ者だね。いつもこんなにおいしい料理が食べられて、美人な奥さんがいるなんて」
エディアの料理を美味しそうに食べながら、二人は楽しそうに話す。
「褒めてくれるのは嬉しいけど、ううっ……そう言われると、照れちゃいます」
そんな二人のすぐ近くでは、思わず赤面しているエディア。
でも、彼女はとても、嬉しそうだ。
「エディアも一緒に、昼ご飯にしよう。……だって今は、栄養をたっぷりとらないとさ」
「ふふふ、分かっています。私たちの子供のためにも、ね」
と、彼女は愛しいまなざしで、前よりも少し膨らんできた自分のお腹を見つめる。
するとミリナは、ようやくそのことに気づいたらしく、目を丸くする。
「あっ、エディアさんのお腹! もしかして……!」
しげしげと彼女のお腹に目をやるミリナ。興味深々だ。
「良かったですね! 二人とも!
……とっても、おめでたいわ!」
ミリナは目を輝かせ、二人を祝福する。
「ありがとう、ミリナ。実はお腹の子、どうやら、二人いるみたいなんだ。
この前、村の医師に診てもらって、分かったことさ」
ルーフェはこう話し、エディアもまた。
「ふふっ。子供が二人だなんて、私も嬉しいです。
それにもし、ルーフェが良かったら、まだ子供が欲しいな……なんて」
上目遣いで、彼を見るエディア。
「今の所は二人だけど、エディアがそう望むなら、僕も同じ思いさ。
ただ、子供にエディアがとられてしまわないかと、少し心配だけどね」
「大丈夫です。子供ができても私は、ルーフェが大切ですから。それは……ずっと、ずっと、変わりませんよ」
「……エディア」
ルーフェとエディア、二人のそんな様子を、ミリナはニヤニヤしながら眺めている。
「いいなー。いつもそんなに、幸せそうなんて。少しだけ、妬いちゃうな。
……でも、二人の子供も、何だか気になっちゃう! ねぇエディアさん、良かったら時々、様子を見に来ていい?」
興味津々でそう尋ねる彼女。エディアはにこりと笑って。
「もちろん。ミリナちゃんなら、大歓迎ですよ」
「やった! 私、嬉しいな!」
そんな和やかな、昼ごはんの一時。
とても、とても、充足した時間だ。
「ルーフェ! 待っていましたよ!」
エディアがいたのは、牧場の建物の一角にある、ベランダである。
新緑に広がる牧草地を臨む、リビングからの長め。開放的なこの場所には、心地いい風もまた、吹き込んで来る。
牧草地に見える二人の人影に、彼女は手を振る。
「エディアさんに言われた通り、連れてきたわ!
ふふっ、喜んでくれるかな」
それは仕事から戻ってきた、ミリナとルーフェである。
「ミリナちゃんも、ありがとうね。……牧場のご主人さんがいないのは残念だけど、三人で一緒にお昼ごはんにしましょう!」
「だってさ、ルーフェ! 早く早く!」
ご飯の待ち遠しいミリナは、ルーフェの手を引っ張り、ベランダへと連れて行く。
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エディアの待つ、ベランダにたどり着いた二人。
ルーフェは彼女を目の前に、少し照れたようにはにかむ。
「来てくれたんだね、僕も嬉しいよ、エディア」
「私も、ルーフェの元気な姿が見れて嬉しいです。
……さぁ、お疲れ様。たくさん用意したから、三人で一緒に食べましょう」
エディアの手には、彼女が愛情を注いで作った弁当の入った、大きなバスケットがある。
さっそく楽しい昼ご飯、三人ともワクワクだ。
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今日のお弁当は、野菜サラダと牛肉の炒め物とチーズの添え合わせ、そして狐色にこんがり焼けた、手作りのパンだ。
「……このパン、フワフワで美味しい!」
「ふふっ、エディアの料理は世界一なんだ。美味しくて、当たり前さ」
「本当にルーフェは、幸せ者だね。いつもこんなにおいしい料理が食べられて、美人な奥さんがいるなんて」
エディアの料理を美味しそうに食べながら、二人は楽しそうに話す。
「褒めてくれるのは嬉しいけど、ううっ……そう言われると、照れちゃいます」
そんな二人のすぐ近くでは、思わず赤面しているエディア。
でも、彼女はとても、嬉しそうだ。
「エディアも一緒に、昼ご飯にしよう。……だって今は、栄養をたっぷりとらないとさ」
「ふふふ、分かっています。私たちの子供のためにも、ね」
と、彼女は愛しいまなざしで、前よりも少し膨らんできた自分のお腹を見つめる。
するとミリナは、ようやくそのことに気づいたらしく、目を丸くする。
「あっ、エディアさんのお腹! もしかして……!」
しげしげと彼女のお腹に目をやるミリナ。興味深々だ。
「良かったですね! 二人とも!
……とっても、おめでたいわ!」
ミリナは目を輝かせ、二人を祝福する。
「ありがとう、ミリナ。実はお腹の子、どうやら、二人いるみたいなんだ。
この前、村の医師に診てもらって、分かったことさ」
ルーフェはこう話し、エディアもまた。
「ふふっ。子供が二人だなんて、私も嬉しいです。
それにもし、ルーフェが良かったら、まだ子供が欲しいな……なんて」
上目遣いで、彼を見るエディア。
「今の所は二人だけど、エディアがそう望むなら、僕も同じ思いさ。
ただ、子供にエディアがとられてしまわないかと、少し心配だけどね」
「大丈夫です。子供ができても私は、ルーフェが大切ですから。それは……ずっと、ずっと、変わりませんよ」
「……エディア」
ルーフェとエディア、二人のそんな様子を、ミリナはニヤニヤしながら眺めている。
「いいなー。いつもそんなに、幸せそうなんて。少しだけ、妬いちゃうな。
……でも、二人の子供も、何だか気になっちゃう! ねぇエディアさん、良かったら時々、様子を見に来ていい?」
興味津々でそう尋ねる彼女。エディアはにこりと笑って。
「もちろん。ミリナちゃんなら、大歓迎ですよ」
「やった! 私、嬉しいな!」
そんな和やかな、昼ごはんの一時。
とても、とても、充足した時間だ。
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