200 / 204
最終章 レースの決着
決着――
しおりを挟む「どうだっ! これが今の、僕さ! 悪いけど、今回のG3レース……頂いたよ!」
得意げなフウマ、そしてシロノは……。
〈これは、してやられましたね。ですがあと少し、まだギリギリ……〉
と、その時、今度は――
〈さて! ようやく並んだわ!〉
〈――マリンまで!〉
後方から迫っていた、マリンのクリムゾンフレイムが、今度はホワイトムーンに並ぶ。
〈言ったでしょ? シロノの事を手に入れるって! 悪いけど、勝たせはしないわよ!〉
シロノ、マリンが一騎打ちを繰り広げる中、そんな二人に迫るフィナとリッキー。
そして――。
「――さぁ! いよいよ貴方との決着だ。……ジンジャーブレッドさん!」
テイルウィンドは高速でせまり、ついに再びブラッククラッカーへ――首位に並んだ。
〈さん付けとは……年齢で言うなら。私が年下なのだよ。それに、今のこの姿も、もはや君より――〉
ジンジャーブレッドは激しい副作用により、激痛と、身体の激しい退行を起こしていた。
もはや肉体も、フウマよりも幼くなっていたが……それでも、ジンジャーブレッドとしての自我は、保っていた。
「でも貴方は紛れもなく、かつて伝説を残したレーサー、ジンジャーブレッドその人さ! だからこそ、僕はその伝説を今――打ち破ってみせる!」
例えクローンでも、彼はまさしく、もう一人のジンジャーブレッド。
少なくとも、フウマにとっては、それは間違いなかった。
〈そう言ってくれるか。なら私も、ジンジャーブレッドとして、そして一レーサーとして――勝利を掴んでみせるとも!〉
ジンジャーブレッドはそう、決意を示す。そしてフウマも――
「こっちだって、負けられないさ! ここまで来たんだ、G3レース、優勝するのは僕さ」
ゴールはもう、すぐそこだ。
眼下に広がる大都市とそして――正面に大きく浮かぶ、ゴールラインである黄金のリング。
もはや長かったレースも終わり。ゴールまで、あと数秒――。
シロノのホワイトムーンそして、マリンのクリムゾンフレイム……二機もすぐ背後まで迫る。そしてリッキーとフィナの機体まで、残り数秒だとしても果たして――
――トップを飛ぶ、テイルウィンドとブラッククラッカー。
二機もまた互角であるが、もう後一歩――前へと。
――ずっと頑張って来たんだ、レーサーとして、レースに……色々な想いをかけて――
もうすぐゴールに、手が届く。
まるでそこに手を伸ばす、そんなイメージで、誰よりも先に……それを掴んでみせようと。
――自分が純粋にレースが好きだから、そして大切な人のために――。もちろん、シロノ達やジンジャーブレッドさん、みんなのレースに駆ける思いに応えるためにも!――
テイルウィンドは、ゴールに目掛けて、一直線に。
目一杯に近づく、ゴールライン。フウマは思いっきり、感情を露にして……叫んだ!
「これで――――決まりだあぁぁっ!!」
ついにゴールインした、レース機。
テイルウィンド、ブラッククラッカーの二機が、同時にゴールしたと、そう見えた。
だが、ほんの僅か、先にゴールラインを潜ったのは――テイルウィンドの先端部だ!
リングの感知システムはこれを感知し、オーシャンポリスの会場から見えるくらいに巨大な、ホログラム映像を宙に映し出す。
光り輝くホログラムの文章、それには――こう示されていた。
『Winner! Oikaze Fuuma and――Teilwind!』
――――
〈見事優勝したのはフウマ・オイカゼ選手と、その機体――テイルウィンド!〉
レイはゴールを迎えた、テイルウィンドの映像とともに、こう宣言した。
〈ブラッククラッカーとは僅かの差で一位に! そして続けて、ホワイトムーンとクリムゾンフレイム……こっちの二機は同時にゴールね!〉
また、リオンドもこう付け足した。
〈その後に、アトリ、ワールウィンドの順でゴールだな。リッキー……よく頑張ったな〉
最後の言葉は、ほんの小声で。……彼は自分の息子の、奮闘ぶりもしっかり見ていたのだ。
〈さてと! 本当に長かったけど、どうだったかしら?
G3レース――ついに、完結。この後は表彰式があるから、どうかみんなも祝ってあげてね!〉
――――
会場でも、レースの結果に――大いに湧いた!
「すごいな! まさか、あの小僧が優勝とは――」
「最後の最後まで、迫力満点だわ!」
「それに、ジンジャーブレッドもさすがだった。……他のレーサー達も、また凄い活躍、素晴らしい!」
誰も彼も、レーサー達の奮闘に、賞賛の声を送る。
そして――
ミオもまた、G3レースの結末を見届け、息をついた。
――本当に、優勝したんだ。シロノさん、ジンジャーブレッドさんにも勝って……フウマは――
あまりの驚きに、思わず固まっていた彼女。すると――目元から、何かが流れ落ちるような、そんな感覚を覚えた。
軽く、指で拭うと、その指先がかすかに濡れていた。
――あれ? 私、泣いてるの? 変だな、フウマが優勝して、私もとっても嬉しいはずなのに――
思わず戸惑う、ミオ。だがその涙が意味するもの……それは、考えればすぐに分かった。
――そっか。これって……嬉し涙って、やつなんだ――
そうと分かれば、涙を手で拭い、改めて満面の笑顔で、笑ってみせた!
そして――こう一言。
「おめでとう、フウマ! よく頑張ったね!」
0
お気に入りに追加
11
あなたにおすすめの小説
銀河戦国記ノヴァルナ 第1章:天駆ける風雲児
潮崎 晶
SF
数多の星大名が覇権を目指し、群雄割拠する混迷のシグシーマ銀河系。
その中で、宙域国家オ・ワーリに生まれたノヴァルナ・ダン=ウォーダは、何を思い、何を掴み取る事が出来るのか。
日本の戦国時代をベースにした、架空の銀河が舞台の、宇宙艦隊やら、人型機動兵器やらの宇宙戦記SF、いわゆるスペースオペラです。
主人公は織田信長をモデルにし、その生涯を独自設定でアレンジして、オリジナルストーリーを加えてみました。
史実では男性だったキャラが女性になってたり、世代も改変してたり、そのうえ理系知識が苦手な筆者の書いた適当な作品ですので、歴史的・科学的に真面目なご指摘は勘弁いただいて(笑)、軽い気持ちで読んでやって下さい。
大事なのは勢いとノリ!あと読者さんの脳内補完!(笑)
※本作品は他サイト様にても公開させて頂いております。
挙式後すぐに離婚届を手渡された私は、この結婚は予め捨てられることが確定していた事実を知らされました
結城芙由奈@12/27電子書籍配信
恋愛
【結婚した日に、「君にこれを預けておく」と離婚届を手渡されました】
今日、私は子供の頃からずっと大好きだった人と結婚した。しかし、式の後に絶望的な事を彼に言われた。
「ごめん、本当は君とは結婚したくなかったんだ。これを預けておくから、その気になったら提出してくれ」
そう言って手渡されたのは何と離婚届けだった。
そしてどこまでも冷たい態度の夫の行動に傷つけられていく私。
けれどその裏には私の知らない、ある深い事情が隠されていた。
その真意を知った時、私は―。
※暫く鬱展開が続きます
※他サイトでも投稿中
モニターに応募したら、系外惑星に来てしまった。~どうせ地球には帰れないし、ロボ娘と猫耳魔法少女を連れて、惑星侵略を企む帝国軍と戦います。
津嶋朋靖(つしまともやす)
SF
近未来、物体の原子レベルまでの三次元構造を読みとるスキャナーが開発された。
とある企業で、そのスキャナーを使って人間の三次元データを集めるプロジェクトがスタートする。
主人公、北村海斗は、高額の報酬につられてデータを取るモニターに応募した。
スキャナーの中に入れられた海斗は、いつの間にか眠ってしまう。
そして、目が覚めた時、彼は見知らぬ世界にいたのだ。
いったい、寝ている間に何が起きたのか?
彼の前に現れたメイド姿のアンドロイドから、驚愕の事実を聞かされる。
ここは、二百年後の太陽系外の地球類似惑星。
そして、海斗は海斗であって海斗ではない。
二百年前にスキャナーで読み取られたデータを元に、三次元プリンターで作られたコピー人間だったのだ。
この惑星で生きていかざるを得なくなった海斗は、次第にこの惑星での争いに巻き込まれていく。
(この作品は小説家になろうとマグネットにも投稿してます)
宇宙を渡る声 大地に満ちる歌
広海智
SF
九年前にUPOと呼ばれる病原体が発生し、一年間封鎖されて多くの死者を出した惑星サン・マルティン。その地表を移動する基地に勤務する二十一歳の石一信(ソク・イルシン)は、親友で同じ部隊のヴァシリとともに、精神感応科兵が赴任してくることを噂で聞く。精神感応科兵を嫌うイルシンがぼやいているところへ現れた十五歳の葛木夕(カヅラキ・ユウ)は、その精神感応科兵で、しかもサン・マルティン封鎖を生き延びた過去を持っていた。ユウが赴任してきたのは、基地に出る「幽霊」対策であった。
宇宙戦争中~モブの機動人型戦闘機乗りですが幸運スキルで生き残ってます~
朋 美緒(とも みお)
SF
転生物でよくあるファンタジー転生、僕はそれを選ばなかった
「<ガ〇ダ〇>や<〇クロ〇>みたいな大形(おおがた)の人型ロボットを操る戦士になりたい、でも目立ちたくないので下っ端で・・・でもすぐ死にたくないのでよろしく、可愛い彼女も欲しいし~金持ちで不自由なく暮らしたい」
男女の絡みも少しあり
ロボットウーマン改造刑を受けた少女
ジャン・幸田
SF
AI搭載型ロボットが普及した未来、特に技能のない人間たちは窮地に陥っていた。最小限の生活は保障されているとはいえ、管理され不自由なデストピアと世界は化していた。
そんな社会で反体制活動に参加し不良のレッテルを貼られた希美は保安処分として「再教育プログラム」を受けさせられ、強制的にロボットと同じ姿に変えられてしまった! 当局以外にはロボット以外の何者でもないと認識されるようになった。
機械の中に埋め込まれてしまった希美は、ロボットウーマンに改造されてしまった!
ラストフライト スペースシャトル エンデバー号のラスト・ミッショ
のせ しげる
SF
2017年9月、11年ぶりに大規模は太陽フレアが発生した。幸い地球には大きな被害はなかったが、バーストは7日間に及び、第24期太陽活動期中、最大級とされた。
同じころ、NASAの、若い宇宙物理学者ロジャーは、自身が開発したシミレーションプログラムの完成を急いでいた。2018年、新型のスパコン「エイトケン」が導入されテストプログラムが実行された。その結果は、2021年の夏に、黒点が合体成長し超巨大黒点となり、人類史上最大級の「フレア・バースト」が発生するとの結果を出した。このバーストは、地球に正対し発生し、地球の生物を滅ぼし地球の大気と水を宇宙空間へ持ち去ってしまう。地球の存続に係る重大な問題だった。
アメリカ政府は、人工衛星の打ち上げコストを削減する為、老朽化した衛星の回収にスペースシャトルを利用するとして、2018年の年の暮れに、アメリカ各地で展示していた「スペースシャトル」4機を搬出した。ロシアは、旧ソ連時代に開発し中断していた、ソ連版シャトル「ブラン」を再整備し、ISSへの大型資材の運搬に使用すると発表した。中国は、自国の宇宙ステイションの建設の為シャトル「天空」を打ち上げると発表した。
2020年の春から夏にかけ、シャトル七機が次々と打ち上げられた。実は、無人シャトル六機には核弾頭が搭載され、太陽黒点にシャトルごと打ち込み、黒点の成長を阻止しようとするミッションだった。そして、このミッションを成功させる為には、誰かが太陽まで行かなければならなかった。選ばれたのは、身寄りの無い、60歳代の元アメリカ空軍パイロット。もう一人が20歳代の日本人自衛官だった。この、二人が搭乗した「エンデバー号」が2020年7月4日に打ち上げられたのだ。
本作は、太陽活動を題材とし創作しております。しかしながら、このコ○ナ禍で「コ○ナ」はNGワードとされており、入力できませんので文中では「プラズマ」と表現しておりますので御容赦ください。
この物語はフィクションです。実際に起きた事象や、現代の技術、現存する設備を参考に創作した物語です。登場する人物・企業・団体・名称等は、実在のものとは関係ありません。
DOLL GAME
琴葉悠
SF
時は新暦806年。
人類の住処が地球外へも広がり、火星、木星、金星……様々な惑星が地球人の新たな居住地となっていた。
人々は平和を享受していたが、やがてその平和も終わりをつげ新たな戦争の時代に入った。
「代理戦争」。自らが行うのではなく、他者に行わせる戦争だった。
そしてその戦争の中で、新たな兵器が生み出された。
「DOLL」。大型特殊兵器であった。
人間の姿をモデルに作られた「DOLL」は、今までの陸上兵器とも、水上兵器とも、飛行兵器とも違う、画期的な兵器だった。
戦争は「DOLL」を使った戦争へと変化した。
戦争が表面上終結しても、「DOLL」はその存在を求められ続けた。
戦争により表面化した組織による抗争、平和を享受してきた故に求めていた「争い」への興奮。戦いは幾度も繰り返される、何度も、尽きることなく。
人々は「DOLL」同士を戦わせ、それを見ることに熱中した。
その戦いは「DOLLGAME」と呼ばれ、大昔のコロシアムでの戦いを想像させる試合であった。勝敗は簡単、相手の「DOLL」を戦闘不能にすれば勝ち。
その「DOLL」を操縦するものは「人形師」と呼ばれ、人々の欲望の代理人として戦っていた。
「人形師」になる理由は人それぞれで、名誉、金、暇つぶし等が主だった。
その「人形師」の中で、自らの正体を隠す「人形師」がいた。
パイロットスーツに身を包み、顔を隠し、黙々と試合を行い、依頼をこなす。
そんな「人形師」を人々は皮肉にこう呼んだ。
「マリオネット」と。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる