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最終章 レースの決着
誰にだって、まけない!
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――――
その一方、さっきのショックでマリンは一気に後退。
――くーっ! 何だかこのレースで私、アクシデントばかりねっ!――
今更ながらマリンは、自分の不運を嘆く。
だが――それも少しだけ。
とにかく今は、先を行くことを考える。
〈おいおい、マリン、大丈夫かよ?〉
すぐ前を飛行するのは、リッキーのワールウィンド。
「ふっ! 言ってくれるじゃないの、リッキー!」
とは言うものの、状況は芳しくない。
リッキーのさらに前方には、アトリ、テイルウィンド、ホワイトムーンにブラッククラッカーと、四機もの機体に先頭を取られている。
――いくら何でも、最後の最後でこうも遅れを出すなんて。どうにかして、巻き返したい所だけど――
……と、マリンがそう考えていた最中、彼女はある事に気付く。
――あっ……、そう言えば後半戦で、システム・スパークラーは使ってなかったっけ――
それは、クリムゾンフレイムに搭載された、加速機構の名称だった。
普段よりも遥かに速いスピードを、繰り出すことが可能であるが……機体の負担が大きいために、一レースに一度しか使用出来ない代物だ。
だが――確か後半戦に入ってからと言うものの、一度もまだ使用してはいなかった。
――色々ありすぎたせいで、すっかり忘れちゃってたなんて、私としたことが――
マリンは自分の失態を悔やむも、今はそれよりも――。
――でも、今からだって、全然間に合うわ!――
そして、彼女はコンピューターに、システム・スパークラーの起動を指示する。
コックピットシートは耐G仕様に変形し、バイザーが目元を覆う。
――ふふっ! この私、マリン・フローライトの最後の追い上げ、見せてあげる!――
――――
――あいつら、上手くやるじゃないかよ。さすがだぜ――
リッキーは先を行く機体を見ながら、感嘆の表情を見せる。
彼もまた、良い勝負をしており、現在五位と言え確実に、先を行くレーサー達に迫りつつあった。
ゴールも迫る中、リッキーも頑張りを見せていた。
――確かに厳しいが……それでも逆転出来る可能性はゼロじゃない! まだギリギリ巻き返せれば――
そう、リッキーが息巻いていた、そんな時……。
突然後方から、恐ろしいほどの急速度で迫るレース機。そして、その機体はアッという間に――ワールウィンドを追い越して行った。
バーニアから噴き出す、白熱したエネルギーを放つ機体……それこそ、マリンのクリムゾンフレイムであった。
――あの、嬢ちゃんの奴。何てスピードだ――
リッキーは呆気にとられ、それを眺めていた、が――
――おっと! こうしちゃいられねぇ! 確かに驚きはしたが、俺は俺で先を急がねえとな――
それよりも自分の事を、優先させるべきだ。
あの超速度とまでは行かないが、ワールウィンドの出力もレース機の中では高出力だ。
終盤のラストスパート、機体の最高出力で、リッキーは追い上げを見せる。
――――
そして――フウマ・オイカゼは、ゴールが迫る中、首位を競い熾烈な勝負を行っていた。
もはやゴールまで、すぐ目の前。残る自身の力を、今この刹那に――全て注ぐ。
「……っ! そこだ!」
〈しまったっ!〉
フウマのテイルウィンドと、フィナのアトリ。両者は互角の勝負を繰り広げていたが、ついにフウマが一歩優勢を取った。
テイルウィンドはそれを逃さず、ついにアトリを追い越した。そして――
「さぁ! ――次は二人の番だ!」
ついにフウマは、先頭に立つジンジャーブレッド、そしてホワイトムーンに迫った。
そんな彼の追い上げに、ジンジャーブレッドは……
「ほう……。やはり君は、凄いな……フウマ」
フウマはそれに、へへんと笑う。
「まあね! だって今までにないくらい、頑張ったから」
「……君との出会いはほんの僅かだが、それでも、君の良さは分かっているはずさ。
そのどこまでも真っすぐで、純粋な様子。私の元となった、言わば父親のような存在――オリジナルが現役だった頃も、きっと……君と同じだったのだろうな」
所詮はクローン、クローンである自分には、オリジナルの持つ栄光など持っていない。
当時の活躍はすべて、オリジナルのもの。自分の物では決してないが、それでも――『ジンジャーブレッド』の名を引き継いだ者として……きっと、そうであるだろうと信じていた。
「それが――僕だからね!
だからこそ、貴方との決着も、ここでつけてみせる!
同じ想いを胸に抱くレーサーとして、ジンジャーブレッドさん、僕から貴方への最大の手向けになるはずだからっ!」
自分らしく、本気のぶつかり合いを、フウマはするつもりだった。
しかし――。
〈ですが、私も忘れないで下さいよ!〉
直前に立ちふさがるのは、シロノとその機体、ホワイトムーンであった。
「くっ! シロノもいたんだ!」
〈そう言われると、寂しいですね。……私はフウマの、ライバルですよ?
それに、ジンジャーブレッドさんと決着つけたいのは、私も同じですから〉
今度はテイルウィンドとホワイトムーンの、一騎打ち。
これまではシロノが上手であることが多かったが、今は二人はの戦いは互角。
〈ほう? 二人とも、やるではないか〉
ジンジャーブレッドは、そんなフウマ、シロノに声をかけた。
〈ふふっ、それはもう。私とフウマの、こんな関係も長いですから〉
〈そうか。ライバルと呼べる関係、か。オリジナルが現役だった頃にも、ついに恵まれなかったものだ。……本当に、羨ましいな〉
確かに現役のジンジャーブレッドは、常に圧倒的な勝利を重ね、現役だった短い期間、ついに敗北することはなかった。
それこそがジンジャーブレッドの、伝説たる所以であったが、互角に戦えるようなライバルと呼ばれる存在は、ついに現れなかった。しかし――
「ジンジャーブレッドさんだって、今は僕たちのライバルさ! こうして本気の出し甲斐のあるライバル、シロノに負けないくらいさ!」
フウマ、シロノが勝負をしている中、なおもジンジャーブレッドはトップに立っていた。
――でも、やっぱりジンジャーブレッドさんは、流石だな。シロノと互角でも、それでもジンジャーブレッドさんはまだ上にいる感じさ――
〈ふふっ、私もその想いは、フウマと同じですよ。
もちろん、フウマも私のライバルですが、狙いはあくまで優勝! 悪いですが――先に行かせてもらいますよ!〉
が、やはりシロノもまた――実力は上手。
ついにホワイトムーンはテイルウィンドを振り切り、そしてそのまま一気に、ブラッククラッカーに並んだ。
〈どうですか! これで私も、並んでトップです!〉
「なっ! 僕よりも……先にっ!」
あまりにも突然のシロノの追い上げに、フウマはギョッとした。
〈確かに成長しましたが、やはり、まだまだですね〉
「ぐぬぬ……」
〈……ぐはっ、さすがは……はぁ、『白の貴公子』、だな。――実に、見事だ……うぐっ〉
ジンジャーブレッドに、再び発作――痛みが走る。
――ジンジャーブレッド、さん――
やはりフウマも心配であるが、それよりも……。
――そうだ。こんなになってまで、レーサーとしてあり続けているんだ。
そんなジンジャーブレッドさんに、僕も応えたいんだ。シロノにだって、ライバルとして負けてられない。それに――
フウマは、ミオの言葉もまた、頭に浮かぶ。
――僕のことが、大好きだって……一番応援してくれているって、想ってくれる大切な人がいるんだ。
だから僕も、ここで負けられない!――
シロノが先を行ったが、おかげで先を阻む者はいない。
だから今なら、二人に並べるはずだ!
フウマは機体を駆り、二機へと迫る。
先を行っていると言え、その距離は僅か。今のフウマならそれを埋めるのに、ほんの刹那で十分だった。
テイルウィンドはアッという間に、迫り、そして同じく並んだ。
「これで僕だって――同列一位さ!」
そう、最後の最後で、テイルウィンドは同列と言えついに一位に到達した!
〈……ふふふ、フウマもまた、意地を見せたな〉
相変わらず苦しそうながらも、ジンジャーブレッドも嬉しそうな、そんな様子を見せた。
フウマはそれに、得意げに言い放つ。
「ああ! ――もうすぐゴール、優勝は渡さないよ! 誰にだってね!」
その一方、さっきのショックでマリンは一気に後退。
――くーっ! 何だかこのレースで私、アクシデントばかりねっ!――
今更ながらマリンは、自分の不運を嘆く。
だが――それも少しだけ。
とにかく今は、先を行くことを考える。
〈おいおい、マリン、大丈夫かよ?〉
すぐ前を飛行するのは、リッキーのワールウィンド。
「ふっ! 言ってくれるじゃないの、リッキー!」
とは言うものの、状況は芳しくない。
リッキーのさらに前方には、アトリ、テイルウィンド、ホワイトムーンにブラッククラッカーと、四機もの機体に先頭を取られている。
――いくら何でも、最後の最後でこうも遅れを出すなんて。どうにかして、巻き返したい所だけど――
……と、マリンがそう考えていた最中、彼女はある事に気付く。
――あっ……、そう言えば後半戦で、システム・スパークラーは使ってなかったっけ――
それは、クリムゾンフレイムに搭載された、加速機構の名称だった。
普段よりも遥かに速いスピードを、繰り出すことが可能であるが……機体の負担が大きいために、一レースに一度しか使用出来ない代物だ。
だが――確か後半戦に入ってからと言うものの、一度もまだ使用してはいなかった。
――色々ありすぎたせいで、すっかり忘れちゃってたなんて、私としたことが――
マリンは自分の失態を悔やむも、今はそれよりも――。
――でも、今からだって、全然間に合うわ!――
そして、彼女はコンピューターに、システム・スパークラーの起動を指示する。
コックピットシートは耐G仕様に変形し、バイザーが目元を覆う。
――ふふっ! この私、マリン・フローライトの最後の追い上げ、見せてあげる!――
――――
――あいつら、上手くやるじゃないかよ。さすがだぜ――
リッキーは先を行く機体を見ながら、感嘆の表情を見せる。
彼もまた、良い勝負をしており、現在五位と言え確実に、先を行くレーサー達に迫りつつあった。
ゴールも迫る中、リッキーも頑張りを見せていた。
――確かに厳しいが……それでも逆転出来る可能性はゼロじゃない! まだギリギリ巻き返せれば――
そう、リッキーが息巻いていた、そんな時……。
突然後方から、恐ろしいほどの急速度で迫るレース機。そして、その機体はアッという間に――ワールウィンドを追い越して行った。
バーニアから噴き出す、白熱したエネルギーを放つ機体……それこそ、マリンのクリムゾンフレイムであった。
――あの、嬢ちゃんの奴。何てスピードだ――
リッキーは呆気にとられ、それを眺めていた、が――
――おっと! こうしちゃいられねぇ! 確かに驚きはしたが、俺は俺で先を急がねえとな――
それよりも自分の事を、優先させるべきだ。
あの超速度とまでは行かないが、ワールウィンドの出力もレース機の中では高出力だ。
終盤のラストスパート、機体の最高出力で、リッキーは追い上げを見せる。
――――
そして――フウマ・オイカゼは、ゴールが迫る中、首位を競い熾烈な勝負を行っていた。
もはやゴールまで、すぐ目の前。残る自身の力を、今この刹那に――全て注ぐ。
「……っ! そこだ!」
〈しまったっ!〉
フウマのテイルウィンドと、フィナのアトリ。両者は互角の勝負を繰り広げていたが、ついにフウマが一歩優勢を取った。
テイルウィンドはそれを逃さず、ついにアトリを追い越した。そして――
「さぁ! ――次は二人の番だ!」
ついにフウマは、先頭に立つジンジャーブレッド、そしてホワイトムーンに迫った。
そんな彼の追い上げに、ジンジャーブレッドは……
「ほう……。やはり君は、凄いな……フウマ」
フウマはそれに、へへんと笑う。
「まあね! だって今までにないくらい、頑張ったから」
「……君との出会いはほんの僅かだが、それでも、君の良さは分かっているはずさ。
そのどこまでも真っすぐで、純粋な様子。私の元となった、言わば父親のような存在――オリジナルが現役だった頃も、きっと……君と同じだったのだろうな」
所詮はクローン、クローンである自分には、オリジナルの持つ栄光など持っていない。
当時の活躍はすべて、オリジナルのもの。自分の物では決してないが、それでも――『ジンジャーブレッド』の名を引き継いだ者として……きっと、そうであるだろうと信じていた。
「それが――僕だからね!
だからこそ、貴方との決着も、ここでつけてみせる!
同じ想いを胸に抱くレーサーとして、ジンジャーブレッドさん、僕から貴方への最大の手向けになるはずだからっ!」
自分らしく、本気のぶつかり合いを、フウマはするつもりだった。
しかし――。
〈ですが、私も忘れないで下さいよ!〉
直前に立ちふさがるのは、シロノとその機体、ホワイトムーンであった。
「くっ! シロノもいたんだ!」
〈そう言われると、寂しいですね。……私はフウマの、ライバルですよ?
それに、ジンジャーブレッドさんと決着つけたいのは、私も同じですから〉
今度はテイルウィンドとホワイトムーンの、一騎打ち。
これまではシロノが上手であることが多かったが、今は二人はの戦いは互角。
〈ほう? 二人とも、やるではないか〉
ジンジャーブレッドは、そんなフウマ、シロノに声をかけた。
〈ふふっ、それはもう。私とフウマの、こんな関係も長いですから〉
〈そうか。ライバルと呼べる関係、か。オリジナルが現役だった頃にも、ついに恵まれなかったものだ。……本当に、羨ましいな〉
確かに現役のジンジャーブレッドは、常に圧倒的な勝利を重ね、現役だった短い期間、ついに敗北することはなかった。
それこそがジンジャーブレッドの、伝説たる所以であったが、互角に戦えるようなライバルと呼ばれる存在は、ついに現れなかった。しかし――
「ジンジャーブレッドさんだって、今は僕たちのライバルさ! こうして本気の出し甲斐のあるライバル、シロノに負けないくらいさ!」
フウマ、シロノが勝負をしている中、なおもジンジャーブレッドはトップに立っていた。
――でも、やっぱりジンジャーブレッドさんは、流石だな。シロノと互角でも、それでもジンジャーブレッドさんはまだ上にいる感じさ――
〈ふふっ、私もその想いは、フウマと同じですよ。
もちろん、フウマも私のライバルですが、狙いはあくまで優勝! 悪いですが――先に行かせてもらいますよ!〉
が、やはりシロノもまた――実力は上手。
ついにホワイトムーンはテイルウィンドを振り切り、そしてそのまま一気に、ブラッククラッカーに並んだ。
〈どうですか! これで私も、並んでトップです!〉
「なっ! 僕よりも……先にっ!」
あまりにも突然のシロノの追い上げに、フウマはギョッとした。
〈確かに成長しましたが、やはり、まだまだですね〉
「ぐぬぬ……」
〈……ぐはっ、さすがは……はぁ、『白の貴公子』、だな。――実に、見事だ……うぐっ〉
ジンジャーブレッドに、再び発作――痛みが走る。
――ジンジャーブレッド、さん――
やはりフウマも心配であるが、それよりも……。
――そうだ。こんなになってまで、レーサーとしてあり続けているんだ。
そんなジンジャーブレッドさんに、僕も応えたいんだ。シロノにだって、ライバルとして負けてられない。それに――
フウマは、ミオの言葉もまた、頭に浮かぶ。
――僕のことが、大好きだって……一番応援してくれているって、想ってくれる大切な人がいるんだ。
だから僕も、ここで負けられない!――
シロノが先を行ったが、おかげで先を阻む者はいない。
だから今なら、二人に並べるはずだ!
フウマは機体を駆り、二機へと迫る。
先を行っていると言え、その距離は僅か。今のフウマならそれを埋めるのに、ほんの刹那で十分だった。
テイルウィンドはアッという間に、迫り、そして同じく並んだ。
「これで僕だって――同列一位さ!」
そう、最後の最後で、テイルウィンドは同列と言えついに一位に到達した!
〈……ふふふ、フウマもまた、意地を見せたな〉
相変わらず苦しそうながらも、ジンジャーブレッドも嬉しそうな、そんな様子を見せた。
フウマはそれに、得意げに言い放つ。
「ああ! ――もうすぐゴール、優勝は渡さないよ! 誰にだってね!」
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