テイルウィンド

第十二章 Grand Galaxy Grand prix ［Restart〕

勝負は続く

　こうして、先を飛んでいたクリムゾンフレイム、そしてワールウィンドに合流したのは、その後の事だった。
　――惑星エメラルドのコースは、大渓谷を抜けるまでだ。この星最後の勝負相手があの二人、相手にとっては不足ないとも！――
　最初から戦意全開のフウマは、操縦桿を握る力が強くなる。
　

　……と、そこにマリン、そしてリッキーから通信が入る。
　両方の通信を許可すると、同時に二人が通信画面に映し出される。
〈おう！　まさかフウマまでここに来るとは、早いじゃないか！〉
〈フウマくん、スカイガーデン・ポリスでは色々あったわね。
　また会えて、嬉しいわ！〉
　二人とも顔見知り、フウマもまた、挨拶を返す。
「まあね。リッキーにマリンさんも、ここで相手になるなんてさ」

　
　三機が飛行する大渓谷、フウマも加わった事により、先頭争いは一層熾烈を極める。
　速度の速いクリムゾンフレイムと、ワールウィンドであるものの、曲線が多く障害物もよけながらのこの大渓谷では、フウマのテイルウィンドの機動力がものを言う。
　しかし……。
〈ふっ！　前半戦では上手く行ったみたいだけど、今度はそうは行かないわ！
　渓谷でのレース……あれから貴方の動きは学んだんだからね〉
　前方のクリムゾンフレイムは、立ち塞がるように先を飛行する。
　ディフェンスの動きも、以前よりも上がっている。
　前回フウマを一度相手にして、動き学んでいた。彼もずっと手ごわく、感じていた。


　しかし、リッキーもリッキーで……。
〈なら、そっちがヨロシクやってる隙に、俺は――〉
　と、ワールウィンドは二機をよそに、先に行き、追い抜いた。
〈……しまったっ！〉
「くっ！　リッキーの奴、抜け駆けをして！」
　今度は、ディフェンスをかなぐり捨てて、マリンはオフェンスへと移った。
「ったく、三つ巴って……大変だな」
　先頭争いを繰り返すのは、リッキーとマリン、しばらく勝負をしているものの、一度も二人の先に立てないでいた。
　――やるね、二人とも。……本当に――
　だが、テイルウィンドも、邪魔な木々をかいくぐり、良い勝負をしていた。


〈再び、もらい！〉
　再度の、マリンの追い上げ。隙を見つけて真下から追い抜く。
〈やるじゃないかよ、マリン〉
〈あはは！　下から失礼させてもらうわよ。それじゃあね〉
〈……ちぃっ〉
　リッキーは追い抜かれ、悔しそうな様子を見せる。
　目の前には急カーブが迫り、クリムゾンフレイム、そして動揺しながらもワールウィンドもカーブを曲がる。　
　だが、その時更に――
「続けて僕も、行かせてもらう！」
　この事に乗じ、続けてフウマは、テイルウィンドをよりギリギリにカーブ。
　そこでワールウィンドを追い越し、先を越した。
〈フウマの奴までか！　これは、してやられたな〉
「マリンに追い抜かれて、気持ちを切り替えるのが少し遅かったね！」　
　……と、そう考えていた時、目の前の渓谷の先が、大きく開けているのが見えた。
　――もう出口か。ちっ、テイルウィンドが有利なここで、勝負をつけたかった所だけど――
　

　まもなく大渓谷を抜ける。だが、三機による勝負は、まだ続く……。