177 / 204
第十二章 Grand Galaxy Grand prix [Restart〕
再び、レースの始まり
しおりを挟む
G3レースが再開し、先頭を行くのはジンジャーブレッドのブラッククラッカー。
やはりレース一の優勝候補は伊達ではない。惑星エメラルドの濃厚な大気の流れに乗り、みるみるうちにリードを伸ばす。
その次がシロノのホワイトムーンと、そして四位であったマリンのクリムゾンフレイムが、開始早々三位に躍り出た。
対して、フウマはと言うと――。
――やっぱり、これは仕方ないか――
テイルウィンドはスタートダッシュの早い何機もの機体に、早々越されてしまった。
クリムゾンフレイムに、リッキーのワールウィンドそして、他数機の、機体にも。
――まぁ、仕切り直しと言う事だから、仕方ないかも。何、また追い越して見せるさ――
と、そうフウマが再び盛り返そうとした中……。
彼のテイルウィンドに並ぶ、鳥のような黄金の機体――アトリ。
通信が入って来ており、相手はそのパイロットである、フィナからだ。
〈また会いましたね、フウマさん〉
「ああ。今回は、一対一って訳か」
彼女の目つきは、まさに……本気の目をしていた。
〈お姉ちゃんはいませんが、私一人でもやれるって――見せてあげますから!〉
姉のティナはもはやおらず、今は自分一人。ここにいない
ティナの分まで、全力を尽くすと……そう決めていた。
それにフウマもまた、応える。
「成程、分かった。
……でも、僕だって! まだ先に行かないといけないんだ。悪いけど、一気に決着をつけさせてもらうよ!」
ようやく気流に乗り、速度も安定し出したテイルウィンド。
テイルウィンドと、そしてアトリ、開始早々二機による戦いが、切って落とされた。
――――
一方、フウマ達の幾らか先では。
――はっ! 俺と同じ、加速型の機体ってか!――
リッキーはすぐ前を飛行する、深紅の機体……クリムゾンフレイムへと肉薄する。
先ほどのスタートダッシュで、順位を上げた二人。可能であれば、この順位をキープしさらに、まだ先を行くシロノとジンジャーブレッドを追い抜ければ、と考えていた。
――だがまずは、アイツからだな。ワールウィンドの実力を、舐めるなよ!――
リッキーの乗るワールウィンドは、更に速度を上げるも、クリムゾンフレイムも負けずに高速度で先を飛行する。
高速で飛行する二機に迫るのは、巨大な緑の壁。
そこは大きく地面が盛り上がった高地となり、内部には複雑に入り組んだ大渓谷が走っていた。
二機は自然に覆われた大渓谷に突入し、勝負を続行する。
木々や草に遮られながらも、ワールウィンドとクリムゾンフレイムは……渓谷の中で対峙する事になる。
――――
大渓谷の内部、辛うじてワールウィンドよりも先を行くクリムゾンフレイム。
だが、パイロットのマリンはと言うと……
――全く、こんな狭い所……面倒だわね!――
つい舌打ちをしながら、彼女は機体の操作に集中する。
……あちこちから草木が生え、場合によっては行く手をさえぎる。マリンにとって厄介極まりなかった。
真っすぐ飛行するのも、困難である中、クリムゾンフレイムは飛行するも……
クリムゾンフレイムの横に、リッキーのワールウィンドが並んだ。
――くっ! 向こうもやるわね!――
向こうも加速重視の機体ではあるようだが、機動性は若干ワールウィンドが上のようだ。
草木に覆われた渓谷の中で、二機は拮抗した戦いを繰り広げる。
互いに譲らずの勝負を続ける、マリンとリッキー。
だが――。
突如クリムゾンフレイム付近の草木から、一斉に鳥の群れが飛び立った。
――なっ!?――
いきなりの出来事に、マリンは機体操作をの手を緩めてしまった。
その隙に……横のワールウィンドがクリムゾンフレイムを追い抜いた
――しまった、してやられたわね!――
マリンは悔し気な表情を、一瞬見せる。だがすぐに気を取り直し、再集中する。
――でも、私だって負けてられないわね。ここは――
……と、マリンが巻き返そうとした、矢先だった。
後方から接近する、一機の機体。
彼女はそれに見覚えがあった。
――あれは……フウマくんの、テイルウィンドじゃない――
後ろから現れ、追いついて来たのは新緑色のシャトル機……テイルウィンド。
――ふっ! 早速やるじゃないの! いいわ。リッキーともども、フウマくんも、改めて相手にしてあげる!――
前半戦の事もある、ここで改めて再勝負……。マリンの闘志は今、燃えていた。
――――
時間は少し遡り、ジャングル上空にて。
遮るものはない空の上でフウマとフィナは、各々の愛機で勝負を繰り広げていた。
――ふっ、なかなかやるじゃないかよ! けどその分……面白味があるさ!――
機体加速性には、テイルウィンドに分がある。だが……フィナのアトリは、持ち前の機動性を活かし、上手く気流に乗り、加速性の差を埋めている。
一進一退の攻防戦を行う、両機。
テイルウィンドが一瞬、追い抜いたかと思うと、次の瞬間にはアトリが逆転……その繰り返しだ。
前半戦の時よりも、格段に動きそして飛び方が、上がっていた。
これには思わず、フウマは言った。
「やるね、フィナ。正直一対一なら、問題ないって思ってたけど……凄いや」
通信画面のフィナは、にこっと微笑む。
レースの場でなければ、普通の可憐な女の子……そんな笑みではあるものの、ここでは意味合いは微妙に異なる。
〈ふふっ、お姉ちゃんの分まで、頑張らないといけませんから。……楽に勝てるとは、思わないで下さいよ!〉
高速飛行を繰り広げる中、二機の目の前に一機の、別の機体が立ち塞がるも。
――邪魔だよ!――
最初のスタートダッシュで差を付けたようだが、それくらいが限界だった。
テイルウィンド、そしてアトリもその機体を追い抜いて行った。
――ん、あれは――
目の前に見えるのは、立ちふさがる緑の絶壁。あちこちに裂け目があり、それらは壁の向こうに通じる渓谷部へと通じる。
「さて、と……、ここまでいい勝負だったね、フィナ」
フウマはそう、フィナに話した。
〈まあね。でも――勝負はまだ、これからです〉
戦意はいまだ、衰えることのない彼女。……しかし。
「残念だけど、フィナとはここまで、かな」
少し残念そうに、フウマが言った。
フィナはこの言葉に訳が分からないようだ。
〈……? どう言うことかしら〉
「ふむ、どうやらまだ分かんないみたいだね。なら次回に備えて――勉強するんだね!」
〈一体何を…………えっ!?〉
テイルウィンドとアトリが絶壁に接近した、その時……。
突然アトリの動きが、格段に遅くなった。
その隙にテイルウィンドは一気に追い抜いて、差をつけて行った。
〈そんな! ……どうして〉
動揺するフィナに、フウマは答える。
「気流に乗ってたみたいだけど、ああして大きな崖があると、近くで対流して、気流が停滞するんだ。
悪いけど僕は、先に行かせてもらうよ!」
〈うっ……気付かなかったな。でも、まだ勝負はこれからですから、すぐに追いついてみせます〉
勝負を諦めないフィナを残し、フウタが乗るテイルウィンドは先に、大渓谷へと突入した。
やはりレース一の優勝候補は伊達ではない。惑星エメラルドの濃厚な大気の流れに乗り、みるみるうちにリードを伸ばす。
その次がシロノのホワイトムーンと、そして四位であったマリンのクリムゾンフレイムが、開始早々三位に躍り出た。
対して、フウマはと言うと――。
――やっぱり、これは仕方ないか――
テイルウィンドはスタートダッシュの早い何機もの機体に、早々越されてしまった。
クリムゾンフレイムに、リッキーのワールウィンドそして、他数機の、機体にも。
――まぁ、仕切り直しと言う事だから、仕方ないかも。何、また追い越して見せるさ――
と、そうフウマが再び盛り返そうとした中……。
彼のテイルウィンドに並ぶ、鳥のような黄金の機体――アトリ。
通信が入って来ており、相手はそのパイロットである、フィナからだ。
〈また会いましたね、フウマさん〉
「ああ。今回は、一対一って訳か」
彼女の目つきは、まさに……本気の目をしていた。
〈お姉ちゃんはいませんが、私一人でもやれるって――見せてあげますから!〉
姉のティナはもはやおらず、今は自分一人。ここにいない
ティナの分まで、全力を尽くすと……そう決めていた。
それにフウマもまた、応える。
「成程、分かった。
……でも、僕だって! まだ先に行かないといけないんだ。悪いけど、一気に決着をつけさせてもらうよ!」
ようやく気流に乗り、速度も安定し出したテイルウィンド。
テイルウィンドと、そしてアトリ、開始早々二機による戦いが、切って落とされた。
――――
一方、フウマ達の幾らか先では。
――はっ! 俺と同じ、加速型の機体ってか!――
リッキーはすぐ前を飛行する、深紅の機体……クリムゾンフレイムへと肉薄する。
先ほどのスタートダッシュで、順位を上げた二人。可能であれば、この順位をキープしさらに、まだ先を行くシロノとジンジャーブレッドを追い抜ければ、と考えていた。
――だがまずは、アイツからだな。ワールウィンドの実力を、舐めるなよ!――
リッキーの乗るワールウィンドは、更に速度を上げるも、クリムゾンフレイムも負けずに高速度で先を飛行する。
高速で飛行する二機に迫るのは、巨大な緑の壁。
そこは大きく地面が盛り上がった高地となり、内部には複雑に入り組んだ大渓谷が走っていた。
二機は自然に覆われた大渓谷に突入し、勝負を続行する。
木々や草に遮られながらも、ワールウィンドとクリムゾンフレイムは……渓谷の中で対峙する事になる。
――――
大渓谷の内部、辛うじてワールウィンドよりも先を行くクリムゾンフレイム。
だが、パイロットのマリンはと言うと……
――全く、こんな狭い所……面倒だわね!――
つい舌打ちをしながら、彼女は機体の操作に集中する。
……あちこちから草木が生え、場合によっては行く手をさえぎる。マリンにとって厄介極まりなかった。
真っすぐ飛行するのも、困難である中、クリムゾンフレイムは飛行するも……
クリムゾンフレイムの横に、リッキーのワールウィンドが並んだ。
――くっ! 向こうもやるわね!――
向こうも加速重視の機体ではあるようだが、機動性は若干ワールウィンドが上のようだ。
草木に覆われた渓谷の中で、二機は拮抗した戦いを繰り広げる。
互いに譲らずの勝負を続ける、マリンとリッキー。
だが――。
突如クリムゾンフレイム付近の草木から、一斉に鳥の群れが飛び立った。
――なっ!?――
いきなりの出来事に、マリンは機体操作をの手を緩めてしまった。
その隙に……横のワールウィンドがクリムゾンフレイムを追い抜いた
――しまった、してやられたわね!――
マリンは悔し気な表情を、一瞬見せる。だがすぐに気を取り直し、再集中する。
――でも、私だって負けてられないわね。ここは――
……と、マリンが巻き返そうとした、矢先だった。
後方から接近する、一機の機体。
彼女はそれに見覚えがあった。
――あれは……フウマくんの、テイルウィンドじゃない――
後ろから現れ、追いついて来たのは新緑色のシャトル機……テイルウィンド。
――ふっ! 早速やるじゃないの! いいわ。リッキーともども、フウマくんも、改めて相手にしてあげる!――
前半戦の事もある、ここで改めて再勝負……。マリンの闘志は今、燃えていた。
――――
時間は少し遡り、ジャングル上空にて。
遮るものはない空の上でフウマとフィナは、各々の愛機で勝負を繰り広げていた。
――ふっ、なかなかやるじゃないかよ! けどその分……面白味があるさ!――
機体加速性には、テイルウィンドに分がある。だが……フィナのアトリは、持ち前の機動性を活かし、上手く気流に乗り、加速性の差を埋めている。
一進一退の攻防戦を行う、両機。
テイルウィンドが一瞬、追い抜いたかと思うと、次の瞬間にはアトリが逆転……その繰り返しだ。
前半戦の時よりも、格段に動きそして飛び方が、上がっていた。
これには思わず、フウマは言った。
「やるね、フィナ。正直一対一なら、問題ないって思ってたけど……凄いや」
通信画面のフィナは、にこっと微笑む。
レースの場でなければ、普通の可憐な女の子……そんな笑みではあるものの、ここでは意味合いは微妙に異なる。
〈ふふっ、お姉ちゃんの分まで、頑張らないといけませんから。……楽に勝てるとは、思わないで下さいよ!〉
高速飛行を繰り広げる中、二機の目の前に一機の、別の機体が立ち塞がるも。
――邪魔だよ!――
最初のスタートダッシュで差を付けたようだが、それくらいが限界だった。
テイルウィンド、そしてアトリもその機体を追い抜いて行った。
――ん、あれは――
目の前に見えるのは、立ちふさがる緑の絶壁。あちこちに裂け目があり、それらは壁の向こうに通じる渓谷部へと通じる。
「さて、と……、ここまでいい勝負だったね、フィナ」
フウマはそう、フィナに話した。
〈まあね。でも――勝負はまだ、これからです〉
戦意はいまだ、衰えることのない彼女。……しかし。
「残念だけど、フィナとはここまで、かな」
少し残念そうに、フウマが言った。
フィナはこの言葉に訳が分からないようだ。
〈……? どう言うことかしら〉
「ふむ、どうやらまだ分かんないみたいだね。なら次回に備えて――勉強するんだね!」
〈一体何を…………えっ!?〉
テイルウィンドとアトリが絶壁に接近した、その時……。
突然アトリの動きが、格段に遅くなった。
その隙にテイルウィンドは一気に追い抜いて、差をつけて行った。
〈そんな! ……どうして〉
動揺するフィナに、フウマは答える。
「気流に乗ってたみたいだけど、ああして大きな崖があると、近くで対流して、気流が停滞するんだ。
悪いけど僕は、先に行かせてもらうよ!」
〈うっ……気付かなかったな。でも、まだ勝負はこれからですから、すぐに追いついてみせます〉
勝負を諦めないフィナを残し、フウタが乗るテイルウィンドは先に、大渓谷へと突入した。
0
お気に入りに追加
11
あなたにおすすめの小説
タイムワープ艦隊2024
山本 双六
SF
太平洋を横断する日本機動部隊。この日本があるのは、大東亜(太平洋)戦争に勝利したことである。そんな日本が勝った理由は、ある機動部隊が来たことであるらしい。人呼んで「神の機動部隊」である。
この世界では、太平洋戦争で日本が勝った世界戦で書いています。(毎回、太平洋戦争系が日本ばかり勝っ世界線ですいません)逆ファイナルカウントダウンと考えてもらえればいいかと思います。只今、続編も同時並行で書いています!お楽しみに!
[恥辱]りみの強制おむつ生活
rei
大衆娯楽
中学三年生になる主人公倉持りみが集会中にお漏らしをしてしまい、おむつを当てられる。
保健室の先生におむつを当ててもらうようにお願い、クラスメイトの前でおむつ着用宣言、お漏らしで小学一年生へ落第など恥辱にあふれた作品です。
政略結婚で結ばれた夫がメイドばかり優先するので、全部捨てさせてもらいます。
hana
恋愛
政略結婚で結ばれた夫は、いつも私ではなくメイドの彼女を優先する。
明らかに関係を持っているのに「彼女とは何もない」と言い張る夫。
メイドの方は私に「彼と別れて」と言いにくる始末。
もうこんな日々にはうんざりです、全部捨てさせてもらいます。
婚約者に消えろと言われたので湖に飛び込んだら、気づけば三年が経っていました。
束原ミヤコ
恋愛
公爵令嬢シャロンは、王太子オリバーの婚約者に選ばれてから、厳しい王妃教育に耐えていた。
だが、十六歳になり貴族学園に入学すると、オリバーはすでに子爵令嬢エミリアと浮気をしていた。
そしてある冬のこと。オリバーに「私の為に消えろ」というような意味のことを告げられる。
全てを諦めたシャロンは、精霊の湖と呼ばれている学園の裏庭にある湖に飛び込んだ。
気づくと、見知らぬ場所に寝かされていた。
そこにはかつて、病弱で体の小さかった辺境伯家の息子アダムがいた。
すっかり立派になったアダムは「あれから三年、君は目覚めなかった」と言った――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる