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第十章 Grand Galaxy Grand prix [Action!〕
勝ち取る勝利
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――――
ブラッククラッカーを駆る、ジンジャーブレッド。
もはや、ラストスパートの終盤――彼はトップを全力で死守する。
――ふっ、これでこそレースだな。……ここまで全力を出せる相手がいるとは、良いものだ――
確かに有利ではあるものの、やはり相手が相手だ。それに先ほどは圧倒していたが、ここまで来ればフウマ、シロノは着々とブラッククラッカーの機動に、慣れつつあった。
そんな二人を相手には、半端な実力では足りはしない。
後ほんの僅かの距離だが、それでも、全身全霊を賭けなければなならいくらいに、ジンジャーブレッドにとっても強敵だった。
勿論、負けるつもりはない。
かつて、無敗を誇ったジンジャーブレッドとしてのプライドと、アイデンティティを守るため。……ではあったが、それはもはや二の次である。
それよりも今は、レーサーなら誰もが持つ、ただ早く飛ぼうと言う意思そして――純粋にレースを楽しむと言う、思いが強い。
――ああ、そうだ。こうして飛ぶことこそ、本当に、私が求めていた事なのだ。
ただレーサーとして、純粋に自由に楽しみ、全力で飛ぶことこそが、本当の在り方だと分かった。……今更、すぎるがな――
それは先ほど、フウマも話していた事でもあった。ジンジャーブレッドは改めてそれを、身に感じる。
もはや量子化次元加速ドライブを、使う必要もない。自分の好きなように、レーサーとして本気のぶつかり合いをすればいい。
だが、再び発作が起こったのは、そんな時だった。
「うっ! ……ぐあっ!」
身体の全神経に走る痛み、とりわけ、頭に走る痛みはとりわけ酷い激痛である。
「……かはっ、はぁ……はぁ……」
今まで発作が襲わなかった分、その痛みは強く増していた。これでは……もはや機体操作も難しい。
――しまった、これでは……ブラッククラッカーの動きが――
――――
対するシロノも、フウマそしてジンジャーブレッドとの決戦に、全力を尽くしていた。
――やはりこれ以上は、厳しいですか――
ここまで追いつき、拮抗した勝負を繰り広げるものの、それでもジンジャーブレッドを抜き、トップに立つのは厳しい所があった。
それに――テイルウィンド、そしてフウマも。同時に相手しているのもあるが、やはり手強い相手だ。
思った通り、以前よりも成長している。
――ふふっ。それでこそ、私のライバルですね――
彼の成長に対し、少しシロノは微笑ましく思った。
本当ならそんな暇など無いだろうが、それでも、そう思わずには……いられない。
ホワイトムーンは、テイルウィンドと並び熱戦を繰り広げる。
そして、互いに競いながら――両機が目指すのは、ブラッククラッカーが君臨するトップの座。
ゴールまでは一刻の猶予もない、残る力を出し切り、そのトップをジンジャーブレッドから掴み取ってみせる……。そうシロノは強く願う。
――フウマも、ジンジャーブレッドも、どちらとも強敵です。……でも、だからこそ、張り合い甲斐がありますが――
燃料こそ多く消費したが、テイルウィンドみたいに無茶な勝負が少なかったためか、機体やその機構そのものには、全く損傷はなく消耗も僅かであった。
だからこそ、フウマ以上に自身の機体のポテンシャルを、大いに発揮出来る訳なのだが……それでも、彼のテイルウィンドはなおも追いすがり、ジンジャーブレッドのブラッククラッカーには、未だ追い付けていない。
――本当に……これだからレースは面白い。しかし、私だって――
そんな時……前方を飛行していたブラッククラッカーの動きが、一気に鈍くなった。
機体は殆ど動かなくなったどころか、若干不安定なぐらつきを見せ、速度までもが低下する。
――これは、ブラッククラッカーにも不具合が?――
シロノはその異変に、疑問を抱いた。……が、これは絶好の機会だ。
――いくらジンジャーブレッドでも、機体に無茶をさせすぎたみたいですね。残念ですが……ここで越させてもらいますよ!――
今なら相手も隙だらけだ、シロノはついに決心した。
――――
ブラッククラッカーの異変は、フウマも察知した。
加えて、ライバルであるシロノがこの機会を逃さず、一気に行動に移ったことも。
……当然、フウマもそれを逃す手はない。
――悪いね、ジンジャーブレッド。本当なら正々堂々、実力で打ち破りたかったけど……こっちだって満身創痍なんだ。
所謂、運も実力の内ってことさ――
ホワイトムーンにほんの僅か遅れたが、フウマが乗るテイルウィンドもそれに続き、ブラッククラッカーへと迫る。
そして――
――ホワイトムーンとテイルウィンドは、ブラッククラッカーを追い抜いた。
もちろん、これはジンジャーブレッド、もしくはブラッククラッカーのどちらかに不調があったからこそだ。
だが、それでも……ここまで来れたのはシロノ、そしてフウマの実力、頑張りがあったからである。
それは十分に――誇るべき事だ。
フウマは大いに喜ぶ。
――やった! ついに僕は、ジンジャーブレッドに勝ったんだ!――
後部ディスプレイには、追い抜いたブラッククラッカー。それはまさしく、あのジンジャーブレッドに上回った証であった。
もちろん正確には勝ったと言えず、ただ追い越しただけにすぎない。
しかしそれでも、これはまさしく快挙だ。
ホワイトムーン、テイルウィンドの両機と、パイロットであるシロノとフウマ。
二人はついにジンジャーブレッドによる無敗の伝説を……ついに打ち破ったのだ。
ブラッククラッカーを駆る、ジンジャーブレッド。
もはや、ラストスパートの終盤――彼はトップを全力で死守する。
――ふっ、これでこそレースだな。……ここまで全力を出せる相手がいるとは、良いものだ――
確かに有利ではあるものの、やはり相手が相手だ。それに先ほどは圧倒していたが、ここまで来ればフウマ、シロノは着々とブラッククラッカーの機動に、慣れつつあった。
そんな二人を相手には、半端な実力では足りはしない。
後ほんの僅かの距離だが、それでも、全身全霊を賭けなければなならいくらいに、ジンジャーブレッドにとっても強敵だった。
勿論、負けるつもりはない。
かつて、無敗を誇ったジンジャーブレッドとしてのプライドと、アイデンティティを守るため。……ではあったが、それはもはや二の次である。
それよりも今は、レーサーなら誰もが持つ、ただ早く飛ぼうと言う意思そして――純粋にレースを楽しむと言う、思いが強い。
――ああ、そうだ。こうして飛ぶことこそ、本当に、私が求めていた事なのだ。
ただレーサーとして、純粋に自由に楽しみ、全力で飛ぶことこそが、本当の在り方だと分かった。……今更、すぎるがな――
それは先ほど、フウマも話していた事でもあった。ジンジャーブレッドは改めてそれを、身に感じる。
もはや量子化次元加速ドライブを、使う必要もない。自分の好きなように、レーサーとして本気のぶつかり合いをすればいい。
だが、再び発作が起こったのは、そんな時だった。
「うっ! ……ぐあっ!」
身体の全神経に走る痛み、とりわけ、頭に走る痛みはとりわけ酷い激痛である。
「……かはっ、はぁ……はぁ……」
今まで発作が襲わなかった分、その痛みは強く増していた。これでは……もはや機体操作も難しい。
――しまった、これでは……ブラッククラッカーの動きが――
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対するシロノも、フウマそしてジンジャーブレッドとの決戦に、全力を尽くしていた。
――やはりこれ以上は、厳しいですか――
ここまで追いつき、拮抗した勝負を繰り広げるものの、それでもジンジャーブレッドを抜き、トップに立つのは厳しい所があった。
それに――テイルウィンド、そしてフウマも。同時に相手しているのもあるが、やはり手強い相手だ。
思った通り、以前よりも成長している。
――ふふっ。それでこそ、私のライバルですね――
彼の成長に対し、少しシロノは微笑ましく思った。
本当ならそんな暇など無いだろうが、それでも、そう思わずには……いられない。
ホワイトムーンは、テイルウィンドと並び熱戦を繰り広げる。
そして、互いに競いながら――両機が目指すのは、ブラッククラッカーが君臨するトップの座。
ゴールまでは一刻の猶予もない、残る力を出し切り、そのトップをジンジャーブレッドから掴み取ってみせる……。そうシロノは強く願う。
――フウマも、ジンジャーブレッドも、どちらとも強敵です。……でも、だからこそ、張り合い甲斐がありますが――
燃料こそ多く消費したが、テイルウィンドみたいに無茶な勝負が少なかったためか、機体やその機構そのものには、全く損傷はなく消耗も僅かであった。
だからこそ、フウマ以上に自身の機体のポテンシャルを、大いに発揮出来る訳なのだが……それでも、彼のテイルウィンドはなおも追いすがり、ジンジャーブレッドのブラッククラッカーには、未だ追い付けていない。
――本当に……これだからレースは面白い。しかし、私だって――
そんな時……前方を飛行していたブラッククラッカーの動きが、一気に鈍くなった。
機体は殆ど動かなくなったどころか、若干不安定なぐらつきを見せ、速度までもが低下する。
――これは、ブラッククラッカーにも不具合が?――
シロノはその異変に、疑問を抱いた。……が、これは絶好の機会だ。
――いくらジンジャーブレッドでも、機体に無茶をさせすぎたみたいですね。残念ですが……ここで越させてもらいますよ!――
今なら相手も隙だらけだ、シロノはついに決心した。
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ブラッククラッカーの異変は、フウマも察知した。
加えて、ライバルであるシロノがこの機会を逃さず、一気に行動に移ったことも。
……当然、フウマもそれを逃す手はない。
――悪いね、ジンジャーブレッド。本当なら正々堂々、実力で打ち破りたかったけど……こっちだって満身創痍なんだ。
所謂、運も実力の内ってことさ――
ホワイトムーンにほんの僅か遅れたが、フウマが乗るテイルウィンドもそれに続き、ブラッククラッカーへと迫る。
そして――
――ホワイトムーンとテイルウィンドは、ブラッククラッカーを追い抜いた。
もちろん、これはジンジャーブレッド、もしくはブラッククラッカーのどちらかに不調があったからこそだ。
だが、それでも……ここまで来れたのはシロノ、そしてフウマの実力、頑張りがあったからである。
それは十分に――誇るべき事だ。
フウマは大いに喜ぶ。
――やった! ついに僕は、ジンジャーブレッドに勝ったんだ!――
後部ディスプレイには、追い抜いたブラッククラッカー。それはまさしく、あのジンジャーブレッドに上回った証であった。
もちろん正確には勝ったと言えず、ただ追い越しただけにすぎない。
しかしそれでも、これはまさしく快挙だ。
ホワイトムーン、テイルウィンドの両機と、パイロットであるシロノとフウマ。
二人はついにジンジャーブレッドによる無敗の伝説を……ついに打ち破ったのだ。
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