テイルウィンド

双子烏丸

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幕間 遭遇

脱出

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 ブラッククラッカーは、海賊船の艦隊を内部攪乱しながら飛び回る。
 その様子はテイルウィンドからも見て取れた。
「あれは――ジンジャーブレッドの、ブラッククラッカーじゃないかな?」
 システム基盤に繋げた小型コンピュータのコンソールを操作しながら、ミオはフウマに尋ねる。先ほどからカタカタと、小さいタップ音が響く。
「うん。でもまさか、僕を助けてくれるなんて。……ところで、そっちはそろそろ復旧しそうかな?」
「……もう少しで終わりそう。後はここを、こうすれば……よしっ!」
 ミオが最後にコンソールのキーを打ち終えると、動力の稼働が再び回復した。
 これにはフウマも喜ぶ。
「有難う、ミオ! 相手も混乱しているみたいだし、これなら――」
 フウマはテイルウィンドのブースターを起動させ、ブラッククラッカーのかく乱によって出来た包囲の隙を突いて、無事に脱出する。
 テイルウィンドは難なく、宇宙海賊から逃げ出した。
 それを見届けたブラッククラッカーも、海賊への妨害を止め、テイルウィンドと同じ方向へと消えた。




 ――――
 それを見届けたサイクロプスは、別段悔しがる様子もなく、清々しいほどの微笑みを見せた。
「ふっ……上手く逃げたではないか」
 だが、代理人の方はと言えば、そうではなかった。
 彼は顔を真っ赤にして、サイクロプスに言い寄る。とは言っても、つい数分前の怯えぶりを見れば、滑稽の極みではあったが。
「お前は、何をやっているんだ! 我が社は腕の良い宇宙海賊と聞いたから、依頼したのだぞ。
 なのに、なのに……お前たちはずっと『たった一機さえ』捕獲や足止めが出来ていない!」
 この宙域は、テイルウィンド、ホワイトムーン、ワールウィンド三機が通過する以前に、他から訪れるG3レース参加の機体も多く通過していた。
 サイクロプス率いるクロスメタル海賊団の依頼は、これらの機体と選手を捕獲か足止め……最悪、撃破してでも、一人でも多くG3レースに参加させない事だった。
 

 それなのに関わらず、今まで一機も、海賊団はこの宙域を通過するレース機体の足止めは出来ず、何故か全て失敗に終わっていた。
 依頼を頼んだ代理人の怒りも、当然と言える。
「これは悪いな、我々海賊は、貨物船や客船、果ては軍艦などは相手にするが、たった一機の素早い小型機を相手するのには、慣れていなくてな。
 加えて、今は艦載機さえも全て整備中だ。……運が悪かったと思い、諦めてもらいたいものだ」
 サイクロプスは軽い苦笑いを向けた。
 すると代理人が、ある事を悟る。
「貴様……! さては初めから、そのつもりで!」
 だがサイクロプスは、その怒りを受け流す。
「さぁ? 私は全く、存じ上げない所だな」
「――くっ! 私はもう本部へ帰らせてもらう! お前たちの事も……会長に直接伝えておくぞ!」
 そう代理人は吐き捨て、ブリッジを去った。
 



 代理人の乗るシャトルが飛び立ち、去っていくのを見届けると、サイクロプスは一息つく。
「やっと消えてくれたか……。もうこんな真似は、これっきりにしたいものだ」
 安堵を見せているのは、他のクルーも同じだった。
「本当に嫌な男だったもんね。それに引き換えフウマは、やっぱり良い子ね。
 でも……キャプテン? どうしてこんな依頼を受けたんです? 最初から協力を拒否すれば良かったのに?」
「ふっ、下手に断れば他の海賊連中に依頼するだけだ。そうなれば……私たちみたいに、手加減すると思うか? フウマ達レーサーを、無事に開催地に向かわせるには、この方法がいいだろう?」
「あっ! それもそうですね」
 やはりクロスメタル海賊団とサイクロプスは、一芝居をしたにすぎなかったわけだ。
 彼女は不機嫌に呟く。
「……全く! せっかくのレースを、穢す真似をするとは許せん連中だ。何を狙っているか知らないが、気に入らないな」
 彼らがそんな様子のブリッジに、今度はまた別の人物が入ってきた。
 しかも――二人。
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