テイルウィンド

双子烏丸

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幕間 遭遇

襲来

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 ―――― 
「……くそっ! 何で……何で、こんな事にっ!」
 コックピットには、強い緊張感が漂い、緊迫した様子のフウマが操縦桿を握る。
 激しい操縦のせいで、まるでレースの最中かそれ以上に、強く揺れ、加速も強い。
「ミオ! そっちは大丈夫!? 操縦が荒くて、辛いかもしれないけど……」
「私は、まだ平気……。それよりフウマ、早く逃げないと!」
 そう言った途端、真横に強い光線の輝きが、横切るのがディスプレイに見える。


 同時に機体も、強く揺れ動く。
「直撃は……していないみたい。けど、時間の問題かも」
 後ろに見えるのは、何隻もの宇宙船の姿……。大きさはさほどではないが、数が複数存在し、小惑星の陰に隠れながら迫り、現れては攻撃を加えている。
 宇宙船は駆逐艦並みの装備を持っており、どう見てもまともな連中だとは、到底思えない。
 つまり今、テイルウィンドは、宇宙海賊の攻撃にさらされていた。
 何故こんな事になったのかと言えば……それは少し前に遡る。


 
 テイルウィンド、ホワイトムーン、ワールウィンドの三機は、共にG3レースの開催地へと向かっていた。
 エアケルトゥングを発ち、二度のワープを経て目的地へと行く予定であり、一度目のワープは問題なく上手く行った。
 だが……二度目のワープへと向かう道中、小惑星帯で待ち構えていた宇宙海賊の艦隊に襲撃された。
 ホワイトムーンとワールウィンドは上手く逃れたらしいが、不運なことにテイルウィンドは、ミオが機体システムの調整を行っている最中だった。
 急いで中断して逃れようとしたが、逃げ遅れて海賊の追跡を、一手に引き受ける結果となってしまった。
 この航路は、小型船くらいしか通りはしない、例え海賊行為をしても利益は少ないはずだが…………一体なぜここにいるのか?


 
 しかし原因を考えようと、今の危機は変わらない。
 今は、手を動かし、機体を動かし、海賊の追跡を逃れるしか手はない。
 後ろから迫るのは二……いや三隻、迫って来ている。
 幸い、小惑星のせいで上手く射線から逃れており、相手の狙いも機体の破壊よりは、動力部を狙い航行不能になるのを狙っているようだ。
 が、下手に動力系統に直撃を許せば、航行不能に陥る。そうなれば……G3レースに間に合うことは、なくなってしまう。
 ――これも、レースの妨害が目的か。誰の仕業か知らないけど……気に入らないな!――
 フウマとテイルウィンドの善戦により、少しずつだが海賊船との間には距離が開いている。
 小惑星帯さえ抜ければ、すぐに次のワープ宙域だ。そこはあの規模の海賊船は、通過不能になっている。
 そこまで行ければ――。そうフウマが思っていた時、それは起こった。


 突如、進行方向先の小惑星の陰から、一隻の海賊船が現れ行く手を塞いだ。
 今まで海賊から上手く逃ていたつもりだったが、これも相手の戦略の一つ、待ち伏せして挟み撃ちする魂胆だった、
 まんまとしてやられた、フウマは悔し気に舌打ちする。
 ――初めから、それが狙いだったのか! やってくれる! けどまだ――
 相手の海賊船は、レース機より十分に大きい。そして、その分機動性は小さい。
 テイルウィンドの性能なら、まだ逃げ切れる余地がある。フウマは回避運動を取り、前方の海賊船を避けようとした。
 だが、トラブルは追い打ちをかける。
〈警告! 急激な姿勢制御による、深刻なシステムエラーが発生しました。安全の為、直ちに緊急静止運動を行います〉
 その音声とともに、急に速度が低下し、停止した。
 途端に動力、出力系統も停止し、メーターも稼働率は0%を示している。
「……なっ!?」
 フウマは唖然とした。
 そう、海賊の襲撃により、作業中だったシステム調整を、無理やり中断した事が原因だった。
 無理な中断のせいで、中途半端なシステムに僅かな歪みが入った。
 やがて、度重なる操縦に耐えきれなった結果が、最悪に間の悪い、この誤作動だ。
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