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第八章 本番へ――
復活
しおりを挟む「ならそろそろ、人工重力を入れようか。あまりフワフワした感覚なままなのは、慣れてないと気持ち悪いだろ?」
「待って! せっかくだから、少しだけ……」
そう言いながら、ミオは身体のベルトを外して行く。
しかしフウマはちょっと、心配そうだった。
「本当に大丈夫かな? 僕は心配だけど」
「平気だってば、これでも成長したんだから」
ベルトを外すと、無重力の中で彼女の身体は、ふわりと浮かんだ。
「ほらっ! 上手く浮かんでいるでしょ? 無重力って言うのは、やっぱり自由な感じで、いいわね!」
はしゃいでいる様子を見せるミオに、フウマは不安を覚える。
「でも……あまり動かない方が、いいと思うけど」
「だから大丈夫よ! 無重力なら、こんな一回転だって……」
ミオは得意げに、その場で一回転、宙返りしようとした。が――。
途端に大きく態勢を崩し、くるくるとコマのように回り、フラフラと宙を移動する。
そしてそれに、ワタワタとしている彼女……。
「きゃああっ! 止まってってば!」
これを見てフウマは、頭を抱えた。
「だから……言わんこっちゃないのに」
実は彼女は、無重力に対しての平衡感覚が、昔から悪かった。
ちょっとバランスを崩しただけで、こんな風になってしまう……。それをよく知っていたフウマの不安は、見事に的中した訳だ。
「お願い、助けてフウマ! ……ううっ、気持ち悪い、吐きそう」
ミオは少し酔いだしたようで、両手で口を押えている。
流石に、放っておくわけにもいかないフウマは、操縦席を離れて彼女に近づき、止めようとした。
「分かったから、出来る限りじっとして…………って、うわっ!」
止めようとはしたが、運悪く上手く行かず、更に身体がフウマより大きいミオの動きに巻き込まれてしまう。
「ごめんなさい! わざとじゃないの!」
もつれ合うような、抱き合うような形になった二人。
「いいから、落ち着いてよ! 下手に動くと余計に……」
〈おやおや……、機体の中でも、仲が良い二人ですね〉
その声に、通信用ディスプレイに目を向けると、そこにはシロノの姿があった。
彼はフウマとミオに、にこやかに微笑む。
それから二人は、どうにか無重力状態の混乱から立ち直り、今は人工重力を起動させていた。
「だから……さっきのは違うってば、その……無重力のせいで」
変な所を見られたせいで、フウマとミオは顔を赤らめて、恥ずかしがっていた。
〈まぁまぁ、必要なら見なかったことにしますから……。リッキーでなく、理解があって優しい私で、良かったですね〉
相変わらず、シロノはにこやかな笑みを、顔に浮かべている。
別のディスプレイには、テイルウィンドと並列飛行をしている、ホワイトムーンの姿が見える。
「それを自分で言うかよ、全く」
〈何なら後で、リッキーに話してもいいんですよ〉
「……はぁ、やっぱりシロノも大概だよ」
呆れたようにフウマは、ため息をついた。
そんな中、シロノはこんな事を続ける。
〈そうそう、リッキーで思い出しましたけれど……、フウマはまだ、彼の機体を見ていませんでしたよね?〉
確かに、リッキーからは新しい機体を手に入れたと――そんな事を言っていた気がする。けれどまだ、その機体がどんなものか、見たことは無かった。
「まぁね。どんな物なのか、気にはなるけど」
〈今からこちらへ向かっていますから、もうすぐ見れると思いますよ。
私とリッキーは同じドックを使っていたから、先に機体を目にしましたけれど……あれは、良い船でしたよ。フウマもきっと、気に入ります〉
すると、ディスプレイに映る惑星から、輝く機影が、宇宙へと昇って行く姿が見える。
その姿は――。
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