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第八章 本番へ――
パーティーにて(4)
しおりを挟むフウマはミオに気が付くと、少し照れ笑いを見せた。
「ははは……いつの間にかこんな事に、ね」
「ごめんね、フウマ。ついミリィ達二人に話したせいで、こんな事になっちゃって」
「別にそこまで、気にしてないさ。まぁ……ちょっと気恥ずかしいけどさ」
そんな二人が話をしていると、ミリィが声をかける。
「相変わらず、仲の良い二人ね。でも、せっかく二人が主役なんだから、恥ずかしがってばかりじゃなくて、もっと笑ったらいいのに?」
ミオはそんなミリィに、ちょっとムッとする。
「私たちの事を言いふらしたのは、ミリィじゃない」
「だからこそのパーティじゃない。多めに見てよ」
「全然懲りてないのね、ミリィってば。……はぁ」
「まぁそう言うなよ、彼女だって悪気があるわけじゃ、ないんだからな」
今度はキースが、ミリィの肩を持つような事を言う。
と、今度は後ろから、リアンが二人の肩をポンと叩く。
「私たちだって、ミオとフウマの事を、心から祝ってあげたいのよ。正直、レースの事と同じくらいか、それ以上にね。
でもここまで祝うんだから、フウマ、ミオの事を不幸にしたら……承知しないからね?」
確かに……そんな祝いの気持ちは、恥ずかしい気持ちも少しあるけれど、やっぱり嬉しいものだ。
するとリアンは、どこからかマイクを取り出すと、フウマに手渡した。
「……これは?」
「パーティーの主役なんだから、何かみんなに一言、お願い出来るかしら?」
「えっ、でも……」
辺りからは期待の眼差し……、フウマは覚悟を決めて、マイクを手に席を立つ。
軽く一回、深呼吸。そして……。
相変わらず恥ずかしそうにしながらも、同時に嬉しそうな様子で、口を開いた。
「……ありがとう、みんな。でも、もしかすると知っているかもしれないけど、ミオはそんな仲になるのは、もうちょっと先、G3レースが終わってからさ。
彼女は、今度のレースで全力を尽くした後で初めて、僕と恋人になるって言ってくれた。そして僕も、そんなミオの事が――宇宙一大好きさ!」
フウマの『宇宙一大好き』宣言に、全員は大きく沸き立つ。中には、口笛を吹いたり、声援を送る人物さえいた。
「ちょっ、フウマ!? 宇宙一なんて……みんなの前でそんなに言うなんて!」
さすがにそこまで言われた当人、ミオは恥ずかしさのあまりつい、同じく立ち上がって抗議しようとした。
が、調子に乗ってきたフウマはそんな彼女を抱きとめて、さらに続ける。
「だから僕は、ミオの気持ちに全力で応えないと! 彼女のためにレースを飛んで、優勝をプレゼントしてみせるさ! それが僕に出来る精一杯、こんな僕だけど……このレースでミオに見合うだけの男になって見せる! だから……今度のレースもどうか、応援してくれたら嬉しい」
普段は子供っぽいフウマにしては、珍しく年相応かそれ以上に、立派な宣誓を決めてみせた。
辺りからは拍手の音、フウマはちょっと照れた顔をしながら、隣のミオに微笑みかける。
「あはは、親善試合でも似たことは言ったけど、みんなの前で言うと、やっぱり照れるな。それに……確かに、ちょっとだけ大げさだったかな」
「……私だって、恥ずかしかったのよ。でもちょっと……嬉しかったけど」
恥ずかしながらも、ミオは少しだけ、嬉しそうにしていた。
するといつの間に横にいた、シロノが笑みを見せる、
「本当に、お似合いの二人ですね……ふふっ。
――さてと、宣誓も済んだことですし、今度は腕によりをかけてデザートでも用意しましょう。リクエストは……何でも受付けますよ?」
パーティーはこれから、――そして、夜もまた長い。
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