テイルウィンド

双子烏丸

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第八章 本番へ――

パーティーにて(3)

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 見ると、ミオの父親がフウマに、こんな事を言っていた。
「聞いたぞ! ようやく家のミオと、付き合ってくれるんだな!」
「えっ、どうしてその事を……?」
「知らないのか? これはフウマと娘との恋仲を祝うための、パーティーでもあるんだぞ? 全員その事を、ミリィちゃんかリアンちゃんに聞いて集まった、だからみんな知っている訳だ」
 フウマは驚き、キースやミゲル達を、見回した。
「いやー、前から良い関係だったのは知っていたけど、ようやくと言うべきか、俺たちは祝福するぜ。
 まぁ……後で落ち着いたら、フウマにちゃんと言うつもりだったんだけど……驚かせちまったな」
 やはり、全員知っている様子だった。知らなかったのは当の本人、二人だけらしい。
 みんなを代表して、キースがそんな事を言うが、少しだけ申し訳なさそうだった。
「私はいつかとは思ったが、やっと娘の事を……。それだけで、私はもう……」
 感極まったのか、ミオの父親は腕で目を覆って、涙を流す始末だ。
「何も、そこまで泣くことは……」


 戸惑っているフウマに、リッキーとシロノが更に追い打ちをかける。
「ふふっ、私たちも二人については、先に着いたときに聞いてしまいましてね。でも良いじゃないですか、気立てが良さそうで、可愛らしい相手ですし。正直、羨ましいくらいですよ、フウマ」 
「まぁ、これに関しては俺は、あの親善試合の終わりに二人でいた時に何かあったとは思っていたけどな! それに好きな相手が出来たからこそ、レースだって相手の為に力を出すことも出来る。
 あの時言っていた『負けられない理由』は――やっぱり彼女の事だったな? いいじゃないか! これぞ青春って奴だ!」
 これにはフウマも、唖然とするしかなかった。
「シロノ、それにリッキーまで……」
 リッキーはフウマの肩に、腕を回す。
「まぁまぁまぁ、こんな機会も滅多にないんだ。連れない事言わずに俺たちにも祝わせてくれよ」
 どうやら周りもその気らしく、ちょっとした盛り上がりを見せている。



 これにはミオも、激しく赤面した。
「ああっ! ミリィとリアンも、あんなに秘密だって言ったのに!」
「あはは……ごめん、ついつい」
「私も、つい面白そうでしたから。それにレースの事でパーティーするなら、こっちも一緒にやった方が、盛り上がるでしょ?」
 口が軽そうなミリィはともかく、普段は真面目なリアンも、たまに結構、変な方向に茶目っ気が働くのが、悪い癖だった。
「どうりで、いつもより豪勢なパーティーだと思っていたけど……そう言う事だったのね、もう」
「そもそも、私たちに秘密を話したりするのが、いけなかったんじゃない?
 でもせっかく、二人のためにここまでしたのですから……楽しんだ方が得じゃないかしら」
 するとそこに、シロノがやって来た。
「これはお嬢さん方……特にミオさん、せっかくですので三人も、一緒にこちらへ。フウマもこの通り、とても楽しんでいますしね」
「えっ、でもこんな事になって、少し恥ずかしいし……」
「ふふっ、そう言わずに、フウマも待ってますしね」
 半ば強引に促されて、ミオは向かい側の、フウマの隣へと席を移した。
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