テイルウィンド

双子烏丸

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第六章 前哨戦・後半

二対一(3)

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 ――これで最後です! もし上手く行かなければその時は……、いえ、そんな事を考えるより今は……もう、やるしかないでしょう!――
 元々は本番であるG3レースの前に、相手の力量を知り、場合によってはそれを見せつける事が目的……、その為のこのレース、親善試合だ。
 どんなに白熱しようが、前試合は前試合、後に控える本番に比べれば、その優先度は低いかもしれない。
 しかし、だからと言って手を抜くような、シロノではない。
 ましてや、ジンジャーブレッドを相手にしているのであれば、マリンにああもサポートされたのなら……それは尚更だ。


 マリンの機体、クリムゾンフレイムはフォーメーションを変え、ホワイトムーンの頭上へと移る。先ほどまでは左右から攻めていたが、次は上下から仕掛ける。
 だが……それだけでは、やはりあのジンジャーブレッドを追い抜くことは困難だろう。
「さてと……、マリン、今回は貴方の言うとおりに、動いて見せましょう」
〈ふふっ、有難う。作戦はさっき伝えた通り、しっかりとお願いね〉
「ええ、任せて下さい。……やれる限り、やってみます」
 シロノはマリンに、力強く頷く。



 後ろを飛ぶクリムゾンフレイムとホワイトムーンは、左右横並びに位置していたが、今になり上下の縦並びに、フォーメーションを変えた。
 ジンジャーブレッドは、やや呆れた様子を見せる。
 ――何かと思えば……今になって、それくらいしか出来ないのか。これはとんだ拍子抜けだ。
 もはやあれを……奥の手を使うまでもない。この程度ならやはり普通にフェイントを続ければ、まだ十分に耐えられる――
 そう彼が拍子抜けをしていると、二機は更に動きを見せる。
 上下に並んだ二機は、互いに機体を出来る限り接近させ、速度も合わせている様子から、さながら一機の機体のように飛行する。
 これにはジンジャーブレッドも、考え直す必要があった。
 ――? これは、どう言うことだ? そう接近していれば、もはや一機で私を相手している事と同じ、二機でいるメリットを完全に潰すことになる――
 しかし、その答え、彼らが仕掛けようとする手段の予想は、考えてみれば簡単についた。


 ――ふっ、成程な、あの状態でギリギリまで引き付け、そこで上下に分離して意表を突き、一気に攻略しようと言う寸法か。
 だが甘い、例えそう来ようとも――
 分かってさえいれば、どうと言う事はない。実際、現役の頃にも、同じ手段を使った選手も存在した。
 上下に重なった状態で、接近する二機。対してそれを迎い、防がんとするブラッククラッカーとジンジャーブレッド。
 ――さぁ、来るといい。お前たち小童の挑戦、受けて立とうじゃないか――
 
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