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第14章
1週間後の昼下がり
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「あれは世紀の大事件だったよね」
静先輩が恋研の部室のソファーに長い足を投げて横たわり、春風ゆかり先生の新作だというコミックを片手に宙を仰いだ。
「思い出すたびにツボに入るんだけど、ジローちゃん、どう?」
「黙っててくれるか、静。今ベタの大事な所を塗ってるんだ。笑わせないでくれ」
投稿用の漫画原稿用紙と睨めっこしていたジロー先輩が、手を止めて静先輩の方を振り返る。
「わざと言ってるでしょう。先輩達」
今度ジロー先輩が投稿する予定の漫画の原稿に消しゴムかけをしながら、私は頬を膨らます。
「あれは不可抗力じゃないですか! それに今思えば、結果オーライだったと思います」
「呆気にとられる武藤、初めて見た」
「先生の拍子抜けした顔、今思い出してもじわじわくるな」
「もう!」
私は頬が紅潮するのを自覚しながら、叫んだ。
「月間マリーゴールドの締め切りは4日後ですよ? 分かってますか。時間がないんだから、無駄口叩かず手を動かしてください! ジロー先輩はベタ! 静先輩も消しゴムかけ、ほら手伝う‼」
ソファーからようやく身をはがした静先輩が笑いながら、こちらへやって来る。
「良かったね、ジローちゃん。強力な助っ人が入ってくれて」
「夏帆は仕事が早くて助かる。まさか、あの時あの場で、夏帆が恋研への入部を決断するとはな」
「~~~~っ。手を動かす‼」
「はぁい」
「了解」
消しゴムかけに集中するふりをして、赤くなった顔を隠しながら、私は1週間前の事を思い出していた。
静先輩が恋研の部室のソファーに長い足を投げて横たわり、春風ゆかり先生の新作だというコミックを片手に宙を仰いだ。
「思い出すたびにツボに入るんだけど、ジローちゃん、どう?」
「黙っててくれるか、静。今ベタの大事な所を塗ってるんだ。笑わせないでくれ」
投稿用の漫画原稿用紙と睨めっこしていたジロー先輩が、手を止めて静先輩の方を振り返る。
「わざと言ってるでしょう。先輩達」
今度ジロー先輩が投稿する予定の漫画の原稿に消しゴムかけをしながら、私は頬を膨らます。
「あれは不可抗力じゃないですか! それに今思えば、結果オーライだったと思います」
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「もう!」
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「夏帆は仕事が早くて助かる。まさか、あの時あの場で、夏帆が恋研への入部を決断するとはな」
「~~~~っ。手を動かす‼」
「はぁい」
「了解」
消しゴムかけに集中するふりをして、赤くなった顔を隠しながら、私は1週間前の事を思い出していた。
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