桜ヶ丘中学校恋愛研究部

夏目知佳

文字の大きさ
上 下
38 / 42
第13章

武藤生徒会長

しおりを挟む
私達は黙っていた。

黙っていたけど、皆同じ気持ちだったと思う。

間山さんが親友についた、最初で最後になるだろう嘘を見守ろうって。 

とびきり素敵で、世界一格好いい女の子の嘘を。

「大好きな結と陽人の恋が叶うなら、私は世界一、幸せなんだから!」

岩切さんが、間山さんの肩口に額を寄せる。

「り、莉理ちゃん」

「なぁに? 結」

大事な宝物をぎゅっと包み込むみたいに岩切さんを抱きしめて間山さんが優しく聞いた。

「莉理ちゃんが嫌いだなんて、嘘だよ。ごめんね。ごめんなさい。大好き、すごく、大好き」

「知ってる! 何年幼なじみしてると思ってんの!」

泣き笑いを浮かべる2人を見て、静先輩が耳打つ。

「ひとまず、一件落着かな」

ジロー先輩が腕時計に視線を落としながら言う。

「そうはいかないみたいだぞ、静」

「なんでさ、ジローちゃん」

「そうですよ、ジロー先輩、どうしてですか?」

「聞こえないか? 廊下を走ってくる音が聞こえる。しかも数名」

 私達は、3人顔を見合わせた。

「そうだった! 武藤の事、忘れてた」

「放送室、ジャックしたんでしたね!」

「到着まで、あと15秒ってとこか?」

わたわたし始める私達を見て、間山さん達がきょとんとする。

そんな2人に私は声をかけた。

「間山さん、岩切さん、逃げて! 武藤生徒会長と先生が来ちゃう」

「そ、それだと御手洗先輩達が……! 元はと言えば、私達が悪いのに」

「いーの、いーの。依頼者の守秘義務は最後まで守り抜きます。女の子達は皆、逃げてね。だから、夏帆ちゃんもだよ」

静先輩がそれに、と付け加える。

「最後くらい俺ら恋研に、少女漫画のヒーローみたいに格好つけさせてよ。ね、ジローちゃん」

「そうだな。今回のペナルティは廊下で正座か? 反省文5枚ずつか?」

「生徒会が作った資料のホチキスどめとかもあったよね~」

「美化清掃活動1週間に1票」

「お、それめちゃくちゃあり得るね。俺も1票。ほら、女の子達は、早く行って!」

静先輩が私達の背中を押す。

間山さんと岩切さんが、お互いの顔を見て、頷き合う。

「白石先輩、谷山先輩、御手洗先輩っ」

「本当にありがとうございました!」

駆け出す、2人の後に私も続く。

「先生、いました!」

「こらーっ! 恋研、なにしとるかーーーーーっ‼」

階段の踊り場を折れた所で、武藤生徒会長と先生の怒声が聞こえた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

イケメン男子とドキドキ同居!? ~ぽっちゃりさんの学園リデビュー計画~

友野紅子
児童書・童話
ぽっちゃりヒロインがイケメン男子と同居しながらダイエットして綺麗になって、学園リデビューと恋、さらには将来の夢までゲットする成長の物語。 全編通し、基本的にドタバタのラブコメディ。時々、シリアス。

笑いの授業

ひろみ透夏
児童書・童話
大好きだった先先が別人のように変わってしまった。 文化祭前夜に突如始まった『笑いの授業』――。 それは身の毛もよだつほどに怖ろしく凄惨な課外授業だった。 伏線となる【神楽坂の章】から急展開する【高城の章】。 追い詰められた《神楽坂先生》が起こした教師としてありえない行動と、その真意とは……。

へいこう日誌

神山小夜
児童書・童話
超ド田舎にある姫乃森中学校。 たった三人の同級生、夏希と千秋、冬美は、中学三年生の春を迎えた。 始業式の日、担任から告げられたのは、まさかの閉校!? ドタバタ三人組の、最後の一年間が始まる。

おねしょゆうれい

ケンタシノリ
児童書・童話
べんじょの中にいるゆうれいは、ぼうやをこわがらせておねしょをさせるのが大すきです。今日も、夜中にやってきたのは……。 ※この作品で使用する漢字は、小学2年生までに習う漢字を使用しています。

こわがりちゃんとサイキョーくん!

またり鈴春
児童書・童話
【第2回きずな児童書大賞にて奨励賞受賞しました❁】 怖がりの花りんは昔から妖怪が見える ある日「こっち向け」とエラソーな声が聞こえたから「絶対に妖怪だ!!」と思ったら、 学校で王子様と呼ばれる千景くんだった!? 「妖怪も人間も、怖いです!」 なんでもかんでも怖がり花りん × 「妖怪は敵だ。すべて祓う」 みんなの前では王子様、 花りんの前では魔王様!! 何やら秘密を抱える千景 これは2人の人間と妖怪たちの、 ちょっと不思議なお話――✩.*˚

クリスマスまでに帰らなきゃ! -トナカイの冒険-

藤井咲
児童書・童話
一年中夏のハロー島でバカンス中のトナカイのルー。 すると、漁師さんが慌てた様子で駆け寄ってきます。 なんとルーの雪島は既にクリスマスが目前だったのです! 10日間で自分の島に戻らなければならないルーは、無事雪島にたどり着けるのでしょうか? そして、クリスマスに間に合うのでしょうか? 旅の途中で様々な動物たちと出会い、ルーは世界の大きさを知ることになります。

原田くんの赤信号

華子
児童書・童話
瑠夏のクラスメイトで、お調子者の原田くん。彼は少し、変わっている。 一ヶ月も先のバレンタインデーは「俺と遊ぼう」と瑠夏を誘うのに、瑠夏のことはべつに好きではないと言う。 瑠夏が好きな人にチョコを渡すのはダメだけれど、同じクラスの男子ならばいいと言う。 テストで赤点を取ったかと思えば、百点満点を取ってみたり。 天気予報士にも予測できない天気を見事に的中させてみたり。 やっぱり原田くんは、変わっている。 そして今日もどこか変な原田くん。 瑠夏はそんな彼に、振りまわされてばかり。 でも原田くんは、最初から変わっていたわけではなかった。そう、ある日突然変わり出したんだ。

月神山の不気味な洋館

ひろみ透夏
児童書・童話
初めての夜は不気味な洋館で?! 満月の夜、級友サトミの家の裏庭上空でおこる怪現象を見せられたケンヂは、正体を確かめようと登った木の上で奇妙な物体と遭遇。足を踏み外し落下してしまう……。  話は昼間にさかのぼる。 両親が泊まりがけの旅行へ出かけた日、ケンヂは友人から『旅行中の両親が深夜に帰ってきて、あの世に連れて行く』という怪談を聞かされる。 その日の放課後、ふだん男子と会話などしない、おとなしい性格の級友サトミから、とつぜん話があると呼び出されたケンヂ。その話とは『今夜、私のうちに泊りにきて』という、とんでもない要求だった。

処理中です...