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八岐大蛇 です。
心準備 です。
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5人は、明日への休息をとる。6畳くらいの所に5人が横になれば、ちょっと窮屈だが別に寝られない程ではない。
ユウの隣にはサワが寝ていた。
ツンツンと鼻を触られてパカッと目を開けるユウ。寝ぼけた目を擦る。
「サワ、」
「シッ」
「分かった、ちょっと、外へ出よう」
ユウとサワは3人の睡眠の邪魔をしないように静かに外へ出る。外に出ると、腰をおろして、二人は隣に座る。
「どうしたの?」
「眠れなくて…ごめんね、寝られないのは私だけなのに、起こしちゃって」
申し訳なさそうにしたサワ。
「いいよ、寝れないのは走り続けるのとはまた別の辛さがあるからね」
「こんな風に二人で夜に喋るのなんて二回目じゃない?」
「あーそうだね、あれは出発の晩だっけ」
「うん」
サワは、ユウの肩に頭をコテンとのせて体重の一部を預ける。
「…不安、なんだよね、」
「…僕もさ」
「え、ユウはなんかの自信があるのかと思ってた」
「自信があるように振る舞わないと、怖さに負けるから、それくらい、」
サワはユウの拳が細かく震えるのを見た。
「ごめんね、カッコ悪くて、頼りないよね」
「それは、お互い様」
そう言って、笑ったサワに真剣な眼差しを向ける。
「でも、今は、前に眠れなかった夜とは違う」
あのときは、サワの不安や怖さを受け入れることが怖くて握ることのできなかったサワの手を握る。
「え…」
驚いたような顔をしたサワ。目線が左右に動く。でも、最後にはユウの真っ青な瞳をサワは見た。
「サワ、僕は、臆病だし、絵に描いたような立派な王子でもないけれど、それでも、サワの感じる不安や恐怖を僕に分けてほしい。僕は、サワが「大丈夫」って思える理由になるような存在になる、必ず」
そう宣言というか決意を表したユウ。サワは、ユウの手を握り返す。
「私だって、同じだよ。ユウのそういう存在になる」
「サワ…」
何か、熱い想いが繋がったような心地がして、僕の心に蔓延る不安が少し前向きな緊張感に変わった。
「いよいよだな」
シキが微かにしらみだした山に目を凝らす。
「あぁ、肩の調子は?」
「痛みはあるが、固定していたらましだ」
「そうか、なら良かった。今日は、翡翠に乗って」
「ありがとな。あ、そう言えば、昨日の夜、サワと二人でどこに行ってたんです?」
ニヤニヤしながらシキは尋ねる。
「眠れないって言ってたから、ちょっと夜風に当たってきただけ」
「それだけ?本当のことを言って」
「それだけ!」
二人で出ていたことがバレていたのか。それだけでも、ちょっと恥ずかしいんだが。その上、何をしたかだと?言えるわけがない。口付けをしましたなど言えるわけがない。
「ユウ、赤くなってるぜ」
「え、嘘?ね、ほんと?」
「ほんとー。もうちょっと、顔に出ないように訓練しとけ」
冗談っぽく笑ったシキと、手で顔をおおったユウ。
イリナとイチナとサワの三人は、それぞれ服を着替えていた。キュッと腰ひもを締める。サワは、細かい暗器をセットする。
「なんか、男性陣楽しそう」
シキとユウの二人の声だけが聞こえてくる。
「何話してるんだろう?」
イチナがそういうと、イリナがピクッと反応する。
「昨日の夜にユウさんとサワさんが何をしていたのかで盛り上がっているみたいです」
「へー」
いたずらっ子みたいな顔をしたイチナと反対を向くサワ。
「いやいや、本当に何もしてないよ!」
「そんなに恥ずかしがらなくても良いよ、だって、好きあってるのは周知の事実だし」
「そう改めて言われると恥ずかしいから!」
耳まで赤く染まったサワ。これはからかいがいがあるように思ったのか、イチナはサワの反応を面白く思う。
「口付けかなー?」
「え?!ち、違うよ、ちょっと、話し聞いてもらっただけだから!」
「ここだけの話、ね?」
ユウの隣にはサワが寝ていた。
ツンツンと鼻を触られてパカッと目を開けるユウ。寝ぼけた目を擦る。
「サワ、」
「シッ」
「分かった、ちょっと、外へ出よう」
ユウとサワは3人の睡眠の邪魔をしないように静かに外へ出る。外に出ると、腰をおろして、二人は隣に座る。
「どうしたの?」
「眠れなくて…ごめんね、寝られないのは私だけなのに、起こしちゃって」
申し訳なさそうにしたサワ。
「いいよ、寝れないのは走り続けるのとはまた別の辛さがあるからね」
「こんな風に二人で夜に喋るのなんて二回目じゃない?」
「あーそうだね、あれは出発の晩だっけ」
「うん」
サワは、ユウの肩に頭をコテンとのせて体重の一部を預ける。
「…不安、なんだよね、」
「…僕もさ」
「え、ユウはなんかの自信があるのかと思ってた」
「自信があるように振る舞わないと、怖さに負けるから、それくらい、」
サワはユウの拳が細かく震えるのを見た。
「ごめんね、カッコ悪くて、頼りないよね」
「それは、お互い様」
そう言って、笑ったサワに真剣な眼差しを向ける。
「でも、今は、前に眠れなかった夜とは違う」
あのときは、サワの不安や怖さを受け入れることが怖くて握ることのできなかったサワの手を握る。
「え…」
驚いたような顔をしたサワ。目線が左右に動く。でも、最後にはユウの真っ青な瞳をサワは見た。
「サワ、僕は、臆病だし、絵に描いたような立派な王子でもないけれど、それでも、サワの感じる不安や恐怖を僕に分けてほしい。僕は、サワが「大丈夫」って思える理由になるような存在になる、必ず」
そう宣言というか決意を表したユウ。サワは、ユウの手を握り返す。
「私だって、同じだよ。ユウのそういう存在になる」
「サワ…」
何か、熱い想いが繋がったような心地がして、僕の心に蔓延る不安が少し前向きな緊張感に変わった。
「いよいよだな」
シキが微かにしらみだした山に目を凝らす。
「あぁ、肩の調子は?」
「痛みはあるが、固定していたらましだ」
「そうか、なら良かった。今日は、翡翠に乗って」
「ありがとな。あ、そう言えば、昨日の夜、サワと二人でどこに行ってたんです?」
ニヤニヤしながらシキは尋ねる。
「眠れないって言ってたから、ちょっと夜風に当たってきただけ」
「それだけ?本当のことを言って」
「それだけ!」
二人で出ていたことがバレていたのか。それだけでも、ちょっと恥ずかしいんだが。その上、何をしたかだと?言えるわけがない。口付けをしましたなど言えるわけがない。
「ユウ、赤くなってるぜ」
「え、嘘?ね、ほんと?」
「ほんとー。もうちょっと、顔に出ないように訓練しとけ」
冗談っぽく笑ったシキと、手で顔をおおったユウ。
イリナとイチナとサワの三人は、それぞれ服を着替えていた。キュッと腰ひもを締める。サワは、細かい暗器をセットする。
「なんか、男性陣楽しそう」
シキとユウの二人の声だけが聞こえてくる。
「何話してるんだろう?」
イチナがそういうと、イリナがピクッと反応する。
「昨日の夜にユウさんとサワさんが何をしていたのかで盛り上がっているみたいです」
「へー」
いたずらっ子みたいな顔をしたイチナと反対を向くサワ。
「いやいや、本当に何もしてないよ!」
「そんなに恥ずかしがらなくても良いよ、だって、好きあってるのは周知の事実だし」
「そう改めて言われると恥ずかしいから!」
耳まで赤く染まったサワ。これはからかいがいがあるように思ったのか、イチナはサワの反応を面白く思う。
「口付けかなー?」
「え?!ち、違うよ、ちょっと、話し聞いてもらっただけだから!」
「ここだけの話、ね?」
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