秀才くんの憂鬱

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古仲間 です。

すぐ側に です。

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「八岐大蛇 これはずっと昔から言い伝えのある怪物だ」
空想図をトントンと指すシキの師匠。師匠の目配せに応じて、コクンと頷く師兄。説明の続きは、シキの師兄が行う。
「そうだ、かつて、それに戦いを挑み、勝利を納めた者がいるという。その人は、尻尾を、蛇のように蛇行した剣で刺すことで封印したそうなんだが、どうやら、封印から何年後かに剣を盗み、遥か西の国へ持っていった者がいたそうでな。それで、封印の力が弱まり、かつての力を取り戻しつつあるという」
その西国に渡った剣をイトスギは所有している。でも、どうして、盗むなら二本まとめてではなく、一本にしたんだ?完全に封印が解かれることを恐れたのか、あるいは、盗めない事情があったのか。

「剣は、二本で一本の大きな剣を作っていると聞いた。盗まれたのはその片割れ…。剣には特殊な宝玉が混ぜられていると聞く」
「シキ、よく調べたな」
「剣が打ち出されたのは私の生まれた村だ。蛇行した剣なんて、珍しいから、村の多くの人が知っていた。私も、鍛冶屋で働いていたんだ。そんな凄い剣があれば、必ず耳にする」
現に私の父は、その蛇行した剣、『草薙剣』に魅了され、それを探していた。そのせいで、散散な目にはあったが。

その話を聞いて、ユウはピンと来る。
「シキって、もしかして、」
ユウはシキの方を見た。
「なんだ?」
「独立集落、話し方に訛りのような特徴がある、処刑台がある、鍛冶の盛んな村の生まれなのか?」
サワはユウがそこまで言ってピンと来た。旅のはじめの頃に偶然に訪れた村。ユウの青い瞳を無理矢理でも欲しがったあの村のことを。
「あぁ、まあ、あんなところは捨てたがな」
「だから、名前も変えたのか?」
もしも、僕の思い違いじゃなかったら、シキには別の名前があるはずだ。あの時に、村長が話した処刑にかけられた少年。それが、シキになるはずだから。
「ユウくん、名前を変えたって一体どういうこと?」
イチナは首を傾げた。
「シェキナ、そうだろう?」
「…ユウには何でもお見通しというわけか」
「どうして、今まで黙って」
ユウは、シキに隠し事をされていたようで、仲間として彼がまだ信頼していなかったのかとも思えて、思わず、不満のこもった言い方をした。
それを遮るように口を開いたのは、イチナだった。
「思い出したくないからじゃないかな?」
池に投じた石が波紋を作るみたいに、静かに広がる、そんな声だった。
「そんなんじゃない。私は、一度、処刑にかけられたんだ。だったら、名前や姿を変えて、シェキナを自分の中で殺して、新しく生きたいだけなんだ」

反応を見るに、師匠や師兄ですら、そんなことは知らなかったらしい。シキはシェキナという名前で、処刑までされかけたこと。

「悪かった、全然、シキのこと何も知らなかったわ。まあ、でも、だから何だってな、シキは、シキとして生きて、それで満足だったら、今までと何も変わる必要も無いし、俺らも変わらない」
師兄は楽観的にそう言った。
それに、便乗するみたいに、ユウは言葉を足した。
「そうだ、だって、僕らはシキの仲間なんだから」
シキは顔を伏せて、涙を堪えているみたいだった。

「さ、話の続きだ。八岐大蛇はこのすぐ側にいる。痕跡なんかからもそれは確実なことだ。徒歩なら、5時間だ。朝にたって昼につく」







話が終わると、ユウは、サワとシキとイチナとイリナを集める。
「これは、僕が写した地図だ。夜の移動は避けたい。だから、出発は3日後の朝にしたい。もちろん、この人数だ。無茶な戦いにならないように、作戦を立てよう」
「待て、私の師匠たちと行動は共にしないのか?あの人らは、ああ見えても、強いし頼りになる」
シキの考えにも一理あったが、ユウは断る。
「シキの師匠が率いる集団、確かに強いだろう。でも、僕は、あの集団に背中を預けることはできない」
優の脳裏に焼き付いているのは、常に仲間同士で離すときには口元を覆ってコソコソと話し、僕が話を聞くと、親切に答えはしてくれるが、常に、僕の目線や、手の動きに注目して、攻撃される前提みたいな動き。信頼していない相手を信頼してましてや、八岐大蛇という強敵に向かおうなどこちらにとっても相手にとっても互いに足を引っ張り会うだけだ。
「私もユウに同感。あの厳しい規律に今から馴染むのは無理だと思うし、そもそも、向こうは、出発か明確に答えてくれなかった。つまり、私たちは信用もされていない」
サワも僕と同じ考えなんだ。
「私もユウも小隊を指揮して、戦ったり、それに近い形で実戦的な訓練を積んできた。信用や信頼は一夕一朝に築けないし、それがどれだけ大切か学んでいる。だから、ユウと私の意見を聞いてほしい」
イチナは黙っていたが、手をあげる。
「私、2人を信じる」
シキに注目が集まる。シキは、しばらく考え込むが、やがて、全員の顔を見る。
「分かった。今の私の仲間は、ここにいる4人だ。これは、私たちの問題だ。私たちで、やろう!」
「そうと決まれば作戦会議だな、」
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