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仲間入り です。
霖錬 です。
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季節は少し進んで、葉が色づいてきた。
「ん!見てよ、あっちに村がある」
イチナが翡翠に股がったまま東の方角を指差した。
「凄く良さそうな村だな」
瑠璃の手綱を握るユウは、イチナの指した方向を見て目を細める。
丘から見下ろすと、もくもくと数本の煙が立ち、区画整備した田んぼが見えた。稲の穂は頭を垂れて、黄金色に輝く。この国の血となり肉となり、何代にも渡って受け継がれるこの光景が僕は好きだ。
「なんか、私の住んでた所に似てる…」
「あぁ、確かに」
効率重視で、四角に揃えれた田んぼに、直線的な道が交差する住宅街。それは、サワの故郷である邪馬台国の西南町を彷彿とさせる。
「お父さん、今、何してるかな?疫病にかかってなかったらいいけど…」
「信じよう、大丈夫だって」
父は処刑、母は自殺、妻は殺害された。サワのお父さんには、もう不幸を塗り重ねたくない。だからだろうか、サワの目を見て思わず力がこもった拳。
シキは小さな切り株の上に立って村の全体を見下ろす。
「私、ここに来たことがある」
「本当?」
「本当だよ。イチナ、私はこの列島を歩き回ったんだから」
そんなに探して、草薙剣は見つからないのか…
「それは頼もしい。僕は前に、立ち寄った村でひどい目にあっているから、少し事前情報がほしくてね」
深みのある青い瞳を閉じて目をさするユウ。
「あそこの集落の名前は霖錬貿易を通して潤っている豊かな国だよ。ほら、あそこ大きな川があるだろう?」
「あ、ほんとだ」
「貿易で栄えている集落だけあって、客のもてなしは上手く、音楽が有名だな。特に、弦楽器よりも笛と打楽器で奏でる音色に定評がある。それと、掟みたいなのとかは結構緩くて、自由で開かれた集落っていう印象だったかな。あー、南から来た渡来人が結構多かった」
「それって、立ち寄った集落ごとに特徴を覚えてるの?」
サワは少し驚いた顔をした。
「うん、また立ち寄る機会があったときに思い出せる程度にはだけどね」
「十分だよ」
イチナはちょっと引き気味のようだ。
「じゃあ、行こう」
ユウが先頭に立って、丘を降りる。
丘を降りれば、霖錬はすぐそこだった。
「私が初めに行きましょう」
花で装飾された門には門番の一人すら居ない。入ってくださいと言わんばかりの絢爛さにフワーッと視線をあちらこちらへ向ける。
1人の村人が気がついて、シキに駆け寄ってきた。華奢で可憐な女性。歳は、イチナと同じくらい。
「シキ様!」
「おぉ、フラワ、元気だったか?」
「はい、この通り!」
そう言って、そのフラワという女性はクルリとターン。服の裾がひらりと舞う。
「そうか、そうか」
ポンポンと頭を撫でたシキ。
「なんか、異様に仲良さそうに見えるのは私だけ?」
サワがイチナの方を向く。
「ううん、私もそう思う」
「ねー!みんなー!シキ様がお越しになりましたー!」
フラワは田んぼで作業中の女性に向かってそう大声で知らせる。
一体何事?!と驚く間もなくあっという間にシキは霖錬の女性たちに囲まれる。
「おぉ、クラにメイにラリ、それとみんな私のことを覚えていたのですか?嬉しい限りですな」
女性に囲まれての鼻の下を伸ばしているシキにユウたち三人はドン引き。目の前で起きていることが全くわからん。
シキが女性たちにモテているわけも分からなければ、シキがこうも水を得た魚のごとく舞い上がっているのかも急すぎて不思議でしかない。
「まぁ、あなたも良い男ね」
シキを取り囲む女性のうち何人かが、3人の方からやってくる。
「シキ様の家来だそうよ」
ピキッと額の血管が浮かぶ。こちらは対等な立場だと思っていたのに、シキはそんなことを言いふらしているのか?見栄っ張りもいい加減にしてほしい。いや、しかし、私は一国の王子これくらいで腹を立ててはいけない。この女性たちは純粋無垢にそう思っているだけだ。
「シキと共に行動しています、ユウと申します。どうぞよろしくお願いします」
最後にビジネススマイルを付け足す。外交は笑顔が肝を握る。
「よく見ると、あなたの瞳、青色なんですね」
この時代、この地域では青色の瞳なんてまず無い。一生に一度も見たことがないという人がほとんどだ。だから、ユウの瞳の色というのに驚く人は多いし、初めにそう言われることには慣れっこだ。
「はい、生まれつき」
「んまぁー!綺麗ね」
「えー、見せて見せて、わ、本当だ」
顔をグッと近付けられたユウは反射的にグッと体を反ってしまう。そんなことはお構いなしに、二人の女性はユウの珍しい瞳を見ようと迫ってくる。
「ちょっと?」
「さ、サワ」
ハッキリ嫌と言えないユウにしびれをきらして、サワはユウの肩をガシッと掴む。
「すみません、私たち用事があるので」
女性たちにペコッと頭を下げてから、ユウを引き戻す。
「ありがとう」
「シャンとしなよ、何、圧に押されてるのよ」
「ご、ごめん」
「イチナちゃん、シキの方を引っ張り出してきて」
サワは視線でクッとシキの方へ行くようにイチナに合図する。
「瑠璃と翡翠ならユウに見といてもらうから」
「りょ、了解」
イチナは二頭の手綱をユウに渡して、シキの方に歩く。
女性に囲まれてまんざらでもなさそうなシキ。スッと息を吸い、大きな声を出す。
「シキくん、行くよ!」
シキには届かないイチナの声。外側の数人はイチナに気付くが、今はシキに夢中みたいだ。
なんか、ムカつく
イチナは集団の中を割く。そして、グッとシキの手首を掴み、引っ張る。
「シキくん!サワちゃんたち行っちゃうよ!ほら」
シキと目が合う。今だ!と思って、イチナはシキの腕をグーッと引くが反対からイチナが引くより強い力でシキが腕を引かれていることに気が付く。
「何よ、この女。今、私がシキ様と話してたのに、私はシキ様と婚約してるのよ!」
婚約?!
「ハハッ、両手に花とはまさにこの事ですな」
呑気なシキ。ここから修羅場になるなんて微塵も感じていないようだ。
「ちょっと、待って、何?私もシキ様と婚約してるのよ」
「待って待って、私だって」
「一番好きなのは私って」
だんだんとシキの顔に焦りが浮かぶ。口をつぐみ、変なところから汗がジワッと滲むシキ。心当たりしかないようだ。
女性たちが、女性たちどうしで揉め始めた。
シレーっとその場をさろうと、シキはイチナの肩を抱く。いたって自然に何事も無かったように。
そして、混沌とした女性たちにの争いからは離れていく。自分が撒いた種を知らんぷりして逃げ出すなんて、やっぱりシキはなかなかに最低だ。
「イチナ、助かったよ」
「助けたかった訳じゃないんだからね、そこ、勘違いしないでくれる?私まで荷担したみたいじゃない!」
「ツンデレさんだなぁ」
逆に知りたい。どうして、ここまでヘラヘラとして居られるのか?たぶん、罪悪感みたいなものがほとほと欠けいているんだろうなぁ、残念なことに。
大きなため息をついたイチナ。
「ああいう人たちが居たこと忘れちゃうの?」
「いえいえ、ハッキリと覚えていますとも、みなさん、私が祝言をあげてほしいと申し込んだおなごです」
「は?」
ちょっと待って理解が追い付かん。やばすぎないかコイツ。
「え?」
それになんだよ、当たり前じゃないですか?ね?え?知らなかったの?みたいな顔もより一層ムカつく。
「は?」
「私は出会った女性みなさんに申し込んでいますから『私と祝言をあげてくれないか?』と」
あぁー、サワちゃんが言われてたやつね。そこで少し疑問思う。
「へー、私、言われてないんだけど」
「イチナ、そうか、言ってほしかったのか?」
「言わんでいい!」
「イチナ、シキは集団から出せた?」
ユウとサワがシキとイチナに駆け寄ってくる。
「ん?なんか、喧嘩でもした?」
「いいえ!」
「そ、そんなに強く否定しなくても…」
イチナの迫力に押され苦笑いを浮かべたユウ。
ユウは一旦、さっきのことは頭の隅に無理やり追いやって、何事もなかったかのように取り繕う。
「剣のことを知っている人はこの集落にいるのかい?シキ」
「いや、前に来たときは誰も知らなかった。でも、この霖錬には情報部隊が存在するからな、そこに別案件を頼んでいるから、どっちみちこの村の村長には会いに行く。そこで、もう一度聞いてみようと思う」
ユウの平静に負けず劣らず普通すぎるシキ。
イチナは、そんなシキに軽蔑の視線を送り続ける。
「ん!見てよ、あっちに村がある」
イチナが翡翠に股がったまま東の方角を指差した。
「凄く良さそうな村だな」
瑠璃の手綱を握るユウは、イチナの指した方向を見て目を細める。
丘から見下ろすと、もくもくと数本の煙が立ち、区画整備した田んぼが見えた。稲の穂は頭を垂れて、黄金色に輝く。この国の血となり肉となり、何代にも渡って受け継がれるこの光景が僕は好きだ。
「なんか、私の住んでた所に似てる…」
「あぁ、確かに」
効率重視で、四角に揃えれた田んぼに、直線的な道が交差する住宅街。それは、サワの故郷である邪馬台国の西南町を彷彿とさせる。
「お父さん、今、何してるかな?疫病にかかってなかったらいいけど…」
「信じよう、大丈夫だって」
父は処刑、母は自殺、妻は殺害された。サワのお父さんには、もう不幸を塗り重ねたくない。だからだろうか、サワの目を見て思わず力がこもった拳。
シキは小さな切り株の上に立って村の全体を見下ろす。
「私、ここに来たことがある」
「本当?」
「本当だよ。イチナ、私はこの列島を歩き回ったんだから」
そんなに探して、草薙剣は見つからないのか…
「それは頼もしい。僕は前に、立ち寄った村でひどい目にあっているから、少し事前情報がほしくてね」
深みのある青い瞳を閉じて目をさするユウ。
「あそこの集落の名前は霖錬貿易を通して潤っている豊かな国だよ。ほら、あそこ大きな川があるだろう?」
「あ、ほんとだ」
「貿易で栄えている集落だけあって、客のもてなしは上手く、音楽が有名だな。特に、弦楽器よりも笛と打楽器で奏でる音色に定評がある。それと、掟みたいなのとかは結構緩くて、自由で開かれた集落っていう印象だったかな。あー、南から来た渡来人が結構多かった」
「それって、立ち寄った集落ごとに特徴を覚えてるの?」
サワは少し驚いた顔をした。
「うん、また立ち寄る機会があったときに思い出せる程度にはだけどね」
「十分だよ」
イチナはちょっと引き気味のようだ。
「じゃあ、行こう」
ユウが先頭に立って、丘を降りる。
丘を降りれば、霖錬はすぐそこだった。
「私が初めに行きましょう」
花で装飾された門には門番の一人すら居ない。入ってくださいと言わんばかりの絢爛さにフワーッと視線をあちらこちらへ向ける。
1人の村人が気がついて、シキに駆け寄ってきた。華奢で可憐な女性。歳は、イチナと同じくらい。
「シキ様!」
「おぉ、フラワ、元気だったか?」
「はい、この通り!」
そう言って、そのフラワという女性はクルリとターン。服の裾がひらりと舞う。
「そうか、そうか」
ポンポンと頭を撫でたシキ。
「なんか、異様に仲良さそうに見えるのは私だけ?」
サワがイチナの方を向く。
「ううん、私もそう思う」
「ねー!みんなー!シキ様がお越しになりましたー!」
フラワは田んぼで作業中の女性に向かってそう大声で知らせる。
一体何事?!と驚く間もなくあっという間にシキは霖錬の女性たちに囲まれる。
「おぉ、クラにメイにラリ、それとみんな私のことを覚えていたのですか?嬉しい限りですな」
女性に囲まれての鼻の下を伸ばしているシキにユウたち三人はドン引き。目の前で起きていることが全くわからん。
シキが女性たちにモテているわけも分からなければ、シキがこうも水を得た魚のごとく舞い上がっているのかも急すぎて不思議でしかない。
「まぁ、あなたも良い男ね」
シキを取り囲む女性のうち何人かが、3人の方からやってくる。
「シキ様の家来だそうよ」
ピキッと額の血管が浮かぶ。こちらは対等な立場だと思っていたのに、シキはそんなことを言いふらしているのか?見栄っ張りもいい加減にしてほしい。いや、しかし、私は一国の王子これくらいで腹を立ててはいけない。この女性たちは純粋無垢にそう思っているだけだ。
「シキと共に行動しています、ユウと申します。どうぞよろしくお願いします」
最後にビジネススマイルを付け足す。外交は笑顔が肝を握る。
「よく見ると、あなたの瞳、青色なんですね」
この時代、この地域では青色の瞳なんてまず無い。一生に一度も見たことがないという人がほとんどだ。だから、ユウの瞳の色というのに驚く人は多いし、初めにそう言われることには慣れっこだ。
「はい、生まれつき」
「んまぁー!綺麗ね」
「えー、見せて見せて、わ、本当だ」
顔をグッと近付けられたユウは反射的にグッと体を反ってしまう。そんなことはお構いなしに、二人の女性はユウの珍しい瞳を見ようと迫ってくる。
「ちょっと?」
「さ、サワ」
ハッキリ嫌と言えないユウにしびれをきらして、サワはユウの肩をガシッと掴む。
「すみません、私たち用事があるので」
女性たちにペコッと頭を下げてから、ユウを引き戻す。
「ありがとう」
「シャンとしなよ、何、圧に押されてるのよ」
「ご、ごめん」
「イチナちゃん、シキの方を引っ張り出してきて」
サワは視線でクッとシキの方へ行くようにイチナに合図する。
「瑠璃と翡翠ならユウに見といてもらうから」
「りょ、了解」
イチナは二頭の手綱をユウに渡して、シキの方に歩く。
女性に囲まれてまんざらでもなさそうなシキ。スッと息を吸い、大きな声を出す。
「シキくん、行くよ!」
シキには届かないイチナの声。外側の数人はイチナに気付くが、今はシキに夢中みたいだ。
なんか、ムカつく
イチナは集団の中を割く。そして、グッとシキの手首を掴み、引っ張る。
「シキくん!サワちゃんたち行っちゃうよ!ほら」
シキと目が合う。今だ!と思って、イチナはシキの腕をグーッと引くが反対からイチナが引くより強い力でシキが腕を引かれていることに気が付く。
「何よ、この女。今、私がシキ様と話してたのに、私はシキ様と婚約してるのよ!」
婚約?!
「ハハッ、両手に花とはまさにこの事ですな」
呑気なシキ。ここから修羅場になるなんて微塵も感じていないようだ。
「ちょっと、待って、何?私もシキ様と婚約してるのよ」
「待って待って、私だって」
「一番好きなのは私って」
だんだんとシキの顔に焦りが浮かぶ。口をつぐみ、変なところから汗がジワッと滲むシキ。心当たりしかないようだ。
女性たちが、女性たちどうしで揉め始めた。
シレーっとその場をさろうと、シキはイチナの肩を抱く。いたって自然に何事も無かったように。
そして、混沌とした女性たちにの争いからは離れていく。自分が撒いた種を知らんぷりして逃げ出すなんて、やっぱりシキはなかなかに最低だ。
「イチナ、助かったよ」
「助けたかった訳じゃないんだからね、そこ、勘違いしないでくれる?私まで荷担したみたいじゃない!」
「ツンデレさんだなぁ」
逆に知りたい。どうして、ここまでヘラヘラとして居られるのか?たぶん、罪悪感みたいなものがほとほと欠けいているんだろうなぁ、残念なことに。
大きなため息をついたイチナ。
「ああいう人たちが居たこと忘れちゃうの?」
「いえいえ、ハッキリと覚えていますとも、みなさん、私が祝言をあげてほしいと申し込んだおなごです」
「は?」
ちょっと待って理解が追い付かん。やばすぎないかコイツ。
「え?」
それになんだよ、当たり前じゃないですか?ね?え?知らなかったの?みたいな顔もより一層ムカつく。
「は?」
「私は出会った女性みなさんに申し込んでいますから『私と祝言をあげてくれないか?』と」
あぁー、サワちゃんが言われてたやつね。そこで少し疑問思う。
「へー、私、言われてないんだけど」
「イチナ、そうか、言ってほしかったのか?」
「言わんでいい!」
「イチナ、シキは集団から出せた?」
ユウとサワがシキとイチナに駆け寄ってくる。
「ん?なんか、喧嘩でもした?」
「いいえ!」
「そ、そんなに強く否定しなくても…」
イチナの迫力に押され苦笑いを浮かべたユウ。
ユウは一旦、さっきのことは頭の隅に無理やり追いやって、何事もなかったかのように取り繕う。
「剣のことを知っている人はこの集落にいるのかい?シキ」
「いや、前に来たときは誰も知らなかった。でも、この霖錬には情報部隊が存在するからな、そこに別案件を頼んでいるから、どっちみちこの村の村長には会いに行く。そこで、もう一度聞いてみようと思う」
ユウの平静に負けず劣らず普通すぎるシキ。
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