秀才くんの憂鬱

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出発前 です。

仲間 です。

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 カンが亡くなって一週間が経った。
「イチナさん、すみません。折角、剣を探そうと動き出したところで」
「いえ、ユウ王子が謝ることありません。それより、私はサワさんが心配で」
この一週間、カンの葬式やらなんやらで、王宮とサワの家とを行き来していた。イチナとサワの交流もそれに従い増えた。だが、なかなか以前のように笑うことがないサワを心配するユウを見てイチナもサワの様子には不安感を抱いていた。

そして、葬式や火葬が、一段落着いて、再出発を迎えていた。


 瑠璃と名付けられた馬に股がる。僕と同じ青い瞳。白い毛並みは艶やかで、特に気に入っている馬だった。文字通り、白馬に乗った王子様になったわけである。
数十メートル先の門の先には、王子が守られない世界が待ち構えている。ぬくぬくの王宮とは訳が違うのだ。

「私にも、馬なんて、ありがとうございます」
「その馬は瑠璃と兄妹の翡翠です。長旅になるのも覚悟しているとおっしゃったので」
ユウは馬に股がった両足で馬の腹辺りをポンと挟む。すると、馬は進み始める。


 王宮の門から出た所に、サワが立っていた。不意を突かれて思わずグッと手綱を引く。
「サワ!」

「私もついていく!犯人が、草薙剣を探しているなら、きっと、私たちが草薙剣を探している間にどこかで会えるはずだから」

ユウは一度、イチナの方を見た。イチナはコクッと頷いた。

「うん、サワ、一緒に行こう!」

サワは久しぶりに笑顔を見せた。

ユウと、イチナと、サワ。1男、2女の冒険が始まろうとしていた。

それぞれの思惑は違っていても、行く理由があれば、それだけで、進める。



「サワ、一つ聞いていいか?」
「何?」
「なんで、こんなに荷物が多いんだ?」
「乙女のあれこれ!」
ユウは、瑠璃にサワの荷物を担がせる。
「瑠璃が力持ちで良かった」
「いやー、本当にそうだよ」
サワは段々と普段の調子を取り戻しているようだった。
「ユウ王子、私もお手伝いします」
「大丈夫です。あとちょっとなんで」
下を向いた拍子に額の汗が鼻先を伝って、地面に落ちた。
「そういえば、なんでユウ王子って呼んでるの?」
「それは、私がユウ王子にお仕えする女官だからです」
「ふーん。でも、この3人だったら、別に上下関係とかないでしょ。だって、ユウだってここでは王子業務しないし、イチナさんも女官業務いらないじゃん」
「確かに、そうだな」
荷物を止め終えたユウはイチナの方を見た。
「そんな、恐れ多くて」
顔の前で手を振るイチナ。
「構わないよ。これからは、僕のことは気軽にユウと呼んで」
「…ユウ…くん」
おどおどと戸惑った様子を少し見せたイチナ。
「良いじゃん、イチナちゃん!私のこともサワで良いからね」
サワは、イチナに親指をたてる。
「サワ…ちゃん」
良かった。サワがいつもの明るい姿を見せてくれた。それに、イチナとも仲良くなったみたいだ。


ここに、今、草薙剣を探す名の元に、それぞれの冒険が始まった。
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