ソーダ色の夏

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選らばれし者

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約束の二週間が経ち、カメラは回収された。学校では、誰が選ばれるのか。という話で、持ちきりだろう。蒼士は辞退したのかしていないのか、手首を見れば分かるのに、それすら容易いことではない。

  選考会の次の日の事だ。紅葉は、信号待ちをしていた。町の中心部にある町立図書館へ本を返すためだ。中心部には、やたらと信号が多い。歩行者信号が青に変わる。キャップをかぶった、男の子も同じ信号をわたる。
 その時だった。自動車信号は赤だというのに、やけにふらふらした車が、かなりの速度で近づいてくる。男の子は、その事に気づくそぶりはない。紅葉は、咄嗟の判断で、男の子の背中を押す。ドンという重い音と同時に、小2くらいの男の子は、派手にこける。
「痛いな!何するんだよ!」
後ろをみた瞬間に何が起きたのか理解したようだ。道路に横たわっている、女子高生。そして、その横には、ボンネットがへこんだ車。紅葉は、ゆっくりと立ち上がる。そして、運転席側にまわる。コンコンと窓を叩くが、内側からの返事はない。運転手は、ハンドルに頭を擦りつけるような格好で動かない。スマホをポケットから取り出して、119に電話をかける。
「家事ですか?救急ですか?」
「救急で、場所は、町立図書館前の信号です。」
「わかりました。」
「意識はありそうですか?」
「分かりません、直ぐに来てください!」
電話を切ると、紅葉は、自分が突き飛ばした男の子に近づく。
「ごめんね、痛かったよね」
車道側の信号が青になる。しかし、誰も通らない。交通事故の現場に居合わせたのだ。当たり前と言えば、当たり前。
「あ、ありがとうございます。」
男の子は、まだ、ドキドキしている。それに、目の前の女子高生は頭から流血。
 消防署から見える信号だからか、救急車より先に職員が出てくる。
「大丈夫ですか、」
始めに声をかけられたのは、運転手ではなく、紅葉。直ぐに、救急車も駆けつける。あっという間に救急搬送されて、検査も受けた。頭部を切ったのと、足首の捻挫と打撲だけでおさまったのは、奇跡だと医者は口を揃えて言う。
 運転手は、突然、心臓発作に見回れたらしく瀕死の状態だったが、どうにかして生き延びることができたそうだ。
 紅葉が突き飛ばした男の子は擦り傷だけですんだ。
 そんなことで、今に至る。頭をぶつけたことに、変わりはないので、数日間の入院を余儀なくされた。松葉杖をついて、学校に行けると思っていたのだが、松葉杖をつこうと思ったら、指が腫れていることに気づき、骨に異常はないものの、突き指との診断がくだされ、その状態で松葉杖は危険だからという理由で、車イスになり、エレベーターのない学校では仕方なく、一階の保健室に登校している。だが、明日には、リハビリのかいあってか自力で教室まで行けるはずだ。

 それから、二週間後、、、
「藤原さん、おめでとう。選考会、通過したみたいだよ」
担任から手渡された封筒を大事に受けとる。クラスメイトが、ワラワラと集まる。
「もう一人。一ノ瀬さん、選考会通過、おめでとう」
「ありがとうございます」
先生が拍手を始めると、たちまちクラスの全員が拍手をする。
「封筒、開けてみろよ。一ノ瀬、藤原」
蒼士をチラッと見て、目が合う。どうやら、蒼士も、確認したらしい。蒼士と紅葉はベリベリと糊を剥がす。書類が、何枚か入っている。適当に一枚、取り出す。
「選考会通過理由?紅葉、何て書かれてた?俺は、将来を具体的に考える能力が長けており、生活態度においても、健全かつ一般的な常識が備わっていると判断できる。よって、高校生更生プロジェクトへの代表参加を認める。だって。」
「私は、えっと、なんか自分で読むのも恥ずかしいけど、自分の事を省みず、他者の安全を守る判断を下すということは、大人でも難しいことであり、また、冷静かつ迅速に適切な行動をとれるという、判断力、行動力の二点により、高校生更正プロジェクトの代表参加を認める。」
「カメラで監視は、まんざら嘘でもないみたいだな」
「二人とも、そこからの判断は自由だから、決まったら、一回、保護者と学校に来て。来週の、月までに決めといてね」
「はい」

 どこからともなく、選考会の結果は漏れているらしく、放課後の部活では同学年はみんな知っていた。
「ずるいぞ、紅葉、一緒に行ったのに。」
「いいでしょ、もーう大学決まっちゃった!」
結羽が羨ましそうにする。
「全国で選ばれてる人が10人だって、一ノ瀬が言ってたよ」
「太平洋の真ん中までたどり着けたら、賞金も出るらしいよ。なんか、もらった紙に書かれてた。」
「じゃぁ、そっちもするの?」
「うん、できたらなと思ってる」
「そっか」




















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