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1ヶ月後
「怜さん!」
(ゲートで)
「怜さん!」
(食事中に)
「うわぁ、色々あんねんな、あ、これなんかどう?」
「かわいい」
と言って、商品を手に取るが、眺めて戻す。そして、なにも購入することなく、店を出る。
「なんか、ほしいもんあった?今日は、怜さんの誕生日やから」
ベンチに腰を掛ける。
「、、、特には、」
「今日は、ちょっと奮発しても何か、怜さんが喜びそうなものをっと思ったんやけど、何がほしいんかわからんかったから。なんか、したいこととか」
怜は、海を望める観覧車を見る。
でも、観覧車とか幼稚だとかって思われたらどうしよう。
「観覧車とかどう?あの観覧車、日本一やって。アハハ、やっぱり幼稚かな?」
「観覧車、乗りたい」
「じゃぁ、行こっか」
「はい」
乗り場に到着すると、案外空いていた。平日だったからだ。
スケルトンゴンドラが回ってきたが、賢太郎が高所恐怖症だからということで次の箱に入った。(はしご車は平気らしい)
「待ち時間なく乗れてラッキーやったな」
「うん」
「・・・」
何か、話のネタを!
「あ、あれ、さっきの店、上から見るとあんな形なんや」
「本当だぁ」
「・・・」
いよいよ、頂上に差し掛かろうと言うとき怜の方が口を開いた。
「あの、どうして、私なんかをずっと好きなのか、ずっと疑問に思っていて、記憶をなくして、賢太郎さんとの大切な思い出だったのに、思い出せなくて、私と話していてもつまらないんじゃないかって、私は楽しい会話をしたりするのは下手で、賢太郎さんみたいな素敵な人がどうしてって」
うつむく怜。正面に座る賢太郎は怜の膝の上、ちょこんと置かれた手に自分の手を重ねる。そして、怜をちょっと覗き込むようにして
「僕の方こそ、怜さんと一緒に居てもいいのかなって、僕には何か秀でた才能があるわけちゃうけど、怜さんは皆から信頼されてて、器用だし、それに、優しくて真面目でかわいくて、、僕は怜さんの記憶と、思い出を好きになったんじゃなくて、僕は怜さんだから好きになったんやで。やから、私なんかとか思わんといてせめて僕の前では」
ニコッと笑う賢太郎。
「はい」
怜は小さく返事をする。そこで、賢太郎は怜の手に自分の手を無意識のうちに重ねていたことに気づいて、慌てて手を離す。
「あ、いや、これは、その」
好きでもない男からいきなりこんなことされたらドン引きだろ!賢太郎はそう思って焦っている。
「もう少しこのままが良いって言ったら賢太郎さんは嫌だって思いますか?」
意味を理解するのに少々時間がかかった。
「、、、嫌じゃないです」
観覧車は下に着く。
「はーい、お疲れさまでした」
「ありがとうございます」
「良かったね、観覧車」
「日本一高い観覧車の頂上からの景色は凄かった」
怜はそういいながら頂上からの景色は眺めていないことに気づく。
「僕は、見る余裕なんかこれっぽっちもなかったで」
「賢太郎さんは高所恐怖症だから」
もちろん、互いに互いの顔をみていたから景色を見逃したのである。
「はしご車は平気やねんど、ハハ」
「あの、もう少し回ってから帰らない?」
「うん、怜さんはどこみたいん?」
「向こうの建物のお店を」
指の先の建物はここから少し離れていた。
「良いな、」
二人は、一緒に歩き始めた。
「手を繋ぎたい」
小さい声。あまりにも細い糸のよう。賢太郎は、何も言わずに手を出す。
「寒くなってきたな、もう秋って感じ」
「はい」
建物に入って、寒くはなくなったが、二人は手を繋いだままだった。
「怜さん!」
(ゲートで)
「怜さん!」
(食事中に)
「うわぁ、色々あんねんな、あ、これなんかどう?」
「かわいい」
と言って、商品を手に取るが、眺めて戻す。そして、なにも購入することなく、店を出る。
「なんか、ほしいもんあった?今日は、怜さんの誕生日やから」
ベンチに腰を掛ける。
「、、、特には、」
「今日は、ちょっと奮発しても何か、怜さんが喜びそうなものをっと思ったんやけど、何がほしいんかわからんかったから。なんか、したいこととか」
怜は、海を望める観覧車を見る。
でも、観覧車とか幼稚だとかって思われたらどうしよう。
「観覧車とかどう?あの観覧車、日本一やって。アハハ、やっぱり幼稚かな?」
「観覧車、乗りたい」
「じゃぁ、行こっか」
「はい」
乗り場に到着すると、案外空いていた。平日だったからだ。
スケルトンゴンドラが回ってきたが、賢太郎が高所恐怖症だからということで次の箱に入った。(はしご車は平気らしい)
「待ち時間なく乗れてラッキーやったな」
「うん」
「・・・」
何か、話のネタを!
「あ、あれ、さっきの店、上から見るとあんな形なんや」
「本当だぁ」
「・・・」
いよいよ、頂上に差し掛かろうと言うとき怜の方が口を開いた。
「あの、どうして、私なんかをずっと好きなのか、ずっと疑問に思っていて、記憶をなくして、賢太郎さんとの大切な思い出だったのに、思い出せなくて、私と話していてもつまらないんじゃないかって、私は楽しい会話をしたりするのは下手で、賢太郎さんみたいな素敵な人がどうしてって」
うつむく怜。正面に座る賢太郎は怜の膝の上、ちょこんと置かれた手に自分の手を重ねる。そして、怜をちょっと覗き込むようにして
「僕の方こそ、怜さんと一緒に居てもいいのかなって、僕には何か秀でた才能があるわけちゃうけど、怜さんは皆から信頼されてて、器用だし、それに、優しくて真面目でかわいくて、、僕は怜さんの記憶と、思い出を好きになったんじゃなくて、僕は怜さんだから好きになったんやで。やから、私なんかとか思わんといてせめて僕の前では」
ニコッと笑う賢太郎。
「はい」
怜は小さく返事をする。そこで、賢太郎は怜の手に自分の手を無意識のうちに重ねていたことに気づいて、慌てて手を離す。
「あ、いや、これは、その」
好きでもない男からいきなりこんなことされたらドン引きだろ!賢太郎はそう思って焦っている。
「もう少しこのままが良いって言ったら賢太郎さんは嫌だって思いますか?」
意味を理解するのに少々時間がかかった。
「、、、嫌じゃないです」
観覧車は下に着く。
「はーい、お疲れさまでした」
「ありがとうございます」
「良かったね、観覧車」
「日本一高い観覧車の頂上からの景色は凄かった」
怜はそういいながら頂上からの景色は眺めていないことに気づく。
「僕は、見る余裕なんかこれっぽっちもなかったで」
「賢太郎さんは高所恐怖症だから」
もちろん、互いに互いの顔をみていたから景色を見逃したのである。
「はしご車は平気やねんど、ハハ」
「あの、もう少し回ってから帰らない?」
「うん、怜さんはどこみたいん?」
「向こうの建物のお店を」
指の先の建物はここから少し離れていた。
「良いな、」
二人は、一緒に歩き始めた。
「手を繋ぎたい」
小さい声。あまりにも細い糸のよう。賢太郎は、何も言わずに手を出す。
「寒くなってきたな、もう秋って感じ」
「はい」
建物に入って、寒くはなくなったが、二人は手を繋いだままだった。
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