神殺しの花嫁

海花

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「あーッッ!!───そこッ!!」

しかし例によって例の如く……翡翠の声が響く……。

「昼間っからイチャイチャしてんなよッ‼︎」

しかもタチが悪いのは、この二、三年は分かっていてわざわざ邪魔をするのだ。

「───幸成は今具合悪いんだぞッ!」

そう叫びながら急いで側まで来ると、無理やり琥珀から幸成を引き離した。

「まったく………油断も隙もねぇな……」

そして物語の『悪者から姫を守る武士』の如く、幸成を自分の背中に回し

「……色呆けジジイ」

ぽつりと毒を吐いた。

そう……邪魔をするよりもっとタチが悪いのは、七年前より大分口が悪くなっている事……。

「───いッ色呆け……⁉︎」

「そうだろ!?すぐ幸成に手ぇ出そうとしやがって……」

「───お前なぁ!──幸成はオレの眷属なんだよ!端からオレのモンなんだよッ!!」

そして相変わらず

「そういうとこッッ!幸成を“物”みたいに言いやがって!そういうとこが気に入らねぇんだよ!」

一緒になって熱くなり

「──なッ─別に物みたいになんか言ってねぇだろッ!」

「言っただろ!?“オレのモン”てッ!」

「──それはッ…………」

相変わらず押され気味だ。

「……二人とも子供みたい……幸成、二人のことは放っておいて食べましょ」

「───え…………」

二人のやり取りをオロオロして見ていた幸成を、黒曜が来なかったことでただでさえ機嫌の悪い蛍の、刺すように冷たい声が攫った。

そして結局、まだ何か言いたそうな翡翠と、溜息を吐く琥珀……という終結を迎えるのが、これもまたここ最近のお決まりになってきている。




昼の機嫌の悪さはどこへやら、庭で遊ぶ翡翠達の声と、それに負けず劣らず元気の良い玻璃の声が障子を締め切った寝所にいる幸成の耳にも届いた。

玻璃も直に七つになろうとしている。

「すみません……。本当にどうってことはないんですけど……」

申し訳なさそうに言うと、幸成は胸元を緩め布団に横になった。

「何も無ければ、それが一番良いのですから、気にしないで下さい」

相変わらず可愛らしい笑顔を幸成へ向けると

「では……視てみますね」

瑠璃は開いた胸にそっと手を置いた。

幸成の中から昔とは違う力強い気の流れを感じ、つい笑顔が漏れる。

「…………ん……?」

しかし暫くすると瑠璃が眉をひそめた。



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