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黒曜と紫黒、そしてそのすぐ横の瑠璃の姿を見つけると琥珀は人の姿へと戻った。
「幸成が見つかった」
望んでいた言葉に似つかわしくない、黒曜の険しい表情に琥珀は黙ったまま次の言葉を待った。
先程耳に届いた黒曜の遠吠えが、僅かに怒りを含んでいて決して良い報告だけでは無いことは気付いていたからだ。
「あいつは“神殺し”を止めるために、家に戻ったらしい。いつ殺されてもおかしくない状況だそうだ……」
黒曜の言葉に琥珀の顔が怒りに歪んだ。
琥珀色の瞳が、僅かに紅味を帯びている。
「…………琥珀……」
「すぐに連れ戻しに行く」
心配する黒曜から人里のある方へ視線を向けた琥珀の肩を、紫黒が宥める様に掴んだ。
このまま行かせて、万が一幸成が死んでいる様なことがあれば、琥珀が再び『悪神』に身を落としかねないからだ。
まして今の琥珀は、人を殺した分自分の身体も傷付けることになる。
そうすれば、人の手に落ちかねない。
「落ち着けよ。何も考えず乗り込んだところで、悪くすれば幸成を殺されかねない。……あいつは今向こうの手の内にある……」
冷静な言葉に琥珀は肩の手を払い除けた。
「──だからなんだ……?オレがその場にいる奴等全員殺せば済む」
「屋敷の何処に幸成がいるのかも分からずにか?」
「匂いで──凡その検討はつく」
恐らく本人は気付いていないが、冷静に見える瞳の色が徐々に紅味を強くしている。
「落ち着けって……人間を殺しながらその場に行くのに、いくらお前でも一瞬て訳にはいかねぇ。その間に幸成が殺されたらどうする?………昔の様に怒りと憎しみに身を沈めるか?……お前は獣じゃねぇ。『真神』という名の歴とした『神』なんだよ」
穏やかな紫黒の口調に、琥珀はその瞳を見据えた。
しかしそこには、以前血の海に倒れた自分を見下ろした哀情に満ちた眼差しが自分を見つめていて、思わず顔を逸らした。
「それに………なにもお前を助けたいと思ってるのは、幸成だけじゃねぇ。……昔とは違うだろ……」
視界の端に映る、黒曜と紫黒が自分の身を案じているのは解っている。
だからといって、自分にはそうするしか出来ない。
幸成が嫌気をさして離れたのなら諦めもした。
しかし自分の為に、ましていつ殺されるかも分からぬと聞かされて、自分の身を優先できる程冷静でなどいられなかった。
例えこの身体が切り刻まれようと、もう一度地に落ちようと……。
幸成を守りたい。
「……オレは神なんて器じゃねぇ……」
顔を歪め、絞り出すように吐いた言葉に紫黒の顔もまた辛そうに歪んだ。
「幸成が見つかった」
望んでいた言葉に似つかわしくない、黒曜の険しい表情に琥珀は黙ったまま次の言葉を待った。
先程耳に届いた黒曜の遠吠えが、僅かに怒りを含んでいて決して良い報告だけでは無いことは気付いていたからだ。
「あいつは“神殺し”を止めるために、家に戻ったらしい。いつ殺されてもおかしくない状況だそうだ……」
黒曜の言葉に琥珀の顔が怒りに歪んだ。
琥珀色の瞳が、僅かに紅味を帯びている。
「…………琥珀……」
「すぐに連れ戻しに行く」
心配する黒曜から人里のある方へ視線を向けた琥珀の肩を、紫黒が宥める様に掴んだ。
このまま行かせて、万が一幸成が死んでいる様なことがあれば、琥珀が再び『悪神』に身を落としかねないからだ。
まして今の琥珀は、人を殺した分自分の身体も傷付けることになる。
そうすれば、人の手に落ちかねない。
「落ち着けよ。何も考えず乗り込んだところで、悪くすれば幸成を殺されかねない。……あいつは今向こうの手の内にある……」
冷静な言葉に琥珀は肩の手を払い除けた。
「──だからなんだ……?オレがその場にいる奴等全員殺せば済む」
「屋敷の何処に幸成がいるのかも分からずにか?」
「匂いで──凡その検討はつく」
恐らく本人は気付いていないが、冷静に見える瞳の色が徐々に紅味を強くしている。
「落ち着けって……人間を殺しながらその場に行くのに、いくらお前でも一瞬て訳にはいかねぇ。その間に幸成が殺されたらどうする?………昔の様に怒りと憎しみに身を沈めるか?……お前は獣じゃねぇ。『真神』という名の歴とした『神』なんだよ」
穏やかな紫黒の口調に、琥珀はその瞳を見据えた。
しかしそこには、以前血の海に倒れた自分を見下ろした哀情に満ちた眼差しが自分を見つめていて、思わず顔を逸らした。
「それに………なにもお前を助けたいと思ってるのは、幸成だけじゃねぇ。……昔とは違うだろ……」
視界の端に映る、黒曜と紫黒が自分の身を案じているのは解っている。
だからといって、自分にはそうするしか出来ない。
幸成が嫌気をさして離れたのなら諦めもした。
しかし自分の為に、ましていつ殺されるかも分からぬと聞かされて、自分の身を優先できる程冷静でなどいられなかった。
例えこの身体が切り刻まれようと、もう一度地に落ちようと……。
幸成を守りたい。
「……オレは神なんて器じゃねぇ……」
顔を歪め、絞り出すように吐いた言葉に紫黒の顔もまた辛そうに歪んだ。
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