君の手の温もりが…

海花

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『愛してる』と『好き』

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部屋に入るなり葵がそこら中探索し始める。

「藤井さん!見て!お風呂めっちゃデカい!」

葵の呼ぶ声に藤井が苦笑いしながら浴室に入って行き

「せっかくだから一緒に入ろうか」

と、お湯を捻った。
落ち着きなく徘徊する葵に服を脱ぐよう言い備え付けの洗濯機に放り込む。

「俺、こういうトコ来るの初めて」

———そりゃそうだ。初めてじゃなきゃ俺がショックだよ。

そう思いながら葵にバスローブを羽織らせた。ネットで調べて洗濯ができるラブホに来ている。

「藤井さん………これ、何ですか?」

少し目を離した隙に怪しげな自動販売機を興味津々で見ている…。

「葵!気にしなくていいからっ!」

葵の肩を持って『それ』から無理に引き離す藤井の顔が少し赤くなっているのを、不思議そうに見つめながらも従った。

───全く……保護者の気分だな……。

その後も冷蔵庫を明け入ってる物を物色し、わざわざ閉まっている窓を開ける。
その間藤井は千尋へ追加の返信をしながら葵を目で追い時々苦笑いしている。

「藤井さん!お湯溜まりましたよ!───入浴剤入れていい!?」

今度は浴室から嬉しそうに顔を覗かせる。

「いいよ」

藤井も立ち上がり浴室へ向かう。
二人でシャワーを浴び身体に着いた砂を落としながら、葵をいつもの様に浴槽の縁に座らせると今日は足の指の間に入り込んだ砂をひとつひとつ丁寧に洗い流す。

「なんで………そんなに……俺に良くしてくれるんですか……?」

葵の質問に手を止めじっと見つめる。

「愛してるから」

藤井が一言だけ返した。
葵は時々同じ様なことを聞く。その意図が見つけられないまま藤井はいつも同じ答えを返す。そして葵はいつも決まってこう返すのだ。

「俺も……藤井さん…好きです…」

そして決まって少しの沈黙が二人を包む。

「お湯に入ろうか?」

藤井は立ち上がり優しく微笑んだ。


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