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薫 4
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───どうしよう……。葵も帰ってこないし……。
「そろそろ送ってくよ」
俊輔が結衣に笑顔を向ける。
「もう少し……」
それを結衣が上目遣いで見つめる。
こんなやり取りが何回かつづいていた。
俊輔が薫の家に行くのをどうにか阻止出来ないか考えているが、結局何も出来ず時間だけが過ぎていた。
「結衣……」
俊輔が呆れた様にため息をつく。
「さっきから何回も繰り返してるよ?」
「だって……」
──バカ葵帰って来ないんだもん!……
「あ……ねぇ!葵の番号教えて!」
──そうじゃん!電話すればいいんじゃない!
「…………なんで?」
俊輔が怪しむように目を細める。
「俺が薫んとこ行くって言うつもりだろ……?」
結衣がとぼける様に目をそらすと、さすがに少し怒ったように
「いい加減にしようよ……。本当に結衣も葵も変だよ。男友達の家に泊まりに行くのに、そんな……変な心配する奴いないよ!?」
軽く睨みつけた。
「でも……望月くん…俊輔に告白したんでしょ……?」
「──そうだけどっ……」
二人して黙り込む。
「…………送ってくよ」
しばらくの沈黙の後俊輔が立ち上がった。
「明日また連絡するから」
日が傾いたいつも送っていく公園で結衣は俊輔のシャツを掴んだまま離さないで立っている。
「……葵の番号教えて……」
今日何度目か分からないため息を俊輔がつく。
「分かった!今日またラインするから!ラインが来てるうちは何も無いってことでいいでしょ?……それに一応言うけど……葵がスマホ持った時、結衣にはちゃんと教えてあるからね」
俊輔が困ったように笑った。
「本当に…?絶対…?」
「約束する。俺……約束は守るでしょ?」
結衣がやっとシャツを離した。
───結衣がこんなに心配性だと思わなかった……。
「望月くんちって……確かここからそんなに遠くないよね?」
小学校の時一度だけ休みの薫にプリントを届けに行った記憶がある。
とにかく大きな家で驚いた記憶が蘇る。
「ここからすぐだよ。ちょっと先の三叉路曲がって少し行くとあるから。まあ……今は片山って表札だけどね」
「そうなの?」
「中学の時親が離婚したって言ってた。ま、とにかく心配ないからさ」
俊輔は安心させるように結衣の頭を撫でると
「ちゃんとラインするよ」
手を振って歩き出した。
結衣は心配そうにしばらく俊輔の後姿を見送っていたが
「葵の番号……探しださなくゃ……」
そう呟き家へと帰って行った。
「そろそろ送ってくよ」
俊輔が結衣に笑顔を向ける。
「もう少し……」
それを結衣が上目遣いで見つめる。
こんなやり取りが何回かつづいていた。
俊輔が薫の家に行くのをどうにか阻止出来ないか考えているが、結局何も出来ず時間だけが過ぎていた。
「結衣……」
俊輔が呆れた様にため息をつく。
「さっきから何回も繰り返してるよ?」
「だって……」
──バカ葵帰って来ないんだもん!……
「あ……ねぇ!葵の番号教えて!」
──そうじゃん!電話すればいいんじゃない!
「…………なんで?」
俊輔が怪しむように目を細める。
「俺が薫んとこ行くって言うつもりだろ……?」
結衣がとぼける様に目をそらすと、さすがに少し怒ったように
「いい加減にしようよ……。本当に結衣も葵も変だよ。男友達の家に泊まりに行くのに、そんな……変な心配する奴いないよ!?」
軽く睨みつけた。
「でも……望月くん…俊輔に告白したんでしょ……?」
「──そうだけどっ……」
二人して黙り込む。
「…………送ってくよ」
しばらくの沈黙の後俊輔が立ち上がった。
「明日また連絡するから」
日が傾いたいつも送っていく公園で結衣は俊輔のシャツを掴んだまま離さないで立っている。
「……葵の番号教えて……」
今日何度目か分からないため息を俊輔がつく。
「分かった!今日またラインするから!ラインが来てるうちは何も無いってことでいいでしょ?……それに一応言うけど……葵がスマホ持った時、結衣にはちゃんと教えてあるからね」
俊輔が困ったように笑った。
「本当に…?絶対…?」
「約束する。俺……約束は守るでしょ?」
結衣がやっとシャツを離した。
───結衣がこんなに心配性だと思わなかった……。
「望月くんちって……確かここからそんなに遠くないよね?」
小学校の時一度だけ休みの薫にプリントを届けに行った記憶がある。
とにかく大きな家で驚いた記憶が蘇る。
「ここからすぐだよ。ちょっと先の三叉路曲がって少し行くとあるから。まあ……今は片山って表札だけどね」
「そうなの?」
「中学の時親が離婚したって言ってた。ま、とにかく心配ないからさ」
俊輔は安心させるように結衣の頭を撫でると
「ちゃんとラインするよ」
手を振って歩き出した。
結衣は心配そうにしばらく俊輔の後姿を見送っていたが
「葵の番号……探しださなくゃ……」
そう呟き家へと帰って行った。
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