君の手の温もりが…

アイス

｢あー!!もう夏休み終わっちゃう！｣
結衣がノートの上にシャーペンを投げ出し
｢学校行きたくない……｣
そう言って机の上に倒れ込んだ。
俊輔の家のダイニングでまだ終わらない課題と向き合っている。
｢また…すぐ飽きる……｣
俊輔が頬杖をつきながら結衣の様子を呆れて見ている。
｢だってぇ……｣
｢ほら、教えてやるからやっちゃえよ｣
俊輔が苦笑いして結衣の頭を撫でる。
｢…………アイス食べたらやる……｣
俊輔はため息をつきながら冷蔵庫へ向かった。
｢食べたら本当にやっちゃえよ？｣
｢はぁぁい｣
結衣の返事に俊輔が思わず笑った。
アイスを頬張りながら
｢俊輔って……いつから甘い物ダメになったんだっけ？小さい頃は普通に食べてたよね？｣
結衣が不意に言った。
───あれ？そう言われれば……小学校低学年くらいまでは普通に食べてた……。
｢葵と一緒に留守番するようになって……｣
この家に越して１年ほどたった頃、母が仕事をするようになった。
夕方になると葵が寂しがって…気を逸らす為に自分のおやつをあげていた事を思い出した。
葵はとにかく甘い物が好きで、それさえ与えていれば機嫌が良かった。
｢……葵のせいじゃん｣
結衣の言葉に
｢そうかも。けど……多分大して好きじゃなかったんだろうな。あげられる位だし…｣
俊輔が笑って答えた。
───懐かしい……。いつも一緒に過ごしてたっけ……。
俊輔の笑顔を結衣がアイスを食べながら盗み見る……。
───きっと……未だ好きなんだろうな……。
結衣の胸が痛む……。

『本当は思い合ってる二人……』

｢……課題……やっちゃおうかな……｣
その言葉に俊輔が結衣を見つめ笑顔を向ける。
｢お？やる気になった？えらい、えらい｣
また頭を撫でてくれる俊輔に無理に笑顔を返すと結衣は黙ってシャーペンを手にした。