君の手の温もりが…

パニック障害

発作を何度が起こし精神科にかかるようになると、俊輔のそれが水への恐怖感からくるパニック障害と解った。
そして発作の後、俊輔は自分の部屋に閉じこもるようになった。
両親は主治医に相談して『防衛機能』が働いてそうしているのだから、そっとしておくよう言われ、俊輔が自分から出てくるまでそっとしておいた。
そしてそれは通常長くても1日も経てば出て来た。
出てさえくれば、いつもの様に優しくて聞き分けのいい息子に、部屋にいる間の俊輔を心配こそしたが無理に中に入ろうとはしなかった。
───そして葵にも禁じた。
その状態が数年続き、葵が5年生の時両親の目を盗んで俊輔の部屋に入り込んだ。
自分にしがみつき泣き続けた俊輔が忘れられなかったからだ……。
部屋の中で俊輔はベットの中で毛布にくるまり驚く程小さく丸まって枕を抱えて泣いていた。
葵が頭を撫でると慌てて葵の手を取り抱きついてきた。
痛い程抱きついてくる俊輔を抱きしめ返し
泣き続ける背中をずっとさすった。
あの時と何も変わっていなかった。
誰にも甘えられず俊輔はたった一人
不安と恐怖に耐えていたのだ。
それから発作の後は両親の目を盗み出来るだけ一緒にいるようにした。

必死に隠してきたそれを葵の口から両親に言うのは違う気がしたからだ。