鳥籠の花

海花

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 簡素だが、決して作りの悪くない木製のベッドが軋む音が、筧の荒くなった息遣いに被さるように耳を掠める。
 昨夜、散々弄ばれた身体が筧の形を覚えているせいで、慣らされること無く挿れられた陰茎が擦れる度に、快感で声が漏れそうになるのを秀行は必死で堪えた。
 無理矢理犯されていても、感じるように仕立てられた自分に吐き気が込み上げる。

「今日は随分……慎ましやかじゃないか……昨夜のように甘い声を聞かせてくれないのかい……?和臣くんに聞かれるのが……そんなに嫌か?」

 見下ろされ、挑発するように口の端を歪めた筧に、秀行は怒りに任せ、生まれて初めて人を殴る為に手を振りあげた。
 

 和臣にだけは知られたくない。知られてはいけない。
 ずっとそれだけは、父に懇願してきた。
 和臣は父とは違う。この家が、こうして守られていることを知れば、きっと和臣は躊躇うこと無くこの家を切り捨てるだろう。

 そういう男だ。
 父とも、この家の他の人間とも違う。だから、愛していられた。


 しかし、振り上げられた手を易々と掴むと、見た目からは想像もつかない力で、筧はその手を押さえ付けた。

「───私を殴るつもりかな?」

「───い……ッ……」

 押さえつけられた手が痺れるように痛む。

「いいね……たまにはこんな嗜好も刺激的だ」

 蛇のような目がニヤリと笑い、執拗に秀行の奥を突いた。
 痛みと快感と───闇に落ちていくような諦め。
 過去、何度も味わってきた悲愴感だ。

「───い…………ぁ…………」

 堪えきれず漏れた声を隠すように、秀行の部屋のドアが聞き慣れた音を立てた。




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