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・・・
しおりを挟む「──やめろッ!来るな──ッ!!」
「ぅわッッ!」
叫び声と同時に、自分にのしかかっていた男を突き飛ばすと、和志は何かから逃れるように暴れだした。
「──和志ッ!」
数十秒前まで、和志に触れていた者たちが呆気に取られ動けなくなっている中、梓は我を忘れたように暴れる和志に走りよった。
「和志ッ!しっかりしろ!───和志ッ!」
しかしその呼び掛けも聞こえていないのか、まるで梓などいないかのように、和志は暴れ続けている。
「……やだ……来るなッ…………」
そう何度も口にしながら、時に身体から何かを払うように叩きながら、踠いているように見える。
───ヤバい………バットトリップだ……
梓の脳裏にすぐに思い浮かんだ。母が入院する前に、時々目にしたことがあった。自分など見ていない、存在さえしていない“なにか”に囚われている。
暴れる腕や足が、落ち着かせようと抱きしめた梓に容赦なく向けられる。
「……おい………大丈夫かよ……」
やっと我に返ったように、一人が和志に向けて震えながら手を伸ばした。今までも梓に呼ばれ、何度かコレに来ていたがこんな和志を見るのは初めてだった。
「───触んなッッ!!」
しかし、その手を払い除けるのと同時に梓の怒声が響いた。
威嚇とも怒りとも違う、悲痛を含んだ声に除けられた手が止まった。
殴られ、爪で引っ掻かれながらも、梓は必死で和志を抱きしめ続けているのだ。
その場にいる誰もが、呆然と動けなくなっていた。狂ったように暴れ続ける和志と、その身体が、無造作に置かれた金属製の棚や硬い床に当たらない様に、一心不乱に抱きしめる梓。どう見ても異様な光景だった。
しかし、その張りつめた空気を壊すように、倉庫のドアが開けられ、一人の男の姿が見えた。
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