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第三章
争いごとや競争を好まない精霊たち
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「アーベル、来たのね。今日はドナートが来ているのだけど、アイリスに呼ばれて上に行っているわ」
ある日、私が「ケルークス」の店内に入ると店長のユーリからそう告げられた。
上ということは相談客が来ているのだろう。
店内には精霊の客が三組だけで、相談員の姿はない。
上に行っているドナートは「ハーレムの王子」と呼ばれるように、契約しているパートナーの数がとてつもなく多い魂霊だ。
その数は数百体と言われている。これだけの数の相手を満足させるとは相当な努力家なのではないかと私は感心するばかりだ。
私は飲み物を注文して、いつものカウンターの隅に陣取った。
飲み物が運ばれてきたところで、上から下りてくる足音が聞こえてきた。
「おっ、アーベルか。これはちょうどいいかもな。ちょっと待ってくれ」
ドナートは「ケルークス」の店内に戻って来るや否や、再び上へと走っていってしまった。
これは出番があるかもしれないなと思っていると、案の定ドナートから上に行くよう指示された。
「失礼します」
ドナートと入れ替わる形で二階の応接室に入ると、中にはアイリスと大人しそうな女性の姿があった。
大人しそうな女性が相談客だ。
小柄なためか若そうに見えるが、年齢不詳、といった感じもする。
「彼が相談員のアーベル。もと人間だし、話しやすいから遠慮なく質問するといいわ」
「アーベルです。私が話せることならお答えしますので、遠慮なく質問してください」
アイリスの紹介の後、私は名乗ってから椅子に座った。
正直なところ、私は初対面の者から見てあまり話しやすそうな相手ではないと思う。
だが、アイリスがあのように紹介してしまったので、ちょっと無理をして愛想よさそうにしたつもりだったが……失敗だったか?
「あ、あの……よろしくお願いします……」
蚊の鳴くような声で相談客の女性が答えた。
居難そうにしているし、あまり人と接するのが得意ではないタイプなのかもしれない。
「さっきの質問、アーベルにもしてみるといいわよ」
「あ、はい。あの……私、実はですね……」
アイリスに促されて相談客が話し始めた。
「職場でも近くで私じゃない人が怒られていてもビクッとしちゃいますし、身近な人たちが言い争ったりするのが苦手で……その……」
相談客は少し話しにくそうにしている。
今の段階でも彼女の性質は何となくわかるが、何を私に質問したいかがわからない。
ただ、彼女の言葉の調子からするとここで急かしたりしたら萎縮してしまいそうだ。
「……精霊の方たちって、喧嘩したり争ったりしますか? そうじゃない方なら契約に興味あるかな、と思うのですが……」
なるほど、そういうことか。
この相談客のように、自分が対象でなくても近くで怒られていたり、言い争っている場面が苦手な人というのは多少理解できるつもりだ。
私もそういうのを見ると暗澹たる気分になる性質なのだ。
ただ、精霊はこうした性質の人にこそパートナーとして相応しいと思う。
私は力が入りすぎないように注意しながら、精霊の性質について説明することにした。
「まず、私のパートナーの話になりますが、彼女たちは基本的に競争や争いごとが嫌いなのです……」
「そ、そういうものなのでしょうか?」
相談客は半信半疑、いや疑の割合の方が多そうな視線を私に向けた。
「はい。例えば私はトランプやボードゲームを多少やります。私のパートナーたちは順位がつくようなものを好まないので、これらで遊ぶことがほとんどできません」
「……ほとんど、ということは少しは精霊といっしょに遊ぶ、ということですよね?」
「ええ。一部のボードゲームには順位をつけずに共同作業するようなものがあります。その手のものなら喜んでくれます」
私は先日皆で旅行した際に、プレーヤーが協力して敵を倒すタイプのボードゲームで遊んだことを話した。
もしかしたらトランプにもそのような遊び方があるのかもしれないが、残念ながら私は知らない。
「そういうゲームがあるんだ……トランプの場合はどうします?」
「パートナーの一体は、私が一人でトランプで遊んでいるのを見学するのが好きみたいです。その逆に彼女が一人でトランプで遊んでいるのを見ていてくれ、と言われることもありますね……」
相談客の視線からは、先ほどよりも疑いの成分を感じなくなったが、まだ足らないという感じか。
「私の知る限り、ですが私のパートナーたちは言い争ったり、相手の悪口を言うことはしませんよ。からかうことくらいはたまにありますけど」
「……知らないところで陰口を言ったり、嫌いな相手の足を引っ張ったりするくらいはあるかも知れませんよ?」
相談客からの反論に、失敗したか、と思ったところでアイリスが割り込んできた。
「人間の世界はそうかもしれないけど、精霊は数が多いから争っていたら精神も身体も持たないわよ。そもそも精霊は相手を身体的にも精神的にも傷つけることができないように作られているし」
「えっ?! そうなのですか? だったら魂霊がやりたい放題になりませんか?」
アイリスの説明に何故か相談客が私をジロっと睨んだ。
「やりたい放題って、精霊は契約相手とのスキンシップをいくらやっても平気だけどね。でも、精霊を傷つけられないのは魂霊も同じ! だから精霊と魂霊の間で喧嘩なんて成立しないのよ」
「そ、それなら安心ですね……」
相談客がはじめてほっとした表情を見せた。
暴力沙汰で傷ついたことがある人なのかもしれないと私は思った。
「私からパートナーたちに言えるとしたら感謝かお礼だけになります。私は皆が不公平にならないようにできるだけ平等に扱うようにしていますしね。人間の場合は良くないケースもあると聞いていますが……」
私は「精霊の場合はこれで良いらしいです」と言いかけて止めた。
精霊一般のことを私が答えるのはルールに抵触する可能性が高いからだ。
「存在界から移住した方は複数のパートナーの方と契約する場合がほとんどだ、ってお話は聞いています……パートナーには特別扱いしてほしいですけど……」
「あら? 契約相手とそれ以外の相手では扱いは全然違うわよ。魂霊は契約相手たちを平等に特別扱いするし、逆もまた然り、なのよ」
「はぁ……そういうのはちょっと憧れますけど、恐れ多いというか……」
アイリスの説明を受けて、なぜか相談客がため息をついた。精霊と人間の感覚の違いをすぐに理解するのは難しいのだろう。
しかし、相談客は頭をぶんぶんを振った後、意を決したかのように私に質問を投げてきた。
「あの、先ほどのドナートさんは数百体のお相手と契約されていると聞きましたが、アーベルさんもですか?」
「私にはドナートほどの甲斐性はないですよ。私の契約相手は四体です。これ以上増やすつもりもないですし……」
そう答えると、相談客は安心したような表情を浮かべた。
「?!」
私がほっとしたその瞬間、一瞬だがものすごい殺気を感じた。
何が起こったのだろうかと周囲を見回したが、何かあったようには思えない。
私の様子を見て相談客がくすくす笑っている。まあ、これは仕方あるまい。
「クスクス……何となくわかりました。少なくとも魂霊と精霊は喧嘩にならないですよね……」
何がわかったのか私にはわからないような気がするが、相談客が納得してくれたのならそれでよい。
私の出番はこれで終わりとなったので、「ケルークス」へと引き上げた。
飲み物のお代わりをもらって一息つく。
「どうだった? 疲れているようだが、相談客には納得してもらえたか?」
ドナートが興味ありげに尋ねてきた。
「……正直わからない。最後は何となくわかったとは言ってくれたが」
「まあ、俺が直接説明したところで納得してくれなかったのでな。誰かパートナーが来てくれれば話は違ったかもしれないが……」
数百いるというドナートのパートナーなら「精霊は争いが嫌い」という話に説得力はあっただろう。
パートナーに来てもらうというアイデアを思いつかなかった自分の愚かさが恨めしい。
少ししてアイリスが上から降りてきた。相談客は相談を終えて帰ったようだ。
「ふーっ! ツッコミが厳しくてキツかったぁ!」
いつもの席に座るや否や、椅子からずり落ちるようにして身体を伸ばしている。かなりだらしのない格好だ。
「で、精霊は争いや喧嘩が嫌いってのは納得してもらえたのですか?」
「微妙なところね……喧嘩にはなりそうもない、とは思ってくれたみたいだけど……」
アイリスが手にした書類でパタパタと自身を仰ぎながら答えた。
「次回も相談に来そうなのか?」
「また来るって言っていたわよ。今度は誰に相手してもらおうかしら?」
ドナートの問いにアイリスが店内を見回した。相変わらず椅子からずり落ちた姿勢のままだ。この方がかえって疲れると思うのだが……
「さっきアーベルと話したのだが、俺やアーベルのパートナーから話してもらった方が早いのではないのか?」
「そうねぇ……『ケルークス』に来てもらって話をしてもらった方が早いかもね。彼女、あんまり強く言うと黙っちゃうから物腰が軟らかいのが適任なんだけど……ああもぅ!」
アイリスが頭をくしゃくしゃと掻きむしった。かなりフラストレーションがたまっているようだ。
今回の相談客は、こちらが強い態度に出ると固まってしまうような感じであったので、無理もないのかもしれない。
「俺のところだとダリアかエリーだろうな」
ドナートからさっと候補の名前が出た。本当に彼のこのようなところは感心させられる。あれだけ多くのパートナーのすべてを把握しているのだろうから。
「私のところは……カーリンかメラニーだろうな……」
実は私にとってこの問いは少々難しいものだ。
私のことが絡まなければ一番物腰が柔らかそうなのはニーナなのだが、今回求められている条件だと問題が多い。私が絡むからだ。
リーゼは物言いが時々鋭くなるので、今回の相談客相手には不向きだろう。
カーリンは一番無難な選択だと思う。職人肌だが、他人には厳しくないからだ。
メラニーは面倒見が良いのが合っていると思う。
「そうねぇ……相手が納得してくれるのならもう誰でも良くなってきた。というより、こっちの負けでいいからこれ以上のツッコミは勘弁して~!」
アイリスの悲鳴が店内に響き渡った。
はて、この悲鳴はアイリスという精霊が相談客と言い争いになるのが苦手だということが原因なのだろうか?
それとも、単に彼女が面倒臭がりだからなのだろうか?
ある日、私が「ケルークス」の店内に入ると店長のユーリからそう告げられた。
上ということは相談客が来ているのだろう。
店内には精霊の客が三組だけで、相談員の姿はない。
上に行っているドナートは「ハーレムの王子」と呼ばれるように、契約しているパートナーの数がとてつもなく多い魂霊だ。
その数は数百体と言われている。これだけの数の相手を満足させるとは相当な努力家なのではないかと私は感心するばかりだ。
私は飲み物を注文して、いつものカウンターの隅に陣取った。
飲み物が運ばれてきたところで、上から下りてくる足音が聞こえてきた。
「おっ、アーベルか。これはちょうどいいかもな。ちょっと待ってくれ」
ドナートは「ケルークス」の店内に戻って来るや否や、再び上へと走っていってしまった。
これは出番があるかもしれないなと思っていると、案の定ドナートから上に行くよう指示された。
「失礼します」
ドナートと入れ替わる形で二階の応接室に入ると、中にはアイリスと大人しそうな女性の姿があった。
大人しそうな女性が相談客だ。
小柄なためか若そうに見えるが、年齢不詳、といった感じもする。
「彼が相談員のアーベル。もと人間だし、話しやすいから遠慮なく質問するといいわ」
「アーベルです。私が話せることならお答えしますので、遠慮なく質問してください」
アイリスの紹介の後、私は名乗ってから椅子に座った。
正直なところ、私は初対面の者から見てあまり話しやすそうな相手ではないと思う。
だが、アイリスがあのように紹介してしまったので、ちょっと無理をして愛想よさそうにしたつもりだったが……失敗だったか?
「あ、あの……よろしくお願いします……」
蚊の鳴くような声で相談客の女性が答えた。
居難そうにしているし、あまり人と接するのが得意ではないタイプなのかもしれない。
「さっきの質問、アーベルにもしてみるといいわよ」
「あ、はい。あの……私、実はですね……」
アイリスに促されて相談客が話し始めた。
「職場でも近くで私じゃない人が怒られていてもビクッとしちゃいますし、身近な人たちが言い争ったりするのが苦手で……その……」
相談客は少し話しにくそうにしている。
今の段階でも彼女の性質は何となくわかるが、何を私に質問したいかがわからない。
ただ、彼女の言葉の調子からするとここで急かしたりしたら萎縮してしまいそうだ。
「……精霊の方たちって、喧嘩したり争ったりしますか? そうじゃない方なら契約に興味あるかな、と思うのですが……」
なるほど、そういうことか。
この相談客のように、自分が対象でなくても近くで怒られていたり、言い争っている場面が苦手な人というのは多少理解できるつもりだ。
私もそういうのを見ると暗澹たる気分になる性質なのだ。
ただ、精霊はこうした性質の人にこそパートナーとして相応しいと思う。
私は力が入りすぎないように注意しながら、精霊の性質について説明することにした。
「まず、私のパートナーの話になりますが、彼女たちは基本的に競争や争いごとが嫌いなのです……」
「そ、そういうものなのでしょうか?」
相談客は半信半疑、いや疑の割合の方が多そうな視線を私に向けた。
「はい。例えば私はトランプやボードゲームを多少やります。私のパートナーたちは順位がつくようなものを好まないので、これらで遊ぶことがほとんどできません」
「……ほとんど、ということは少しは精霊といっしょに遊ぶ、ということですよね?」
「ええ。一部のボードゲームには順位をつけずに共同作業するようなものがあります。その手のものなら喜んでくれます」
私は先日皆で旅行した際に、プレーヤーが協力して敵を倒すタイプのボードゲームで遊んだことを話した。
もしかしたらトランプにもそのような遊び方があるのかもしれないが、残念ながら私は知らない。
「そういうゲームがあるんだ……トランプの場合はどうします?」
「パートナーの一体は、私が一人でトランプで遊んでいるのを見学するのが好きみたいです。その逆に彼女が一人でトランプで遊んでいるのを見ていてくれ、と言われることもありますね……」
相談客の視線からは、先ほどよりも疑いの成分を感じなくなったが、まだ足らないという感じか。
「私の知る限り、ですが私のパートナーたちは言い争ったり、相手の悪口を言うことはしませんよ。からかうことくらいはたまにありますけど」
「……知らないところで陰口を言ったり、嫌いな相手の足を引っ張ったりするくらいはあるかも知れませんよ?」
相談客からの反論に、失敗したか、と思ったところでアイリスが割り込んできた。
「人間の世界はそうかもしれないけど、精霊は数が多いから争っていたら精神も身体も持たないわよ。そもそも精霊は相手を身体的にも精神的にも傷つけることができないように作られているし」
「えっ?! そうなのですか? だったら魂霊がやりたい放題になりませんか?」
アイリスの説明に何故か相談客が私をジロっと睨んだ。
「やりたい放題って、精霊は契約相手とのスキンシップをいくらやっても平気だけどね。でも、精霊を傷つけられないのは魂霊も同じ! だから精霊と魂霊の間で喧嘩なんて成立しないのよ」
「そ、それなら安心ですね……」
相談客がはじめてほっとした表情を見せた。
暴力沙汰で傷ついたことがある人なのかもしれないと私は思った。
「私からパートナーたちに言えるとしたら感謝かお礼だけになります。私は皆が不公平にならないようにできるだけ平等に扱うようにしていますしね。人間の場合は良くないケースもあると聞いていますが……」
私は「精霊の場合はこれで良いらしいです」と言いかけて止めた。
精霊一般のことを私が答えるのはルールに抵触する可能性が高いからだ。
「存在界から移住した方は複数のパートナーの方と契約する場合がほとんどだ、ってお話は聞いています……パートナーには特別扱いしてほしいですけど……」
「あら? 契約相手とそれ以外の相手では扱いは全然違うわよ。魂霊は契約相手たちを平等に特別扱いするし、逆もまた然り、なのよ」
「はぁ……そういうのはちょっと憧れますけど、恐れ多いというか……」
アイリスの説明を受けて、なぜか相談客がため息をついた。精霊と人間の感覚の違いをすぐに理解するのは難しいのだろう。
しかし、相談客は頭をぶんぶんを振った後、意を決したかのように私に質問を投げてきた。
「あの、先ほどのドナートさんは数百体のお相手と契約されていると聞きましたが、アーベルさんもですか?」
「私にはドナートほどの甲斐性はないですよ。私の契約相手は四体です。これ以上増やすつもりもないですし……」
そう答えると、相談客は安心したような表情を浮かべた。
「?!」
私がほっとしたその瞬間、一瞬だがものすごい殺気を感じた。
何が起こったのだろうかと周囲を見回したが、何かあったようには思えない。
私の様子を見て相談客がくすくす笑っている。まあ、これは仕方あるまい。
「クスクス……何となくわかりました。少なくとも魂霊と精霊は喧嘩にならないですよね……」
何がわかったのか私にはわからないような気がするが、相談客が納得してくれたのならそれでよい。
私の出番はこれで終わりとなったので、「ケルークス」へと引き上げた。
飲み物のお代わりをもらって一息つく。
「どうだった? 疲れているようだが、相談客には納得してもらえたか?」
ドナートが興味ありげに尋ねてきた。
「……正直わからない。最後は何となくわかったとは言ってくれたが」
「まあ、俺が直接説明したところで納得してくれなかったのでな。誰かパートナーが来てくれれば話は違ったかもしれないが……」
数百いるというドナートのパートナーなら「精霊は争いが嫌い」という話に説得力はあっただろう。
パートナーに来てもらうというアイデアを思いつかなかった自分の愚かさが恨めしい。
少ししてアイリスが上から降りてきた。相談客は相談を終えて帰ったようだ。
「ふーっ! ツッコミが厳しくてキツかったぁ!」
いつもの席に座るや否や、椅子からずり落ちるようにして身体を伸ばしている。かなりだらしのない格好だ。
「で、精霊は争いや喧嘩が嫌いってのは納得してもらえたのですか?」
「微妙なところね……喧嘩にはなりそうもない、とは思ってくれたみたいだけど……」
アイリスが手にした書類でパタパタと自身を仰ぎながら答えた。
「次回も相談に来そうなのか?」
「また来るって言っていたわよ。今度は誰に相手してもらおうかしら?」
ドナートの問いにアイリスが店内を見回した。相変わらず椅子からずり落ちた姿勢のままだ。この方がかえって疲れると思うのだが……
「さっきアーベルと話したのだが、俺やアーベルのパートナーから話してもらった方が早いのではないのか?」
「そうねぇ……『ケルークス』に来てもらって話をしてもらった方が早いかもね。彼女、あんまり強く言うと黙っちゃうから物腰が軟らかいのが適任なんだけど……ああもぅ!」
アイリスが頭をくしゃくしゃと掻きむしった。かなりフラストレーションがたまっているようだ。
今回の相談客は、こちらが強い態度に出ると固まってしまうような感じであったので、無理もないのかもしれない。
「俺のところだとダリアかエリーだろうな」
ドナートからさっと候補の名前が出た。本当に彼のこのようなところは感心させられる。あれだけ多くのパートナーのすべてを把握しているのだろうから。
「私のところは……カーリンかメラニーだろうな……」
実は私にとってこの問いは少々難しいものだ。
私のことが絡まなければ一番物腰が柔らかそうなのはニーナなのだが、今回求められている条件だと問題が多い。私が絡むからだ。
リーゼは物言いが時々鋭くなるので、今回の相談客相手には不向きだろう。
カーリンは一番無難な選択だと思う。職人肌だが、他人には厳しくないからだ。
メラニーは面倒見が良いのが合っていると思う。
「そうねぇ……相手が納得してくれるのならもう誰でも良くなってきた。というより、こっちの負けでいいからこれ以上のツッコミは勘弁して~!」
アイリスの悲鳴が店内に響き渡った。
はて、この悲鳴はアイリスという精霊が相談客と言い争いになるのが苦手だということが原因なのだろうか?
それとも、単に彼女が面倒臭がりだからなのだろうか?
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