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第九章

416:新たなる参加者か、足枷か

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 出発を三日後に控えた七月二九日の金曜日、「東部探索隊」のメンバー七名は、ミヤハラから呼び出しを受けていた。
 隊の決起集会という名目である。
 亡きウォーリーほどではないにしろ、ミヤハラもこうした宴の席は嫌いではない。
 そのことを知っているサクライなどは、またか、という表情をしている。
 ミヤハラに店を選ばせると、著名な店ばかり選ぶ。
 そのことはまだ許せるのだが、彼の店の選択基準は著名でありさえすればよいらしく、その中身にあまり興味がないことがサクライにとっては頭痛の種である。
 店をエリックあたりに選ばせようか、と考えていたが、すでに手遅れで店は決まっているとのことだった。

 一九時少し過ぎ、サクライは指定された店へと向かった。
 聞いたことのない店だったので少し迷ったが、目的の場所へたどり着いた。
 そこでサクライは呆気に取られることになる。
 指定された店がフルーツパーラーだったのだ。
(おいおい、ミヤハラさん。店の中身も確認しないで予約したのかよ?!)
 そう思われても仕方がない。
 確かに店はフルーツパーラーでパフェなら出てきそうだが、どうみても酒を飲む雰囲気には見えない。
 店を間違えたかと思っていると、中から店員が出てきてECN社のミヤハラ様とお待ち合わせの方ですか? と聞かれた。
 どうやらこの店で間違いないらしい。
 サクライは中でミヤハラをつけたら思いっきり文句を言ってやろうと思いながら、店員の案内に従った。
 奥は二〇席ほどのレストランスペースになっており、更に奥に個室がある。
 サクライが案内されたのは奥の個室だった。
 宴は一九時スタートとされていたので、サクライが到着したときには既に大部分のメンバーが集まっていた。
 ミヤハラが遅い、とサクライに先んじて文句を言ったので、サクライも負けじと言い返す。
「社長、また店の内容を確認しないで予約入れたんじゃないでしょうね?」
「知らん。店を決めたのは俺じゃない。条件を言ってメルツ室長に決めてもらったんだからな。文句があったら彼女に言ってくれ」
 さすがにサクライもレイカに文句を言う気にはなれなかった。
 相手はワインとコーヒーの取り扱いでは、名が知られていた人物だったからだ。
 食に対してもサクライより遥かに知識が豊富だと思われた。
 店のリサーチも周到に行われたに違いない。
 彼女なら間違いがないだろうと思い、サクライは抵抗するのをやめにした。あくまでレイカを信頼しているだけで、ミヤハラに屈したわけではないと自分に言い聞かせながら。
 すると、ミヤハラの向かいに座っていたミヤハラの妻がサクライに向かって頭を下げた。
 いつもご迷惑をおかけしています、そんなことを言いたかったのかもしれない。
「俺の部下を甘やかすな」
 妻の行動を見たミヤハラが苦虫を噛み潰したような表情をしている。
 ミヤハラがこうした場に妻を連れてくることは、珍しくもない。
 最近は妻が身重だったり、子供が小さかったりという事情があったのでこうした場で彼の妻の姿を見ることはなかったのだが。
「?? まだ始めないのか?」
 サクライが周囲を見回した。
 サクライは自分が最後だと思ったのだが、まだ一名到着していない者がいるようだ。
 到着していないのはコナカだった。

 比較的時間にはきちんとしている彼女にしては珍しいことだ、とセスがつぶやいた。
 一緒に行動することの多いカネサキやオオイダも同じ考えを持っているようで、彼女の携帯端末に連絡を入れるのだがつながらないようだ。
 ミヤハラが店員をちらりと見やった。
 すると、一九時半からのスタートになっているから問題ない、と言われた。
 レイカがかすかに笑ったところを見ると、予め誰かが遅れるのを見越して開始時間を三〇分遅くしたらしい。このあたり、メンバーをよく観察しているといえる。
 もっとも、遅れるのがコナカというのはレイカにとっても意外だったようで、心配そうに時計を見ている。
 不意にレイカの携帯端末が着信を告げる。
 さっと彼女が部屋を出た。

 数分後、レイカが部屋に戻ってきた。
 ミヤハラに何かを耳打ちすると、ミヤハラはまあいいだろうと答えた。
 レイカが再び部屋の外へ出たが、今度はすぐに椅子を一つ持った店員を引き連れて戻ってきた。
 どうやらメンバーの追加があるらしい。
「誰なんだ?」
 ロビーがミヤハラに問う。
 いつもと比べて落ち着きなく見えるのは、あまり慣れた雰囲気ではない店だからであろう。
 ミヤハラはわからんと答えた。わかりもしないメンバーの追加を許可するあたり、ミヤハラも結構いい加減である。
 一〇分ほどして、息を切らせたコナカがやって来た。
「すみません、遅くなりました」
「コナカさんよ、誰か来るんじゃなかったのか?」
「すみません、ミヤハラ社長。もう来ています」
 コナカが手を引くと、扉の陰から一人の小柄な女性の姿が現れた。
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